第41話 十過 9

奚謂國小無禮?昔者晉公子重耳出亡,過於曹,曹君袒裼而觀之。釐負羈與叔瞻侍於前。叔瞻謂曹君曰:「臣觀晉公子,非常人也。君遇之無禮,彼若有時反國而起兵,即恐為曹傷。君不如殺之。」曹君弗聽。釐負羈歸而不樂,其妻問之曰:「公從外來而有不樂之色,何也?」負羈曰:「吾聞之,有福不及,禍來連我。今日吾君召晉公子,其遇之無禮。我與在前,吾是以不樂。」其妻曰:「吾觀晉公子,萬乘之主也;其左右從者,萬乘之相也。今窮而出亡過於曹,曹遇之無禮。此若反國,必誅無禮,則曹其首也。子奚不先自貳焉。」負羈曰:「諾。」盛黃金於壺,充之以餐,加璧其上,夜令人遺公子。公子見使者,再拜,受其餐而辭其璧。公子自曹入楚,自楚入秦。入秦三年,秦穆公召群臣而謀曰:「昔者晉獻公與寡人交,諸侯莫弗聞。獻公不幸離群臣,出入十年矣。嗣子不善,吾恐此將令其宗廟不祓除而社稷不血食也。如是弗定,則非與人交之道。吾欲輔重耳而入之晉,何如?」群臣皆曰:「善。」公因起卒,革車五百乘,疇騎二千,步卒五萬,輔重耳入之于晉,立為晉君。重耳即位三年,舉兵而伐曹矣。因令人告曹君曰:「懸叔瞻而出之,我且殺而以為大戮。」又令人告釐負羈曰:「軍旅薄城,吾知子不違也。其表子之閭,寡人將以為令,令軍勿敢犯。」曹人聞之,率其親戚而保釐負羈之閭者七百餘家,此禮之所用也。故曹,小國也,而迫於晉、楚之間,其君之危猶累卵也,而以無禮蒞之,此所以絕世也。故曰:國小無禮,不用諫臣,則絕世之勢也。


 小国のくせに礼をわきまえなきゃそりゃぶん殴られるわ、というお話。


 曹は大国である晋と楚に挟まれる土地。そんな曹に、晋の内乱から逃れてきた姫重耳、すなわちのちの晋文公がやってくる。で、姫重耳のあばらが一枚につながる異相だと聞いていた曹の共公、おいそのあばら見せてみーやと姫重耳をひん剥く。

 ビビったのは二人の臣下、釐負羈と叔瞻だ。共公のふるまいは、将来の大国の主に対する無礼として、いくら詫びてもおつりが受け止めきれないレベルのアレ。ここで叔瞻は「将来仕返しされるから今のうちに姫重耳を殺すべき」と進言。いっぽう釐負羈は丁重に詫びを入れたうえ、財宝と食事を姫重耳に献上した。

 その後、ご存じの通り姫重耳は晋の文公として斉桓と並ぶ春秋五覇のトップに。やがて曹に攻め込んだ時、「叔瞻を出せ。殺す。釐負羈については重んじてくれたので助ける」と言い出したのだそうな。


 えっ共公は?


 ここには載ってませんが、共公、いちど晋にとらえられ、封地の一部を晋に献上こそしたものの復位したのだそうな。あと叔瞻は身柄を差し出される前に自殺したのだそうです。そりゃ引き渡された後にどんなお仕置きが待つともしれませんものねえ……。


 ちなみに曹は晋と同じ姫姓です。そのために殺されずに済んだのかもしれませんね。

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