第130話 最強の血筋


 サンサンフルーツを食べて光に包まれたアルマ様。いよいよ魔王としてまた一つ成長の階段を上るようだ。


 すっかり見慣れてしまったこの光景だが、メアだけは目にするのが初めてだったため少し驚いている。


「パパ、アルマどうしたの?」


「メアは見るの初めてだったな。あれはアルマ様が魔王として成長してるんだ。もう少ししたら少し成長したアルマ様が出てくるよ。」


「成長?……普通年を取らないと成長ってしないんじゃないの?」


「普通はな。ただまぁアルマ様とかカナンって場合は別らしい。魔王と勇者って存在は年を重ねるとかそういうのじゃなく、特定の食材を食べたり強い何かと戦うことで成長するんだとさ。」


「ふ~ん、そうなんだ。ちょっとずるい。私ももっと早く簡単に成長して大人になりたい。」


 そう羨ましがるメアだが、彼女も産まれてきた時点で赤ん坊からではなく、今の姿で産まれてきたし……いくつか成長の過程をスキップしてるんだよな。

 

 まぁ、それを含めたとしても……何年もの月日をかけずに大人の肉体へと成長できるという、この世界の魔王と勇者という存在は逸脱してるな。

 ふつう成長が速いだけならば、精神年齢というものが体に追いつかないから子供っぽくなるものなんだが、アルマ様は精神年齢すらも成長してしまうというのだから驚きだ。


 はてさて、そろそろ光が収まり始めたな。今度はどんな風に成長した姿を見せてくれるのだろうか。


 少しワクワクしながら光が収まるのを待っていると、光の中から少し背が伸びたアルマ様が姿を現した。


「んん~っ!!」


 光の中から現れたアルマ様が背筋を伸ばすと、腰のあたりからぴょんと飛び出すように尻尾のようなものが飛び出した。


「し、尻尾?」


 アルマ様の腰から飛び出した尻尾は、ラピスの腰から生えているゴツイ尻尾でもなく、はたまたメアのような何本もの細い毛が束なっているような尻尾でもない。アルマ様のは少しテカテカとしている細身の尻尾で先端の方がハートを逆さまにしたような形になっていた。


「アルマちゃん尻尾生えたね。ハートみたいな形で可愛い~。」


「可愛い?えへへ~うれしいなぁ~。結構自由に動かせるよ~?」


 少し嬉しそうにしながらアルマ様は新しく生えてきた尻尾をうねうねと動かして見せた。ゆらゆらと揺れる尻尾の先端がとても可愛らしい。


 見せあうアルマ様たちの姿を遠目で眺めていると、ジャックが隣に歩み寄ってきた。


「最初の成長では角、そして今回はあの特徴的な尻尾……いよいよ魔王様の中に流れる魔族の血の片鱗が体に現れ始めましたな。」


「そういえば、アルマ様の種族って……?」


 アルマ様が魔王ってことはわかるんだが、肝心の種族を俺は知らない。ラピスはスカイブルードラゴンで、カナンは人間、メアはユニコーン、ジャックはワーウルフ……。といった感じで他のみんなの種族は把握していたのだが、一番身近だったアルマ様の種族を俺は今まで知らずにいた。


「歴代の魔王様方の様々な血が混じって今の魔王様がありますので、残念ながらと断言できるものではないのです。」


「ということは、アルマ様はこの世界に一つしか存在しない種族ってことになるんですかね?」


「そういうことになります。ですが……今のお姿を拝見した限り、の特徴が色濃く出ているようです。」


「クイーンサキュバス?」


「はい、クイーンサキュバスは原初の魔王様……つまり一番最初の魔王様の種族でございます。」


「原初の魔王……。」


 この世界の一番最初の魔王の種族の血を色濃く受け継いでるってわけか……。


「原初の魔王様は原点にして頂点……と謳われた御方でございます。」


「それだけ強かったってことですか?」


「はい、原初の魔王様御一人で何人もの勇者を屠った……という逸話が私の一族には代々受け継がれております。」


「そんなに強かったんですか!?」


 一人で何人もの勇者を倒したって……どれだけ強かったんだ!?ってか、逆にそれだけ強かった魔王を打ち倒した勇者もすごいな。


 その辺の歴史めちゃくちゃ気になるな。後で時間があるときに地下の書庫で調べてみようか。魔王と勇者の歴史について調べればアルマ様のことをもっと知れるだろうし、同時にカナンのことについても知れるだろう。


「ホッホッホ、よもや原初の魔王様と同じお姿に成長していくとは……私めはこれから先の魔王様の成長が楽しみで仕方がありませんぞ。もしかすると、新たな伝説をこの目で見ることができるやもしれませんなぁ。」


 ジャックはこれからのアルマ様の成長が楽しみで仕方がないらしい。原初の魔王という存在と同じような容姿をしているとなれば期待も高鳴るのだろうな。


 俺もアルマ様の成長が楽しみになってきたぞ。

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