第123話 スカイフォレストの大地


 ラピスの背に乗ってスカイフォレストの上へ上へと上っていくが、いっこうに突き抜ける気配がない。

 やはり、あの地上から見えていた下の部分は氷山の一角だったということか。


「むぅ、雲を突き抜けてもまだ上があるか。」


 ばふっ!!と音をたてて雲を突き抜けたラピスは未だ上があるスカイフォレストを見上げて言った。


「まだまだ上があるのか。」


 正直今の段階でも結構寒さを感じてるんだが……こんなに寒い場所で野菜なんて育つものなのか?ここよりも上はもっと寒いんだろ?植物が育つような環境ではないと思うんだが。

 まぁ寒締めほうれん草とかあるし……限定的なものは育つのかな?


「カオルまだ耐えられるか?」


「あぁ、念のため防寒着を着てきて正解だったよ。おかげでまだいける。」


「ならば一気に行くぞ!!しっかり掴まっていろ!!」


 俺がしっかりとラピスにしがみつくと彼女は一気に上を目指して飛び立った。そうしてしばらくすると、スカイフォレストを見下ろせるぐらいの高度まで飛び上がる。

 ここから見下ろせる景色では、スカイフォレストの大地には豊かな緑が広がっているのが見える。


「やっと見下ろせる位置まで来たか。」


「こんなに寒いのに一面緑色の景色だな。」


「うむ、ひとまず着陸できる場所を探してみよう。」


 そしてラピスはスカイフォレストの周りをぐるぐると回りながら着陸できる場所を探し、ある程度広い場所に着陸した。


「おっ?おっ?」


 ラピスの背中から降りてスカイフォレストの大地に降り立つと、まるで低反発のマットに足をつけたような感触と共に足が大地にふっかりと沈んだ。


「すんごいふかふかだな。」


「おぉ!!これはなかなか良い踏み心地なのだ。」


 いったいどういう原理なのかはわからないが、ここの地面はすごいふかふかだ。


「さて、目的の場所についたことだしサンサンフルーツを探そうか。」


「美味いものも食いながら行くぞ!!」


 ふかふかの大地を踏みしめながら先へと進んでみると早速、何やら果物らしきものが実っている木が見えてきた。


「おっ?なんか果物みたいなのが生ってる木があるぞ?」


「おぉ!!食い物かっ!?早速食ってみるのだ!!」


「あ、おいラピス!!」


 俺の静止の言葉も聞かずにラピスは実っていた食べられる果実かもわからない果物をもぎ取ると、自分の口へと放り込んだ。


「うむっ!?」


 一口果実をかじると迸るような果汁があふれだしているのが見て取れた。


「どうだラピス美味しいか?」


 果汁とと果肉で口いっぱいのラピスに俺は問いかけた。


 彼女はごくんとのどを鳴らしてそれを飲み込むと、食レポを始めた。


「うむ!!これは美味いのだ!!とんでもなくみずみずしく甘く、シャキシャキとした食感……こんな果実は食ったことがないぞ。」


「ほぉ?」


 それを聞いて俄然気になった。俺も食ってみよう。


 おもむろに俺もその果実を一つもぎ取ると、齧ってみた。するとやはりあふれんばかりの甘い果汁が口いっぱいに広がり、シャキシャキの果肉がとても食感がいい。

 

「うん、こいつは確かに美味いな。ジューシーだし、果肉もシャキシャキで甘くていい。」


 これはいくつか確保しておこう。デザートに使える。


 俺の横でラピスがバクバクと次々にその果実をほおばっているが、ラピスの胃袋はほぼ無尽蔵といっても過言ではないし、まぁ問題ないだろう。


 にしても、このぐらいの果物だったら地上にもありそうなものだが……先に進めばもっと美味しいものが出てくるのだろうか?目的のサンサンフルーツもこの辺にはないみたいだし、とにかくもっと先に進んでみよう。


「おいラピス、そろそろ行くぞ?」


「うむっ!!今行くのだ!!あむっ!!」


 最後にもうひとつ彼女はその果実を口の中に放り込むと、こちらに向かって走ってきた。


「この先にももっと美味いものがあると考えるとよだれがあふれて止まらぬなぁ。まさにここは我にとって楽園なのだ。」


「忘れるなよ?あくまでも目的はサンサンフルーツだからな。食いすぎて帰りに飛べなくなるとかやめてくれよ?」


 さすがにこの高度からラピスなしで飛び降りるとなれば……いくら危険予知があったとしても死ぬのは間違いない。危険予知はあくまでも死の危険が迫った時に対処するために時間が遅くなるのであって、もうどうあがいても死ぬ場合に発動するのかはわからない。まぁ、どうあがいても死ぬ運命に直面してしまったのなら、諦める他ないな。ワンチャン……受け身で何とかなるかもしれないが、試したくはない。


「むっふっふ安心するのだ。我の胃袋に限界はないっ!!むはははははは!!」


 そう愉快そうに笑うラピス。今は彼女の言葉を信じるしかないか。それか、俺が彼女のことをある程度のところで止めてあげればいいかな。


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