第1話 プロローグ1 そして現在

2121 Spring Tokyo


夜、都会の片隅で

時は流れても世界は旧態依然のままで国家間の権力争いは絶えず、愚かな人間は他者よりも力と利権を欲して非科学的な物にも手を出していた。

それはいつもと変わらない夜、東京の片隅に集まった異国の男達から始まる。

国の威信もさることながら、それぞれにプライドが高く本来は有りえない一同が介していた。


この時代、科学が発展し言語の壁は無くなっている。

全ての会話イントネーションを網羅してはいないが、高性能イヤホン型翻訳機は多言語同時翻訳機能搭載の優れ物で、一般にも普及しているが国家で使用しているものは更に感度や方向に範囲まで調整できる高性能仕様だ。

とは言え、一般人には高額な人体装着機を買うならば、古来からの方法で語学習得しようとする者は多い。


喧騒が絶えず聞こえる街並み。

何処にでもある居酒屋には人種を問わず多彩な顔ぶれが並んでいた。

前代未聞、過去に例の無い各国のエージェントの集まりは喧騒の中で行われた。




ガヤガヤガヤ

某英会話教室講師懇親会で予約した居酒屋の個室には十人弱の外国人"講師"が集まっていた。

It is unusual to get together this time, but to provide information on each other in the case of an example.

(今回集まってもらったのは異例だが例の件でお互いの情報を提供する事だ)

(((・・・)))

沈黙する一同。

Но хорошо ли это? Мы делаем это.

(しかし、良いのか?我々がこんな事をして)

就此而言,该国在这方面的戒备森严。 直到现在,无论政府如何动摇,它都没有奏效。

(それほどまでに、この件に関してはこの国のガードが堅い。今まで政府にどんな揺さぶりをかけても全く通じなかったからな)

Sûrement.

(確かに)

Di chi parli?

(では誰から話す?)



まずは1人ずつ差支えの無い内容を口にした。

Ce que nous savons, c'est que les gars de "Rikunai" l'utilisent autour de la gare.

(我らが知るのは、そこの駅周辺に"リクナイ"の連中が利用している事だ)

全員がその発言に相槌を打つ。

We are also glaring that the actions of "Rikunai" will be connected.

(我らも"リクナイ"の行動が繋がると睨んでいる)

我们也是。

(我らもだ)

Eso es correcto

(その通りだ)

Anche

(同じく)



Но они прячутся где-то в этом городе.

(だが奴らはこの街の何処かに潜んでいる)

全員がその発言に相槌を打つ。

Eu nem sei como isso está bloqueando nossa cauda.

(どうやって我らの尾行を阻んでいるのかも解らん)

「「「・・・」」」

同意するが何も発言しない一同。

いかし一向に確信に迫らないので郷を煮やして声を荒げるのだった。




Hey, do you know the real value of this city?

(おい、この街の本当の価値を知ってるか?)

этот город? Не в Токио, а в городе, в котором мы сейчас находимся?

(この街?東京ではなくて俺たちが今居る街の事か?)

Sua linda irmã lhe prestará muito serviço?

(綺麗なお姉さんがいっぱいサービスしてくれるのか?)

Scemo!

(馬鹿!)

Cette ville est ・・・・・・・

(この街はな…)

全員が顔を寄せ合う。


・・・!!


什么! 真的馬!?

(何! 本当か!?)

War das Gerücht schließlich wahr…

(やはりあの噂は本当だったのか・・・)

That's it. There seems to be an example facility somewhere in this town.

(そうだ。この街のどこかに例の施設があるらしい)

Как я и думал.

(やっぱりか)

不過我們也在調查,但根本沒有任何信息。

(しかし、我々も調査しているが一切情報が無い)

It is said to be the miracle of the previous Kamikaze, and it is called the Kamikaze No. 43, and there is no information from the government sources of this country, and if it ends up in vain this time, our position will get worse.

(前回の神風の奇跡と言い神民四三號と言い、この国の政府筋からは一切情報が無いし、今回も無駄足に終われば我等の立場が更に悪くなる)

Tous ... peut-être que les sources gouvernementales de ce pays ne savent vraiment pas.

(全くだ・・・この国の政府筋は本当に知らないのかもな)

已經好幾年了,但它真的是這樣出來的

(何年もかけてるが本当に出てこんな)

Ne sors pas.

