第127話 獲得サンサンフルーツ!
俺はゆっくりと立ち上がると、目の前にあるサンサンフラワーへと向かって近づいた。すると爽やかな柑橘系のような香りがより強くなる。
「いい香りだ……。」
ふらふらと誘われるように近づいていくと、サンサンフラワーの中心に何か輝くものが見えた。
「あれは?」
「マスター、あれがサンサンフルーツです。」
「あれがそうなのか。」
いつの間にか俺の横に立っていたナインがそう教えてくれた。どうやらサンサンフラワーの中心にある、あの輝くものこそ俺がここに来た目的のサンサンフルーツらしい。
「なんか……すごい惹きつけられる感じがするな。」
引き寄せられるようにサンサンフルーツに近づくと、その全貌が徐々に明らかになり始めた。
サンサンフルーツの見た目はまるで小さい太陽のような見た目だ。小さいとは言っても、あくまでも太陽を小さくしたような見た目……ということであって、サンサンフルーツは俺が両手で抱えなければならないほど大きなものなのだ。
「これは……すごいな。」
近づけば近づくほど、なんだろう……言葉では言い表せないような、すごい大きなエネルギーを感じる。
そっと手を伸ばしてサンサンフルーツに触れてみると、ずっしりとした重量感が伝わってくる。
「……いただきます。」
思わずそう口にして、少し力を加えて引っ張ると簡単にサンサンフルーツは花から外れ、俺の手に収まった。
そっとサンサンフルーツを収納袋へとしまいこんだ俺は花の上から飛び降りる。
「マスター、お帰りになりますか?」
「あぁ……と言いたいところだが、ラピスがあっちで昼寝してるはずだ。あいつも連れて帰ろう。」
「承知しました。」
ナインは機械仕掛けの剣を再び手に取ると、空間を切り裂いた。
「マスターどうぞ。」
「あぁ、ありがとな。」
空間の切れ目を通ると、目の前には昼寝から起きたのか、遠い空を眺めて直立しているラピスの姿があった。
「む?カオル……とナインか。」
「起きてたんだな。」
「うむ、本当はもう少し昼寝を楽しみたかったところだが……騒がしいやつが来てな。」
「騒がしいやつ?」
誰のことかわからず首をかしげていると、ラピスはため息を吐きながら言った。
「我の古い友だ。もう何十年と会ていなかったのだが……相変わらずやかましいやつだった。我との会話の途中で話をほっぽり出してどこかへと行ってしまった。」
(話の途中でどこかへと行ってしまった?……まさか、あの男を連れ去ったのはラピスのその古い友ってやつなのか?だとしたらラピスの友人は……。)
いや、深く考えすぎるのはやめておこう。まだ断定できる状況じゃないし、わからないことが多すぎる。
「……そうか。」
「うむ、それで目的のものは見つかったのか?」
「あぁ、ちゃんと見つけたよ。後は帰ってアルマ様たちに報告だ。ナイン、頼む。」
「承知いたしました。」
そしてナインに再び空間を切り裂いてもらい、俺たちはスカイフォレストを後にした。
ナインが切り裂いた空間を通って魔王城へと戻ってきた俺は、さっそくサンサンフルーツを無事に入手できたことをジャックに伝えるため、彼に部屋の扉をノックした。
「ジャックさん、ただいま戻りました。」
「おぉ、お戻りになりましたかカオル様。」
扉の向こうから彼の声が聞こえると、彼は扉を開けてくれた。
「む?カオル様……何やら服が焼け焦げているようですが、スカイフォレストで何かありましたか?」
「え?……あっ!!」
よくよく自分の服を見直してみると、あの男の攻撃を受けた場所だけが丸く焼け焦げていた。
「ふむ、魔物のいないはずのスカイフォレストで戦闘があったとなれば何やら厄介事があった匂いがいたしますなぁ。まぁ中で何があったのか話を聞きましょう。」
「はい。」
そして部屋の中へと招き入れられた俺は彼にスカイフォレストで謎の男に襲撃されたことを話した。すると彼は何やら思い当たる節がある様子で言った。
「カオル様、その襲撃してきたという男……左目に縦に裂かれたような傷がありませんでしたかな?」
「左目に……傷ですか?」
あの時のことを思い返してみると、あの男が怒りのこもった視線をこちらに向けてきたとき……黒い装束の中から覗いた瞳に、確か傷みたいなのがあったような……。
「はっきりと見えたわけじゃないので断定はできないんですけど、確かあったような気がします。」
「ふむ、もしそうだとしたら……おそらく
「知っている人なんですか?」
「えぇ、カオル様をお雇いする前……
「えぇ!?」
それからジャックは俺のことを襲った謎の男について語り始めた。
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