第4章 激突
第100話 空に浮かぶ原生林
スカイフォレスト
それはその名の通り天空に浮かぶ巨大な森林のことだ。空に浮かんでいる原理はスカイフォレストの大地の中心には巨大な魔力の核があり、それが地上の魔力と反発しあって浮いている。飛行魔法を覚えているものや、翼があり空を飛ぶことのできる人種などでも、膨大な魔力やスタミナがなければはるか上空に浮かぶその場所にはたどり着けない。
しかしそのおかげででスカイフォレストの自然は人の手や魔物の手が一切加わっていない完全な原生林と化している。そのため地上には探しても滅多にないような貴重な植物が活き活きと生えている。
またそこにたどり着いた者は皆一様に、スカイフォレストに生えている野菜を食した後……地上で流通している野菜が食べられなくなった。という証言をしている。
そのことから、スカイフォレストに存在している植物は特別であることが良くわかる。
その中でもサンサンフラワーはスカイフォレストにしか咲かない超貴重な花である。サンサンフラワーは咲き終わりに大きな実をつける。それがサンサンフルーツと呼ばれている幻の食材だ。
それが次にアルマ様が欲する……魔王としての成長に必要な食材である。
次にアルマ様がお願いする食材を知った俺は、ジャックに渡された本を閉じた。
「スカイフォレストに生えるサンサンフラワーの実……サンサンフルーツ。それが次にアルマ様が欲する食材なんですね?」
「その通りでございます。」
今回は魔物と戦ったりするようなことにはならなそうだから、案外簡単に手に入れられそうだが……問題なのはどうやってそのスカイフォレストとやらに行くかだな。
「今回は魔物とかが障害じゃなくて、どうやってそのスカイフォレストに行くかが鍵になりますね。」
「スカイフォレストには魔物も人も存在しておりません。あるのはただただ、広大な自然のみですからなぁ。しかし、カオル様には力強い味方がいらっしゃるではありませんか?」
「力強い味方……ですか?」
「はい、ラピス様でございます。」
「あぁ!!確かにラピスならその遥か上空にあるっていうスカイフォレストまで飛んでいけるかもしれません。」
あいつ、一応スカイブルードラゴンっていう種族らしいし、五老龍?とか言うやつの一角らしいし……。空を支配するドラゴン?らしいし……。遥か上空にあるスカイフォレストまで連れてってくれるのはわけないだろう…………多分。
「それで、そのスカイフォレストってのはどこの上空にあるんです?」
「スカイフォレストは少しずつ移動しております。今はちょうど……ヒュマノの王都の上空あたりでしょうか。」
「えぇ!?いけないじゃないですか。」
「ご安心ください。魔王様がそれを欲する時期にはヒュマノからこちらへと流れてくると思われますので。」
「な、ならいいんですけど……。」
「まぁ、恐らく今回は強い魔物などと戦うような事はありませんので、観光のような気持ちでスカイフォレストを探索していただければと、私めは思っております。」
「そう……ですね。後で自分でもちょっとそれについて調べてみます。」
そして俺は最後のページまで読むことなく彼に本を返した。
「さて、それでは私はこれにて失礼致します。そろそろ魔王様とカナン様の様子を見に行かねばいけないので。」
「えぇ、ありがとうございました。」
彼はスッと立ち上がると、ペコリとこちらに一礼して部屋を後にして行った。
静かになった部屋の中でポツリと俺は呟く。
「……スカイフォレストねぇ。」
天空に浮かぶ人や魔物の手が一切加わっていない原生林……。さっきの本を見た限り、そこには貴重な植物だけでなく、野菜も生えているようだ。しかも、地上の野菜と比べ物にならないほど美味しい野菜が……。
これ程料理人心をくすぐるものはないな。
「一度食せば、地上の野菜が食べられなくなるほど美味しい野菜か……。」
一重に野菜といっても、産地や生産方法で大きく味は変わるものだ。分かりやすい例えで言えばトマトだな。
限界まで水分を与えずに育てたトマトは甘くフルーツのような味になるのだ。
しかし、それはあくまでも人の手が加わっているものだ。
「天然のもので、そこまで美味しくすることなんてできるのか?」
甚だ疑問だが、スカイフォレストに行った人達が皆一様にそう言っているのであれば信憑性は高い。
「楽しみだな。」
さてと、まだ時間もあるし俺の方でも少しスカイフォレストについて調べてみるか。
スカイフォレストの野菜が有名なら……八百屋が何か知っているのではないだろうか?
そう思った俺は行きつけの八百屋に足を運ぶことにした。
今日の食材を買うついでに八百屋の店主にスカイフォレストの野菜のことを聞いてみる。
「あの、スカイフォレストの野菜とかって……入ったりしないんですか?」
「あぁ~……スカイフォレストの野菜ねぇ。」
俺が問いかけると店主はいつになく渋い表情を浮かべた。
「あれは年に一度……競りで出るかどうかすら不透明な物で、うちにはまず入んないね。」
「そうですか。」
「でも競りに出ないだけで、闇のオークションとかにはスカイフォレストの野菜はたまに出品されてるって話は聞いたことがある。」
闇のオークション……確か前にヒュマノからの手紙が来た時にジャックが口にしていたような気がするな。
思えば、まだ俺はこの世界に来てオークションとかそういうのに参加したことはなかった。
その闇オークションとやらを覗いてみる価値は十二分にあるな。
そうと決まれば早速ジャックに取り合ってみよう。
「ありがとうございました。また近々顔を出しに来ますね。」
「おぉ~ぅ!!いつでもここで待ってるよ。」
いくつか野菜を購入し、俺は城へと戻るのだった。
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