第121話 アルマのお願い③


 ラピスの協力も仰ぐことができ、着々とスカイフォレストへと向かう日程や準備を整えていたある日……。


 いつものように俺が買い出しに出かけていると、突然雲一つなく晴天だった空が曇った。不思議に思って空を見上げてみるとそこには巨大な島のようなものが空をゆっくりと飛んでいた。


「あれがスカイフォレストか。」


 こうして下から見上げてみると凄まじく大きいな。まじまじと観察していると、スカイフォレスト押した部分から植物の根っこのようなものがいくつも突き出してきていることに気が付いた。


「この距離からでも見えるあの根っこみたいなやつ……近くで見たらどんだけ大きいんだろうな。」


 目的の場所をこの目で見て、さらに好奇心をくすぐられた俺は買い出しを終えると急いで城へと戻りジャックのもとへと向かう。


「ジャックさん、ちょっといいですか?」


「おや、カオル様でございますか?どうぞお入りになってください。」


 城に帰ってすぐに彼の部屋をノックし中へと入る。そして俺は用件を彼に告げるのだった。


「ジャックさん、あのスカイフォレストに向かいたいので一日ほどお休みをいただきたいんですが……。」


「ホッホッホ、そういうことでしたら構いませんよ。魔王様の成長に必要なサンサンフルーツを取りに向かわれるおつもりですな?」


「はい。」


「でしたらなおさら断る理由はありません。向かう予定の日にちさえ事前に教えていただければ結構ですよ。」


「ありがとうございます。」


 そうしてジャックから許可をもらっていると、不意に部屋の扉がコンコンとノックされた。


「おや?」


「ジャック~そこにカオル居る~?」


 ドア越しに聞こえてきた声はアルマ様のものだった。ドアの向こうにいるのがアルマ様と分かるとすぐにジャックは席を立ちドアを開けた。


「魔王様、ちょうど今カオル様とお話ししていたところでございました。」


「あっ!!そうだったんだ~。」


 部屋の中へと入ってきたアルマ様は俺のほうに近づいてくると、にこやかに笑いながら言った。


「カオル、カオル!!アルマね、サンサンフルーツが食べたい!!」


 これは何ともちょうどいいタイミングだ。まるで狙いすましたかのようにアルマ様がサンサンフルーツを欲しがっている。


 これにはジャックもニコリと笑っている。


「わかりましたアルマ様、すぐにお持ちいたします。」


「うん!!楽しみにしてるね!!」


 そう言ってアルマ様はまた部屋を飛び出していった。


「ホッホッホ、なんともちょうどよいタイミングでしたな。」


「はい、アルマ様を待たせないようになるべく早く準備を整えて向かいたいと思います。」


 さて、恒例のアルマ様からのお願いも来たことだ。早いこと準備を整えてスカイフォレストへと向かおう。










 アルマ様のお願いが来てから二日後、俺とラピスは城下町から少し離れた場所に訪れていた。


「よし、この辺からならラピスの姿が見られることはないだろう。」


「カオルは心配性だの。我の本来の姿が見られたとてそんなに問題になることはあるまい?」


「急にドラゴンが城下町の近くに現れたってなったらみんな驚くだろうが。」


「むぅそういうものか。」


「そういうもんだ。」


「まぁ良い。それで我はあそこに浮かんでおる島へと向かえばよいのだな?」


 そう言ってラピスは上空に浮かぶスカイフォレストを見上げて指さした。


「あぁ、あそこが今回の目的地だ。」


「むっふっふ、あそこに美味いものがわんさかあるのか。今から楽しみで仕方がないな。」


 そうニヤリと笑うとラピスは人の姿から元の姿であるドラゴンへと姿を変えていく。そして完全に元の姿へと戻ると、こちらを向いて背中に乗るように言ってきた。


「さぁカオルよ、我の背中に乗るのだ。」


「ちょい待ち……。」


 俺は念のため防寒着を身にまとう。そんな俺のことを見てラピスは首を傾げた。


「む?なんでそんなに厚着をしているのだ?」


「今回行くスカイフォレストは相当高いところにあるからな。地表から離れれば離れるほど気温は低くなる。その対策だ。」


 それに加えてラピスは飛ぶスピードが速いから体感温度がさらに下がる。


「よしこんなもんで大丈夫だろ。」


 今は暑く感じるが、じきにこれがちょうどいいぐらいになるだろう。


 そして防寒着を着た俺はラピスの背中にまたがった。


「うむ、しっかり掴まっておるのだぞ?」


「あぁもちろんだ。」


「では食の楽園へと向かって……いざゆかんっ!!」


 ラピスはひとたび翼をはばたかせると、一気にスカイフォレストへと向かって飛び立つのだった。



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