第133話 一階層 雪原ステージ
ナインと共にダンジョンへと続く階段を下っていくと、階段を下りきった先に現れたのは氷に包まれた大地だった。
「おぉ?今度は氷の大地か。」
氷の大地といえばノーザンマウントをいやでも思い出す。あそこに負けず劣らずここも寒いな。
「うはぁ……寒っ。」
前にノーザンマウントで使ったあの防寒着着るか。
俺は収納袋にしまっておいた防寒着を取り出して上から羽織った。もう出番はないと思っていたが、まさかこんなところで使うことになるとは思わなかった。
まったく、人生何があるかわからないな。
「ナインは何か上から着なくて大丈夫なのか?」
「はいマスター。ナインの体は氷点下の温度にも超高温度にも耐えられる設計になっておりますので問題ありません。」
「流石だな。ならこのまま進もうか。」
ナインの体の高性能さに驚いていてはキリがない。まだまだ俺の知らないような機能が彼女には隠されているだろうし、今はさっさと次の階層に続く階段を見つけたほうがいい。
「マスター、ゲートガーディアンと思われる大きな生体反応を検知しました。」
「方角は?」
「あちらに真っすぐ行ったところです。」
「わかった。」
ゲートガーディアンのいる場所に次の階層へと続く階段があることは前回のダンジョン攻略で分かっている。ナインがゲートガーディアンの反応を検知できるなら攻略も早くなるだろう。
「よし、行こう。」
ナインがゲートガーディアンの反応を検知した方角へと走って向かう。ゲートガーディアンのいるという方角へと走っていると次第に周囲が吹雪始め、視界が悪くなり始めた。
「天候まで雪山か。」
正直天候までは再現してほしくはなかった。吹雪は寒いし、視界が悪くなるし……いいことが一つもない。吹雪で方向感覚を狂わされないように逐一ナインに方角をききながら走っていると、吹雪で遮られている視界の奥でキラリと何かが光ったのが見えた。
「ん?」
何かがキラリと光った瞬間時間の流れが一気に遅くなる。すると、ツララのような鋭くとがった氷が俺の顔面目掛けて飛んできているのが見えた。
「ツララ?なんでこんなものが飛んで……。」
疑問に思いながらそれを空中で破壊したが、時間の流れが元に戻ることはない。それを疑問に思っていると、吹雪に紛れて見えずらかったが、たくさんのツララがこちらに向かって迫ってきていた。
そしてその奥に巨大な何かの影が……。
「あいつがツララを飛ばしてきてる犯人か。」
まったく危ないやつだな。
ひとまず目の前に迫ってきていたツララをすべて破壊すると、時間の流れが元に戻っていく。
「マスター、ゲートガーディアンです。」
「あいつが?」
「はい。」
「了解っ!!」
思い切り地面を蹴り、吹雪の中を突っ切るとその先にはまるでハリネズミのように背中に大量にツララを生やした青白いトカゲがこちらを向いていた。
俺は地面を蹴った勢いのまま拳を振りかぶると、そのハリネズミのようなトカゲの顔面に向かって拳を叩き込んだ。
「お返しだッ!!」
拳から腕に伝わってくる骨を砕くようなゴキン……という感覚。確かな手ごたえを感じるとともに、そのトカゲは大きく吹き飛び、力なく地面に横たわる。そして、そいつは青白い光になって俺の体へと吸収され始めた。
「ん、一撃だな。」
「お見事でしたマスター。」
ゲートガーディアンを倒すとさっきまで視界を遮るように発生していた吹雪がウソのように晴れ始める。そして足元に下へと続く階段が現れた。
「どうやら先ほどのゲートガーディアンが吹雪を発生させていたようですね。」
「天候を操るなんてなかなかどうして厄介なことしてくるやつだったな。」
発生させた吹雪に乗じて半透明のツララを飛ばして攻撃してくる……。まともに戦ったのならなかなか手ごわい相手だっただろう。まぁその反面耐久力はないみたいだった。俺のパンチ一発で倒せたからな。
「さて、それじゃあ次の階層に向かうか。」
ゲートガーディアンも倒したし、次の階層への階段も見つけた。もうこの階層にとどまる必要はない。
「っと、その前に……ナイン今どのぐらい外で時間たってる?」
「10分と23秒です。」
全然だな。ナインがゲートガーディアンの位置を割り出してくれたおかげもあるけど、時間にかなり余裕がある。もう少しゆっくり攻略してもいいかもしれないが、ダンジョンの中では何があるかはわからない。
それにナインと同じアンドロイドを仲間にするのに手間取る可能性だってあるからな。できればその可能性だけは考えたくはない。ナインと同じアンドロイドなら強さも似ているはずだ。ということは、真正面からぶつかって勝てる気がしない。
……嫌な予想をするのはやめておこう。こういうことを考えてると、現実になりかねないからな。
脳裏によぎったその考えを振り払うと、俺はナインと共に次の階層へと足を進めるのだった。
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