第92話 飾邪 8
明主之道,必明於公私之分,明法制,去私恩。夫令必行,禁必止,人主之公義也;必行其私,信于朋友,不可為賞勸,不可為罰沮,人臣之私義也。私義行則亂,公義行則治,故公私有分。
明主は公私を切り分け、法制を明らかとし、私恩を忘れる。命令は必ず実施し、禁制を犯すものへの処罰は確実に行う。これが人主が公に示すべき事柄である。いっぽう、仕事に私情をもちこみ、友情に基づいて結託する。そうして功績に対する褒賞も、違反に対する処罰も効をなさないこれが人臣たちの私的な感覚である。私的な感覚が先行すれば統治は当然乱れようし、人君の方針が透徹されれば統治は整おう。このため公私はきっちりと分けられねばならない。
人臣有私心,有公義。修身潔白而行公行正,居官無私,人臣之公義也;汙行從欲,安身利家,人臣之私心也。明主在上,則人臣去私心行公義;亂主在上,則人臣去公義行私心。
人臣には私心があるが、一方で公義とて持ち合わせぬ訳でもない。身を潔白に修め公的で正しきことをなし、官職にて私心を働かせようとしない、これが人臣に対して公に求められるべき振る舞いである。私欲に基づいて汚職をなし、自身や家門を守ろうと考えるのが人臣の私心である。明主が上におれば人臣は私心を捨て公義に動こうが、亂主が上におれば人臣は公義を捨て私心をほしいままとしよう。
故君臣異心,君以計畜臣,臣以計事君,君臣之交,計也。害身而利國,臣弗為也;害國而利臣,君不為也。臣之情,害身無利;君之情,害國無親。君臣也者,以計合者也。
君臣の心は、はじめから違うものなのだ。だので人君は臣下を養うのに十分な計略を持たねばならない。臣下は臣下で計略をもって人君に仕えている。すなわち、両者の関係はどこまでも打算である。我が身を損ねてまでお国のために尽くそうだなどと思う臣下はおるまいし、国を害してまで臣下のために尽くそうだなどと思う人君もおるまい。身を害せば利益もクソもなく、国が傾けば臣下の親しみなど意味がないからだ。こうした打算が組み合わさったものが君臣の交わりであると重に踏まえ置くべきである。
至夫臨難必死,盡智竭力,為法為之。故先王明賞以勸之,嚴刑以威之。賞刑明,則民盡死;民盡死,則兵強主尊。刑賞不察,則民無功而求得,有罪而倖免,則兵弱主卑。故先王賢佐盡力竭智。
困難に直面したところで死に物狂いとなり、知を振り絞り力を尽くそうと思えるのは、法によってそう仕向けられているがためである。このため過去の聖王たちは褒賞基準を明らかとして臣下らを奨励し、刑罰基準を明らかとして臣下らの動きを制御したのである。褒賞と刑罰の基準が明らかであれば民も死をも恐れず力を尽くそうし、ともなれば兵も国も強くなる。明らかでなければ真逆のことが起こる。この辺りが厳密に守られていたからこそ、聖王たちのそばには多くの賢臣がいたのだ。
故先王賢佐盡力竭智。故曰:公私不可不明,法禁不可不審,先王知之矣。
「公私は明確に切り分けねばならず、法律禁制は明確に定められねばならない、このことを過去の聖王たちはよく理解していた」と語られるのには、確かな理由があるのだ。
韓非子については、正直「公私不可不明,法禁不可不審,先王知之矣。」こいつだけきっちり把握できりゃそれでおしまいなんちゃうん的な感覚になってきています。ただその際に必要なのは何が褒賞基準で、それぞれにどれくらいの褒賞を下すかであり、何が処罰基準で、それぞれにどれだけの処罰を下すかを実際に示してくれる一覧だと思うのよな。それなしで「法を守れ!」とか言われても、えっはい以上の何も言えませんよ、とゆう。
まぁともあれ、そんな感じでややげんなりもしてきたので、ここで韓非子を終了します。これで四分の一なんで、残り四分の三についてはまったり読んでみます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます