四  人間世

第21話 人間世 1

顏回見仲尼,請行。

曰:「奚之?」

曰:「將之衛。」

曰:「奚為焉?」

曰:「回聞衛君,其年壯,其行獨;輕用其國,而不見其過;輕用民死,死者以國量乎澤若蕉,民其无如矣。回嘗聞之夫子曰:『治國去之,亂國就之,醫門多疾。』願以所聞思其則,庶幾其國有瘳乎!」


 顔回が休暇願。

 どこ行くん? と孔子が聞くと、衛に、と言う。

 衛の国の君主がひどくて国がひどい。なのでそれを正しに行きたい。



仲尼曰:「譆!若殆往而刑耳!

夫道不欲雜,雜則多,多則擾,擾則憂,憂而不救。古之至人,先存諸己而後存諸人。所存於己者未定,何暇至於暴人之所行!


 孔子が言う。

 いやいや、お前が行ったところで殺されるのがオチだって! やっべーから! いいか、聖人はまず「道」を体得してから初めて他人を導きに出るねん、お前まだ道体得してねっしょ? やっべーって!



且若亦知夫德之所蕩而知之所為出乎哉?德蕩乎名,知出乎爭。名也者,相軋也;知也者,爭之器也。二者凶器,非所以盡行也。


 そもそも俺らが徳を持てなくなったのは名誉心の奴隷になったから! 知に頼るようになったのは、相争うから! 名誉心と知とは、いわば相手を傷つける凶器なわけ、わかる!?



且德厚信矼,未達人氣,名聞不爭,未達人心。而強以仁義繩墨之言術暴人之前者,是以人惡有其美也,命之曰菑人。菑人者,人必反菑之,若殆為人菑夫!


 しかもお前が仮に、仮によ? もし名誉心や知を超克し、きっちり徳を発揮し争わずにいられたって、それじゃやっぱ足りんのよ。相手の気持ちも考えずに機械的に仁義やら道徳の言葉をぶつけてみ? 相手はお前のこと欠点あげつらってくるクソだって思うからね? そんなんになったらお前やっぱ殺されちゃうよ?



且苟為悅賢而惡不肖,惡用而求有以異?若唯無詔,王公必將乘人而鬪其捷。而目將熒之,而色將平之,口將營之,容將形之,心且成之。是以火救火,以水救水,名之曰益多。


 衛公が賢者を尊びクソを憎むってんなら、そもそもお前があえて行くまでもないだろう? けど事実は違うよな? 衛公はお前が口を開くより前に押しつぶしにかかってくるだろうさ。そしたらお前、キョドって変なこと口走るよ? そしたら火に油を注ぐようなもんだ。事態は更にひどいことになるだろうさ!



順始無窮,若殆以不信厚言,必死於暴人之前矣!


 いったん転がり出したら、もう止めようがない! お前は結局何一つ衛公に信じられることないまま殺されっちまう!



「人間世」は引き続き処世の話が続くのだそう。いま始まってるエピソードは結構な長編で、正直ここまででは何にもコメントのしようがない。あえて言えば「え、顔回って他国の窮状を救うようなキャラじゃないですよね?」くらいでしょうかね。荘周さん、なんでこうもあえて解釈違いぶち決めまくってこられるのかしらね?

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る