第122話 空の襲撃者
「むははははっ!!やはり翼を広げて空を飛ぶのは最高なのだ!!」
「くぅぅ……相変わらず風圧が……。」
ラピスは久々の空の旅を楽しんでいるようだが、背中にまたがっている俺は景色を楽しむ余裕もない。少しでも手と足の力を緩めれば、ラピスの背中から振り落とされてしまう。
「あのスカイフォレストとやらは近いように見えて意外と距離があるな。少なくとも雲よりは上に行かねばならにょうだの。」
ラピスはさらに翼をはばたかせると、一気に加速する。すろと、スカイフォレストの下の部分がどんどん近くなり始める。
そしてスカイフォレストの下部分に間近に接近するとラピスはホバリングし、周囲をぐるぐると回り始めた。
「ふむ、ずいぶん面白いことになっているなこのスカイフォレストという大地は。」
「何かわかったのか?」
「この雲の下に見えている下部分は氷山の一角にしかすぎん。例の美味いものがある土地はもっと先……雲のはるか上だな。」
「ってことはここからさらにまた……もっともっと上に上らないといけないのか?」
「そういうことだな。……む?」
ふとラピスは何かの気配を感じ取り、横を向いた。
「どうかしたのか?」
「……何か来るぞカオル。」
「何かくるって……いったい何が……。」
そう疑問に思っていると、空にけたたましい鳴き声が響いた。
「ギャァァァァス!!」
「「!?!?」」
俺とラピスの横からまるでドラゴンのような魔物が群れを成してこちらに向かってきていたのだ。
「ど、ドラゴンか!?」
「あれはドラゴンになり損ねた劣等種、
「ワイバーンね。で?どうする?」
「やつらの執念はなかなか異常だ。それにイヤに知能も高い。我らがこの上を目指していることも読んでいるだろう。」
「つまりたとえラピスがあいつらをスピードで振り切ったとしても、どうせ上で戦うことになるってことか?」
「まぁそういうことだ。こういう面倒事の芽は早いうちに摘んでおくのが一番だ。」
「戦うてことだな。わかったよ。」
ホバリングしていたラピスの背中の上で俺は収納袋からアーティファクトを抜いた。
「頼むから俺を振り落とさないでくれよ?」
「わかっておる。……来るぞっ!!」
俺たちに急接近したワイバーンの群れは、各々鋭い牙の生えた口をパッカリと開けるとそこから火球を吐いてきた。
「あの火球は我が何とかしてやる。カオル、おぬしは一体一体確実に仕留めろ。」
「了解。」
そして目の前まで火球が迫ってくるとラピスは翼を一つはばたかせた。
「ウインドベール。」
ラピスは翼に魔力をまとわせていたらしく、彼女によって引き起こされた暴風はワイバーンたちが放った火球をものともせず打ち消していく。
それに合わせて俺は魔力を籠めたアーティファクトを一閃する。すると、見えない刃によって何体かのワイバーンの急所が切られ下へと堕ちていった。
「ふっ!!」
ワイバーンたちが再び火球を放つ体勢を整えている間にもう一度アーティファクトを一閃し少しずつ確実にワイバーンを倒す。
そして見る見るうちに数が減っていったワイバーンの群れの数が片手で数えられるほどの数になった時、急に残ったワイバーンたちはこちらに背を向けて逃げ出したのだ。
「ふん、小物が。尻尾を巻いて逃げるその姿がお似合いだ。」
そうラピスが言っている間に俺は城にいるはずのナインにコンタクトをとることにした。
「ナイン聞こえるか?」
『はいマスター聞こえています。』
脳内にナインの声が響く。
「今俺のいる地点から地上に向かって大量にワイバーンが落ちてった。それを回収しておいてほしい。」
『了解しました。ほかにやっておくことがあれば何なりとお申し付けください。』
「あぁ、ありがとう。それじゃあ頼んだぞ。」
よし、これでナインにワイバーンの死体は回収してもらえるから後々ギルドに素材を売りに行こう。がめついと思われるかもしれないが、なにせ養う人数が多すぎる。素材がお金になるのなら売ってお金にする。そうでもしなければ今後が不安なのだ。
稼ぎ頭が俺とナインの二人しかいないからな。
「なんだ?ナインのやつと話していたのか?」
「あぁ、今倒したワイバーンの回収をお願いした。」
「あんなもの回収してどうするのだ?」
「素材を売ってお金にするんだよ。どっかの誰かさんを養わないといけないからなぁ?」
「な、なるほどのぉ~。そ、それは良い考えだと思うぞ?うむうむ。」
ジト目でラピスのやつを見つめてやると彼女は、焦って視線をそらした。
「ま、誰かさんが今後働いてくれることを期待しておこうかな?」
「う、うむ……。さ、さてではワイバーンも撃退したことだ。早う上に向かおうではないか。なっ?なっ?」
「そうだな。」
今の目的はこの上にあるスカイフォレストの大地だ。まぁラピスのことをいじめるのはこの辺にしておいて、上に向かってもらおうか。
そして再び上へとラピスと共に飛び立ったカオル。
彼らがスカイフォレストへと向かった少し後……彼らの後を追うように大きな一つの影が通り過ぎて行った。
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