第090話 装備新調
件のお祭りが行われる前日、俺はアルマ様とカナンと共に城下町に駆り出してきていた。というのもこの祭りに参加するのはアルマ様も初めてらしく、道具が何一つないらしいのだ。それはカナンも同じで、この機会に二人分の釣り具を揃えようというわけだ。
そういうわけで祭りで使える釣り竿が売ってるという店に訪れると、中には様々な釣りに使われる道具がたくさん並んでいる。
昨日祭りのルールが記された本を読んだのだが、どうやら道具は釣竿を使うのであれば基本的に何でもいいらしい。投網とかそういうのはルール違反に当たるようだ。まぁそんなのが許可されていたら簡単にたくさんの魚が獲れてしまうからな。
数えきれないほどの釣り具を前にアルマ様は口をぽかんとあけながら言った。
「ほぇ~こんなにいっぱいあるんだね。どれがいいのかさっぱりわかんないや。」
『ボクもわからないです。』
「カオルはどれがいいとかわかる~?」
「俺も釣りのことはさっぱりで……。こういうことはお店の人に聞いたほうがいいかと思います。」
「やっぱそうだよね~。」
「今店の人を呼んできますから、ここで待っていてください。」
「うん!!」
そして俺は店員を呼ぶべく店の中を歩き始めた。きょろきょろとあたりを見渡しながら歩いているとやっと店員らしき人を見つけることができた。
「すみません。」
「は、はいっ!?ど、どうかしましたか?」
声をかけて驚かせてしまったようで、店員の女性はおどおどとしながら受け答えしてくれた。
「祭りで使えるおすすめの釣り竿とかを教えてほしいんですけど。」
「あ、わ、わかりました。」
彼女を連れてアルマ様たちが待っているところへと戻る。そして彼女がアルマ様の姿を目にすると、途端に慌て始めた。
「あ、あぁぁぁっ!?ま、ままっ魔王様!?」
「やっ!!アルマこういうのよくわかんないから教えて~。」
「は、はひっ!!え、えっとですね、一番初心者の方でも使いやすいものはこちらだと思います。」
おどおどしながらも、店員の女性は初心者にも使いやすいという釣竿を紹介してくれた。
「これは軽くて良く撓る素材でできています。だから、大物がかかっても折れるような心配はありません。それに、しっかりと魚が食いついたときにここの魔石が光って反応するようになってて釣りやすくなってるんです。」
「おぉ~……なんか良さそう?」
彼女の説明を聞いている限りでは確かに初心者向けの釣竿だな。誰でも釣りというものを楽しめるような設計になっている。
これならば釣りが初めてのアルマ様でもカナンでも使えるのではないだろうか。
「どうしますか?」
「ん~、カオルはどう思う?」
「釣りの楽しみはやっぱり釣れないと、面白くないのでこういう釣竿は良いと思います。」
「だよね~、じゃあアルマはこれにする~!!」
『ボクもそれがいいです。』
二人がこれでいいっていうのならこれを購入しようか。
「それじゃあこれを二つください。」
「あ、ありがとうございます!!すぐに梱包してきます!!」
そして彼女は釣竿を梱包するため店の奥へと走っていった。
「カオルは買わないの~?」
「俺はギルドにある釣竿を借りるつもりなので、大丈夫です。」
まぁ本格的に参加するつもりはないしな。あくまでも仕事の合間にやるぐらいだからな。
そんなことを話していると、先程の店員が戻ってきた。
「お、お待たせしましたっ!!」
「ありがとー!!えへへこれでアルマもカナンも釣りができるねっ。」
『うん!!』
嬉しそうな二人の姿を見ているとこちらまで嬉しくなってくるようだ。
「そういえば、魚を釣るときの餌って何を使えば?」
「あっ、糸に魔力を流せば針のところにこんな感じで……。」
彼女が糸に魔力を流すと糸の先の針に海老のような形を象ったものが現れた。
「魚が餌にするような小さい海老が象られるんです。」
「ほぉ~。」
こいつはハイテクだな。餌も使わないで釣れるのか。マジで楽じゃないか。
「えへへへ~優勝はこれでアルマのものだもんね~。」
『ボクも負けないからねアルマちゃん。』
自分の釣り竿を買ったことでお互いにめらめらと闘志を燃やし始めた。競い合う相手がいるというのは良いことだ。これはアルマ様にも良い刺激になるだろう。
「それでこの釣り竿っていくらなんです?」
「あ、二本で金貨20枚です。」
金貨20枚か……。結構値段が張るものなんだな。まぁこれだけ高性能だし出し惜しむまでもない。俺は収納袋から金貨を20枚取り出して彼女に手渡した。
「き、金貨20枚確かに頂きました。お買い上げありがとうございます!!」
「ありがとね~!!」
そして俺は二人を連れて店を後にした。
お祭りまで残り二日……町の喧騒はより一層激しくなっていく。
それにしても昨日からナインの姿を見かけない。本当にどこに行ったのだろうか?
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