第10話 斉物論 6
今且有言於此,不知其與是類乎?其與是不類乎?類與不類,相與為類,則與彼无以異矣。雖然,請嘗言之。
ここで論を挙げたと言うことは、それもまた是非の中にさらされることになる。しかし既に「人間の認識の限界」という前提も存在しているから、それを踏まえてこれまでの論を深めてみたい。
有始也者,有未始有始也者,有未始有夫未始有始也者。
物事には必ず「始まる瞬間」がある。そうすると「始めはない」という判断も生まれるし、更にそこから「始めがない、と言うこともない」とも否定される。
有有也者,有无也者,有未始有无也者,
有未始有夫未始有无也者。
何かが存在するか否かについても、「存在する」の先に「存在することはない」、「存在することはない、ことはない」とも論が進もう。ついでに言えば「存在することはない、ことはない、こともない」とも。
俄而有无矣,而未知有无之果孰有孰无也。
この否定の連鎖構造は、その気になればどこまでも続く。ならば「絶対的に正しい判断」などと言うのは、成立のしようがないのではないか。
今我則已有謂矣,而未知吾所謂之其果有謂乎,其果无謂乎?
とは言え、これもまた自分自身の判断でしかない。肯定できるのか、否定できるのか。正直言ってわからない。
原文だけ見たら死ねるやつですよこれ……要はいったん「正しい」「正しくない」とかを言い出したら、ぶっちゃけ切りがないよね? ていうかどうしてそれをあなたが判断しきれるの? と言う「議論の前提」をちゃぶ台返ししてきてる感じ。すごい、読んでて酔っ払いそう。老子もそうだけど、こういうのに頭ウニにしてるとストレスがヤバいし、「ひとまず読み解けた、かも?」の境地に至ると楽しい。とは言えこの辺ってまだまだ荘子の序盤なんですよね……斉物論もまだ続くし。あんまり先走って進まない方が良さそうだ。この辺までをちょっと繰り返して、ぐるぐるさせてみよう。
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