第88話 飾邪 4
臣故曰:明於治之數,則國雖小,富;賞罰敬信,民雖寡,強。賞罰無度,國雖大,兵弱者,地非其地,民非其民也。無地無民,堯、舜不能以王,三代不能以強。
このため私は言っている。統治の術に明るくさえあれば小国であっても富み、信賞必罰が徹底されていれば民が少なくとも、強い、と。賞罰の基準が緩ければ、国が大きくなっても兵は弱く、土地も民もその国の統治下には収まらぬ。土地も民もないのであれば、たとい堯舜であっても王として君臨はできず、夏殷周の三国も天下の主となれはしない、と。
人主又以過予,人臣又以徒取。舍法律而言先王以明古之功者,上任之以國。臣故曰:是原古之功,以古之賞賞今之人也。主以是過予,而臣以此徒取矣。主過予,則臣偷幸;臣徒取,則功不尊。無功者受賞,則財匱而民望;財匱而民望,則民不盡力矣。
人主の下す褒賞が実情よりも過大であったり、また臣下が過大であることを求める。法律よりも先人の名言ばかりをもてはやし、国の重任に付けたりするものがある。私は思うのだ、昔の基準ばかりを重んじ、昔の基準で今の者を讃えるのか、と。こうして褒賞の濫発が起こる。このような状態になれば、実績の功績を重んじる者がどれだけ出てくるだろうか。こうして国庫が底を尽き始めてもなお、民は高望みをする。その上で、お国のために力を尽くそうとはすまい。
故用賞過者失民,用刑過者民不畏。有賞不足以勸,有刑不足以禁,則國雖大,必危。故曰:小知不可使謀事,小忠不可使主法。
褒賞を濫発するものは民心を失う。刑罰の用い方を誤れば民はお上を恐れなくなる。褒賞でも働かなくなり、刑罰でも制御ができない民など、そんなもの数が多ければ多いほど危ういに決まっているではないか。だからこう言われているのだ、小知でははかりごとをなしようがなく、小忠では法律をまともに運用できないのだ、と。
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