(出てこないな)

That's how strict the regulations are.

(それだけ規制が厳しいのだろう)

Você quer verificar as instalações nacionais novamente?

(もう一度国の施設を調べるか?)

Laut unserer Umfrage handelt es sich bei diesen Einrichtungen wahrscheinlich um Gebäude mit einem Umzugsplan unter Annahme einer Katastrophe in der Innenstadt.

(我らの調査ではアレらの施設は、都心での災害を想定した遷都構想の建物だろう)

Transferencia de capital? Moverá el centro del país?

(遷都?国の中枢を移すのか?)

When a disaster occurs.

(災害が起こった場合だ)

Oh, è un terremoto.

(ああ、震災だな)

Um.

(うむ)


極客很好。

戰後,我在該地區建立了一個被佔領的自治區。

(オタクは良いよなぁ。

大戦後にあの地域に占領自治区を作ってヨォ。)

・・・

ある国のエージェントはダンマリだ。


Comunque, credo di aver fatto un accordo segreto con il governo in quel momento.

(どうせ、当時の政府と密約したんだろう。)

・・・

沈黙を通している。


Eh bien, si les États sont derrière moi, ce pays est toujours une marionnette.

(まぁ、ステーツが後ろに居るならこの国はずっと傀儡だな。)

・・・

エージェントの顔が多少引き攣っている。


Все. Вершина тоже должна идти к этой базе.

(全くだ。トップも必ずあの基地に行くしな。)

... Isn't that the story right now? Go back to the story.

(・・・今はそんな話では無いのでは無いか?話を戻してくれ。)


Тогда, в конце концов, этот район будет подозрительным

(では、やはりあの近辺が怪しいだろう)

It may be their trap that makes me think so.

(そう思わせるのが奴らの罠なのかもしれん)

Alors c'est tout. Est-ce un piège ? Je dois donc le découvrir même si je recherche n'importe quel pays.

(なるほど。罠か。だからどの国も調べても解らないと)

But it must be in this area.

(だが確実にこの地域に有るはずだ)

Это та же идея для нас

(それは我らも同じ考えだ)



(((だかそれこそ目眩しなのかも知れんしな・・・)))



Let's divide this town into districts and investigate. And is it okay to promise to cooperate in this matter?

(ではこの街を地区分けして調べる事にしよう。そしてこの件に関しては協力すると約束する事で構わないな?)


Yes、да、是、Oui、sì、Ja、Jawohl.


Well then dismiss.

(それでは解散)


全員が相槌で合意を示し、"ソレ"の情報を集める為だけの短い密談は幕を閉じた。




誰もが知る居酒屋のチェーン店で多国籍の男たちが一つのテーブルを囲み密談を行っていた。

人込みに紛れて密談をするのは雑音の多く会話も聞き取れず声が掻き消されるほど繁盛している居酒屋だ。

本来スパイ活動における情報の共有は自国の部門に限られる。

しかし、長年の活動においても”その全容”が一切解明できなかった責任者達は異例の密談を行った。

国名は避けるが、某ステーツ、某フィディラーツェ(ロシア)、某人民共和国、某リピュブリーキ(フランス)、某ユー・ケー(イギリス)、某ヘポブリカ(ポルトガル)、某ブンデスレプブリーク(ドイツ)、某レイノ(スペイン)、

某レプッブリカ(イタリア)





早朝からアルバイトに励む少年は今、中学3年生だ。

出入りの問屋で親方から指示された食材の"目利き"を行い、ゆりかもめの市場前駅を利用している。


実はこの少年は誰にも言えない秘密を持っている。

それは転生者であり、魔法が使える事だ。


"最近"持ち歩いている綺麗な小石を細工してスマホカバーのキーホルダーにしたのだが、コレが元で予想外の展開が待ち構えていた。


「ねぇ君!ちょっと良いかなぁ」


市場前駅に向かう途中でスーツを着た綺麗なお姉さんとお兄さんが声を掛けて来た。


「はい、何でしょうか?」

「君ぃ何か特別な石を持ってないかなぁ、良かったらちょっと見せて欲しいけど良いかな?」


ニコニコと笑顔のお兄さんと綺麗なお姉さんで印象は良いのだが、ご要望のモノの価値を知っているみたいなので、とぼける事にした。


「何も持ってないですよ、俺急ぐから」

そう言って駆け出した。


「どう?」

「ああ、間違いない。魔石の反応だ」

それは腕時計型の魔石反応装置だった。

仕組みは簡単で、腕時計の中に魔石のカケラが入っているのだ。

魔石は魔石に反応してより大きな魔石に吸い寄せられる性質があり、反応が無ければ重力に従うのだが、今は強く発光し反応しているからだ。






Suburbs of StandRiver, Tokyo(東京都立川市郊外)

