第129話 実食サンサンフルーツ!!
頭で流れていた映像にいた人物と同じように包丁を動かしてサンサンフルーツの皮をむいていくと、いつしか厨房全体にサンサンフルーツの豊潤な香りが充満し始めていた。
その香りは厨房だけにとどまらず、風に乗って城の中全体に広がっていく。それに釣られてみんなも集まってきた。
「なんかすっごいいい匂い~。」
「あっ!!アルマちゃん、カオルさんが何か切ってるよ。」
「あれからいい匂いがあふれ出してる。」
最初に厨房に入ってきたのはアルマ様とカナン、そしてメアだった。おそらくさっきまで三人で遊んでいたのだろう。
「カオル~何やってるの~?」
「あ、アルマちゃんだめだよ!!カオルさんすごい集中してるみたいだし……。」
「あ、そ、そうだね。ごめんカオル。」
そう言って話しかけてきたアルマ様をカナンが制止しようとするが、こちらの作業も大詰めだから問題ない。
「大丈夫ですよアルマ様。もうじき終わりますから。今調理してるのはサンサンフルーツです。」
「あ!!それアルマが頼んだやつ!!もうとってきてくれたの?」
「はい。少しでも早く食べてもらいたくて、ちょっと頑張りました。」
「えへへ~、カオルありがと~!!」
「あれ、アルマちゃんが頼んでたやつなんだ。」
「うん、なんか突然食べたくなったから……カオルにお願いしてたんだ~。」
「後ほどカットして盛り付けますので、そちらで待っててください。」
「わかった~!!」
そして三人は楽しそうに話しながら奥のテーブルのほうに向かって行った。
「ふぅ、あとはここをこうして……。」
「随分美味そうなものを切っておるではないかカオルや?」
「っ!?」
突然後ろから話しかけられて思わずびくりと背筋が伸びて手が止まってしまう。
「ら、ラピスか……いつの間に。」
「今来たばっかりだ。この美味そうな匂いに釣られてな。スンスン……それにしてもうまそうな香りだの~。」
俺の背中から顔をひょっこりと出してクンクンと香りをかいでいるラピスの口元からは、今にもよだれが垂れてきそうだ。
「ラピスも、もうちょっとで終わるから……アルマ様たちがいるあっちで待っててくれ。」
「むっふっふ、早うするのだぞ~。」
くつくつと笑いながらラピスもスキップでアルマ様たちのもとへと向かって行った。
「さて、あと少し……。」
再びサンサンフルーツと向かい合い、包丁を入れて皮を全て剥ききると、皮の内側からまるで宝石のようにキラキラと輝くサンサンフルーツの果肉が姿を現した。
「おぉ……。」
思わず見とれていると、厨房の入り口からパチパチと拍手しながらジャックが入ってきた。
「お見事でございますカオル様。」
「ジャックさん?」
「サンサンフルーツは皮の剥き方を間違えばたちまち腐ってしまう特殊食材でございます。よもや一発でやり遂げるとは……流石でございますな。」
「えぇっ!?そうなんですか!?」
そんな話は聞いてなかったぞ!?
「その驚きようですと……まさか知らなかったのですかな?てっきり知っているものだと思っておりましたが。」
「い、いや……まったく。」
「なんと……。」
サンサンフルーツの知識なく包丁を入れてしまった俺を見て、ジャックは思わず表情を驚愕の色に染めた。
「なんというか……感覚でいけちゃいました。」
「なんですと!?まさに奇跡ですな。」
まぁ感覚というのはちょっとウソになってしまうのだが……。本当のことを言えば、なぜか頭の中にこいつを調理している映像が流れてきて、それの真似をしたらできてしまったわけだが……そんなことを言ってもな。
「天賦の才……というものなのでしょうかな。私めにも計り知れない才能がカオル様の中にあるのやもしれませんな。」
「あはは、そんなのがあればいいんですけどね……まぐれですよまぐれ、きっと。」
そしてサンサンフルーツを切り分けた俺は綺麗にそれを皿に盛り付けると、アルマ様たちのもとへと向かった。
「わっ!!キタキタッ!!」
俺がサンサンフルーツの盛り合わせを運んでいくと、興奮した様子でアルマ様は目を輝かせた。
「すごい……まるで宝石がたくさん山みたいに盛り付けられてる。」
「綺麗……。」
「おっほぉ~!!なかなか我の目を惹く食い物だのぉ~!!」
カナンとメアとラピスはそう口々に言った。
「お待たせしました。さ、どうぞ召し上がってください。」
「わ~い!!いただきま~す!!」
そうして真っ先にサンサンフルーツを口にほおばったのはアルマ様だった。それに続くようにカナンたちもサンサンフルーツを食べ始める。
「おいし~!!すっっっごい甘い!!」
「こんなおいしい果物食べたの初めて……。」
「おいし、おいしい!!」
「うむうむ、宝石を喰らっている気分になれてなかなか気分が良いな。」
みんなが美味しくサンサンフルーツを食べている最中、アルマ様の体を光が包んだ。
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