一一 孤憤

第42話 孤憤 1

智術之士,必遠見而明察,不明察,不能燭私;能法之士,必強毅而勁直,不勁直,不能矯奸。人臣循令而從事,案法而治官,非謂重人也。重人也者,無令而擅為,虧法以利私,耗國以便家,力能得其君,此所為重人也。智術之士明察,聽用,且燭重人之陰情;能法之直到勁直,聽用,矯重人之奸行。故智術能法之士用,則貴重之臣必在繩之外矣。是智法之士與當塗之人,不可兩存之仇也。


 統治の術を身につけたものは先見の明がある。そうでなければ私的な企みを暴くことができない。法を取り扱うものは厳しく正義を貫かなければならない。でなければ奸賊に丸め込まれる。これを実践できるものが士人である。対して重人と呼ばれる臣下がいる。かれらは命令法規に従わず、国家の利益を一族の私腹に回そうとする。士人は重人たちを明察で見抜き、強き正義感の元に正そうとする。結果として権臣や重臣たちは、士人に弾劾されるしかない存在であり、両者は相容れないのだ。

 政令に従い、法に基づき統治する。こういった人臣が、王の元にはおらねばならない。



當塗之人擅事要,則外內為之用矣。是以諸候不因,則事不應,故敵國為之訟;百官不因,則業不進,故群臣為之用;郎中不因,則不得近主,故左右為之匿;學士不因,則養祿薄禮卑,故學士為之談也。此四助者,邪臣之所以自飾也。重人不能忠主而進其仇,人主不能越四助而燭察其臣,故人主愈弊而大臣愈重。


 国家の要人が王をないがしろとして専権を恣にしていたら、人臣の耳目は全て要人の方に集まってしまう。周辺諸侯も、役人たちも、近習たちも、学者たちも、王ではなく要人の顔色ばかりをうかがう。そうして要人、すなわち重人は彼らの存在で自らをうつろに飾り立てるのだ。一方で士人は重人の敵であるから王のもとに推挙されることがない。こうなれば君主のもとには何も情報が届かず、そして重臣はますます権力を大きくしていく。



 法家が王に用いられないことの悔しさを叩きつける、という感じの章のようですね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る