行政の建物が多く、広大な敷地を有し、近隣にも同様の大きな公園が存在する。

この周辺の地下深くに広大な敷地を利用した特別な施設が存在する。


一般には極秘扱いされているが宮内庁直轄の実験施設と大地母神殿が祀られており、数十年から数百年周期で地鎮祭が執り行われている。

ここで行われているのは、魔石を使用した研究と地殻制御と言う地盤の強化の儀式だ。



古くからこの島は幾度と無く天災に襲われて来た。

壊滅的なのは地震と、それによる噴火や津波だ。


この天災をいにしえの時代から守ってきた集団が存在する。

時の為政者の庇護のもと闇に潜み、その存在は時代と共に呼び名も変わっていった。


時の為政者が協力者にならなかった場合には必ず壊滅的な天災が訪れていた。


江戸時代に起こった天災以降は現在の場所に移し、近代では政府の管轄にもなったのだが、愚かな金の亡者の行いで何度も天災に襲われた日本国だった。

それが最近になってようやく元の宮内庁直轄に戻ったのだった。


集団の中には血族も存在するが、多くは防衛省か警察庁からの生え抜きでエリート中のエリートが選ばれていた。

必要な心技体は当たり前で、何よりも国を愛する忠誠心と秘匿性が求められた。



その広大な地下基地に厳重に隔離された場所が有る。



決してメディアやマスコミなどの表舞台には出てこないこの施設は数々の検閲所けんえつしょを通らなければならない。

身長、体重、骨格、指紋、声紋、虹彩認証などの生体認証バイオメトリクスを通り、組織の発行する身分証を提示して通過できる。

その広大な地下基地に厳重に隔離された場所が有る。


駅を中心に張り巡らされた地下通路には、担当の部署別の通路が存在する。

ある部署は飲食店であり、ある部署は薬局であり、あり部署は衣料品店と様々であり、他部署の通路は知らされていない。



極秘の施設にあるソレは神殿の様で、社の内には多くの設備が配置され中央には仏像の代わりに光り輝く石が数個置かれていた。


「今日も要石かなめいしに異常は無いな」

「はい、いつも通り異常無しです局長」


宮内庁外部部局特殊機関が正式名称で有り、一課が祭事を行い、二課が研究を行い、三課が外部の調査を取り仕切っている。

決してマスコミや表沙汰にならないこの組織を、一部の政治家たちからは裏の宮内庁、"リクナイ"と呼ばれていた。


要石とはこの国の地盤を強化するための術物で有ると江戸時代まではそう呼ばれていたが近代では魔石と呼ばれている。

しかし研究者たちは魔石と呼ぶが、統括する者は古式の名で呼んでいる。


現代科学では証明出来ない不思議な力を持つこの石を一体どのようにして入手しているのでろうか?



「局長、魔石反応を発見しました」

「何ぃぃ本当かぁ!」

「はい」

「何処で見つけて、誰が持ってた?」

「学生だと思われます」

「学生ぇ!?何故学生が・・・」

「只今追跡中ですがどうしましょう?」

「まずは身元確認と身辺調査をしてくれ」



外特三課は防衛省と警察庁に特務機関として位置づけられていて、特定の調査や事件に関しては第一級の権限を与えられている。









探査機

特殊な公務員が操作する機械は腕時計型魔石探知機だ

その特殊性からこの国にしかその技術が無い物だが、いつの間にか他国のエージェントにも知られてしまっている。


魔石Magic stone

この国では昔から勾玉と呼ばれる物が存在する。

結論から言えば形が問題では無く、その性能、性質、成分が現存する鉱物とは異質な物で、その効果は未知なるものだ。

しかし、この国がその魔石を活用し、何かしらの効果と成果を出していると各国は認識し調査している。

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転生妻達のソワレ【脱日本人計画編】 流転小石 @esc123

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