第101話 闇オークション
城へと戻った俺は、アルマ様たちに夕食を作り終えるとジャックに闇オークションについて掛け合った。
「ホッホッホ、まさかカオル様がそんなものに興味をお示しになるとは思いもしませんでした。」
「あはは、行きつけの八百屋の店主から闇オークションにはスカイフォレストでとれた野菜とかも出品されるって聞いて……。それでちょっと興味が湧いたと言うか……。」
「確かに、何回か前にカオル様のお目当てのものが出品されていたのは私めも聞き及んでおります。ですが、それが今あるかは……わかりませんぞ?」
「それでも大丈夫です。」
俺が頷いたのを見ると、彼は胸の内ポケットから黒い一枚の紙を手渡してきた。
「こちらが紹介状です。場所は…………。」
そして俺は彼から紹介状を受け取り、闇オークションが開催されていると言う場所を教えてもらうと、彼にお礼を言って城を飛び出すのだった。
すっかり陽が落ちて暗くなった城下町の裏通り。大通りとは違い裏通りは街灯もなく、夜は不気味な雰囲気が漂っている。
そこを歩いて、紫色に発光する看板が目印のバーに俺は足を運んだ。
扉を開けて中に入ると、俺以外に客はおらずカウンターの内側にバーテンダーが一人立っているだけだった。
「いらっしゃいませ。当店のご利用は初めてのお客様ですね?何をお作り致しましょう。」
そう言ってにこやかに迎え入れてくれたバーテンダーに俺はジャックから手渡されていた黒い闇オークションへの招待状を見せた。
「おっと……ジャック様からの招待状ですか。オークションに参加したいのですね?」
「はい。」
「では、会場へと入る前にこちらをお付けください。」
そう言ってバーテンダーはどこからか顔を覆い隠すような仮面を取り出して、差し出してきた。
「闇オークションではお互いの顔の内側が知られないように、これで顔を隠して入場していただきます。」
なるほど、誰が参加してるのかわからなくするためか。プライバシーの保護は徹底しているらしい。
彼に促されるがまま、仮面を身に付けると案外視野も広く、呼吸もしやすかった。
「こちらが番号札です。もし入札したいものがありましたら、こちらを掲げていただいて金額を提示してください。」
差し出された番号札には24と番号が書いてある。
「これにて私からの説明は以上です。それでは、オークションをお楽しみ下さい。」
そしてバーテンダーは店の地下へと続く扉を開けた。
薄暗い階段を下っていくと、下から光が射し込んでいた。その光の方へと歩みを進めると、そこにはまるで小さな劇場のような場所が広がっていた。
既に俺の他にも何人か人は集まっており、舞台を見下ろすように椅子に座っていた。
その誰もが俺と同じく怪しげな仮面を身に付けていて、顔を見るようなことは出来ない。
(雰囲気的にオークションはまだ始まってないみたいだな。俺も適当な席に座っとくか。)
雰囲気的にまだオークションは始まっていないようなので、俺も周りの人たちと同じように舞台を良く見下ろせる場所に腰かけた。
それからしばらくすると、徐々に人が集まり始める。そして時計の針が22時を指した時だった。
パン!!パンパン!!
そんな軽い音を響かせて舞台の上にライトが何本も照らされた。そしてそこに仮面とハットを被った道化のような人物が現れた。
「皆さま、今宵もよくお越しくださいました。今回のオークションも私……マドラーが取り仕切らせていただきます。」
マドラーと名乗った司会の人がハットを手にして一礼すると、会場の至るところから拍手が送られる。
「ありがとうございます。さて、それでは今宵のラインナップは全部で7品ございます。そのどれもが普通には流通しない、このオークションならではの貴重なものとなっておりますので、どうぞこの機会にお買い求めください。」
まぁ、彼の話にはいくつかの意味があるだろうが……深くは考えないでおこう。なにせ闇と名がついているオークションだからな。
それだけ一般では流通できないようなヤバイものも扱っているのだろう。
「それではまず最初に皆様の目にご覧にいれますのは……こちらっ!!」
マドラーは何かの上にかけられていた赤い布をスッと持ち上げると、その赤い布の下にはキラキラと紫色に煌めく大きな宝石のようなものが置かれていた。
いったいそれはなんなのだろう……と考える間もなく、マドラーの説明が始まった
「こちらはとある鉱山で採掘された純度100%の魔力鉱石でございます!!」
魔力鉱石……聞いたことないな。ってかそもそも宝石ですらないのか。まぁ、ラピスなら欲しがりそうだが……。
「こちら最低金額は金貨50枚からになります。それではご所望の皆様どうぞ番号札を掲げて金額を仰ってくださいませ!!」
マドラーのその言葉を皮切りに、何人もの人達が次々と番号札を掲げ、最初は金貨50枚だった金額を60枚……70枚、80枚とどんどん吊り上げていく。
そして最終的に……。
「18番様白金貨1枚っ、そして金貨50枚いただきました!!他に対抗する方はいらっしゃいませんか?」
その声に続いて番号札を掲げる人は他にいなかった。
「それではこちらは18番様が落札になりましたっ!!」
最終的に白金貨をあっさりと超える金額を提示した18番の人がそれを落札する形になった。
(ほぉん……さすがは闇オークション。白金貨を躊躇いなく出せるぐらいのお金持ちの人達が集まってるんだな。)
まぁ、魔力鉱石なんてものに興味はない。さて、次は何が出てくるのだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます