第2話 ソルジャーの学園


 ────2000年4月1日。



 突如、人界に神の災いが起きた。それは、復活した悪魔神・サタンによって引き起こされた災害で、地上に人類の敵を呼び出したのだ。後にそいつらは『ヴァイス』と呼ばれ、人を襲い、街を破壊し、人類は壊滅の危機に陥った。しかし、それを見兼ねた太陽神・天照アマテラスは、人類に「異能」と呼ばれる力を与えた。それによって人類は壊滅の危機から逃れ、束の間の平穏を手に入れた。

 それから100年後、街はすっかり復旧し、異能という存在が世間で認められつつある時代。100年前のサタンとの大戦でヴァイスを全て滅ぼしたかと思われていたが、世界各地にその残骸は残り続け、100年前の災害を危機した人類はヴァイス対抗の戦闘員を育成し始めた。後にそれはソルジャーと呼ばれ、現代社会に必要な仕事の一つとして世間から認知されるようになった。ソルジャー育成専門の学校なども設立され、異能という存在、ヴァイスという存在が人々の日常となってしまった頃──────世界に変貌が訪れる。



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 2100年4月1日。

 俺は乗り慣れない電車に揺られながら、窓から見える変わりゆく景色に目を向けていた。

 人類が長い間築いてきた文明の域と、それによって数少なくなってしまった僅かな自然を感じつつ、これからの日々に胸を膨らませていた。

 景色の奥にある街では何やら煙が上がっているが、それをおかしいと目を向ける者は1人もおらず、それが日常となってしまった今の社会を如実に表していた。

 慣れというのは怖いものだ。数年前まで一瞬で騒がれていたことが今では誰も見向きもしない。それが人間の本質なのかもしれない。

 目当ての駅まで着くと、人の波に飲み込まれながらもどうにか電車を降り、目的地までのバスに乗り込んだ。

 中には俺と同じ制服を着た生徒が既に多く乗車しており、そこに紛れるように俺も空いている席に腰を下ろす。

 これを機に友達作りをと話しかけている者もいたが、俺にそんな勇気は無く、ただ無言でまた揺られていた。

 異能が日常となったこの社会でも、電車やバスなどの交通機関は多くの人々が利用している。

 世間体的には、異能を頻繁に使用することはあまりよろしくないらしい。

 人類にとってまだ異能は未知の物なのだ。

 100年前に神から授かったこの力を不気味に思っている人は少なくない。今でも多くの研究者がその謎を解明しようとしているが、神の産物という人類では到底理解し得ない物に何度も頭を抱えていた。

 しかし、その力が人類にとって悪い影響を与えているかと言えば、それは否である。100年前の大戦と同じく、ヴァイスへの対抗手段として異能は非常に役に立っていた。

 そして、その未知の力を仕事道具としている職業がある。『ヴァイス対抗の戦闘員』という名は、いつしか『ソルジャー』と呼ばれるようになった。

 その『ソルジャー』を目指して日々努力している若者は多くいる。特にこれから行く場所にはそんな輩が5万度いるだろう。

 と、そんなことを考えていると、どうやら目的地に着いたようだ。

 ぞろぞろと降りていく乗客に合わせ、俺も重たい腰を上げた。


「やはり国が運営しているだけあって大きいな」


 俺の目的地は、国立ソルジャー育成高等学校。ソルジャーを育成することだけを専門とした学校だ。日本では東京と京都の2校しか存在せず、俺はその東京校に見事選考された。

 巨大な正門の前には、『入学式』と書かれた看板が俺たち新入生を歓迎していた。

 流れゆく人波に乗って、いざ俺も正門をくぐる。



 ここから俺の学園生活が始まる。


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