第2話 仕込み杖

タマオーは献身的に治療にあたってくれた。ユリーも手伝い、僕はみるみるうちに回復していった。

「大分よくなったわね、今日包帯をとろうと思うの、そしたらお風呂入ってくださいな、その何というか…臭いので」

はっきり言われて僕はむしろ気持ちが良かった。

「タマオーさんはここで娘さんと二人で暮らしてるんですか?」

「はい、あの、未亡人なんです」

「そうですかお気持ちお察ししやす」

何故か語尾がしやすになってしまった事は気にも留めなかった。そして昼飯をご馳走になり、風呂に入ることになった。風呂に入ると鏡があったので、ちょうどいいと覗き込んでみた。そこには…、太った熊髭の爺さんがいた。

「マジかよ…」

なんでよりによって、爺さんなんだ、普通転生ものって少年から青年にかけてじゃなかったっけ?と自問自答する。僕は憂鬱な気分で身体を洗い、風呂に入ると烏の行水ですぐに出て、身体を布で拭いた。

「どうでした湯加減は?」

タマオーにそう聞かれ、

「いい湯加減でしたよ」

と答えた僕だったが、風呂の気持ちよさなど微塵も感じないほど絶望していた。

しかし鏡で見た時、誰かに似ているなあと直感的に思っていたが、それが誰なのか思い浮かばなかった。部屋に戻り、唯一持参していたアイテム、杖をいじくり出した。

棒状の杖で特に変わった様子もない。いじくり回しているとカチッと音がして、杖の下半分が抜けた。それは、紛れもない長ドスだった。

「マジか」

焦った僕は、すぐさま抜けた杖の下の方を長ドスにはめ込み、平然を装った。まあ、よくわからない世界、護身用に一本持ってても、つかまりゃしないはずである。

トントン――。ドアをノックする音が聞こえた。

「あの、少しだけお酒用意しましたんで後で一杯どうぞ」

タマオーの声が聞こえた。

「はい、ちょうだいいたしやす」

僕はもうこの口調で、通そうかなと諦めていた。

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座頭市転生 魯沙土曜 @rosado

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