第5話 オリエンテーリング

オリエンテーリング当日。


「ユウおはよう!待ちきれなくてユウの家まで迎えに来ちゃった」

「おはよう。じゃあ行くか」

「待って!ちゃんとしおり持った?ハンカチは?ティッシュは?」

「お前は母親かよ…」

「母親じゃないもん!ユウの事が大好きな普通の女の子だよ?」

「そう直接的な言い方で言われると照れる…」

「ユウって一見ぶっきらぼうだけど可愛いよね」

「この話はやめやめ、持つもの持ったしとりあえず行くぞ!」

「楽しみだね!二人きりがよかったけど…仕方ないか。」

「お前はもう少し友達作る努力しろよ…サトルと咲夜は良いやつだろ?」

「う〜ん、そうなんだけどハイキングデートって素敵じゃない?」

「デートじゃなくてオリエンテーリングな?」

「空気読めないなあ…」

「それに…また二人で来ればいいだろ。」


なだめるように言うと、突然目をキラキラ輝かせた真昼に抱きつかれた。


「さりげなくデートに誘ってくれるユウ好き!約束だよ?」

「真昼離れろ!お前の胸当たってるから!」

「ユウやらし!意識してるんだ〜!」

「仕方ないだろ!」

「冗談だよ、それに…だよ?ユウだけは特別」

「と、とにかく行くぞ!」

「アハハ!ユウ顔真っ赤〜!」

「うるさい!」


こいつ…自分のスタイルの良さと可愛さもう少し自覚しろよ…


−−−−−−


学校グラウンド。


集合時間5分前に着くと、先生が浮かれている生徒達に必死にメガホンで呼びかけをしていた。

「皆さん前もって作ったグループになってくださいね、ちゃんとしおりも持ってますか?じゃあグループ別にバスに乗ってください」


「席順どうしよっか?二人席だし俺とサトル、真昼と咲夜でいいか?」

「え〜ユウと一緒がいいな…」

「それ拒否られてるみたいでアタシが地味に傷つくからやめて…」

「あっごめんなさい…そういうつもりじゃなくて…咲夜の隣も楽しそうなんだけど、ユウがやっぱり近くにいて欲しいというか…」

「冗談よ。わかってるわよ貴方が優しか見えてないバカな事くらい」

「ユウしか見えてないとか照れる…」


褒められてないぞ…


「とにかく、俺はサトルと座るわ。どうせお前らも後ろの席だし話せるからいいでしょ。」

「おーっす!みんな集まってるな!今日はよろしくな!」

「よろしく」

「相変わらず元気だね」

「元気さだけが取り柄なもんでね!」

「確かに。」

「そうね」

「否定してくれよw」


くだらない雑談を交わしながらバスに乗り込み、オリエンテーリングはスタートした。


−−−−−−


出発して20分が経過したバス車内。


「…なんかサトル大人しくない?」

「優…俺はもう駄目だ…」

「は?どうした?」

「吐く」

「おいおいおいちょっと待て!先生!サトルが吐きそうです!」

「備え付けのエチケット袋が目の前の座席にあるでしょ?それ使いなさい」


先生がそう言うと、サトルはエチケット袋をすぐ取り出してリバースした。


俺はそのリバース音を真横で聞いてかなりテンションが下がっていた…


−−−−−−


「ふう〜!やっと着いたな!吐いてスッキリしたし最高の気分だわw」

「俺は最悪の気分だよ…」

「いやスマンスマンw俺今日の朝に昨日の帰りにセールしてた唐揚げクン15個を食べてきたんだけど、それがちょっとキツかったかな?」


アホなのかな?


−−−−−−


「じゃあ今から今日の流れを説明します。この山をグループで一番上まで登って、着いたら一旦集合写真を撮ります。その後は2時間自由行動で、その間に昼食を済ませてください。2時間後に集合して点呼を取ります、そして下山してバスで帰ります。質問ありますか?」


先生の問いかけに誰も何も言わないので、また先生が話し始めた。


「…では質問は無さそうなので、順次登ってもらいます。まず佐藤君の班から出発してください」

「わかりました。」


−−−−−−


登山途中。


「暑い!疲れた!死ぬ!もうむり!」

「サトルへばるの早すぎるだろ…この山小さいのにまだ半分だぞ…」

「う〜ん、でもアタシもちょっと疲れたかな?」

「わかった、じゃあ休憩しよう」

「俺と咲夜ちゃんの扱いの差が酷くない!?」

「俺は紳士だからな」

「優しいユウは素敵だけど、その優しさが私以外の女の子に向けられているのはなんか複雑だな…でもそこがユウの良さだし…ぶつぶつ…」

「お前はお前で何を言ってるんだ…とりあえず真昼も休憩しよう。あそこにベンチと自販機あるし」


−−−−−−


「なんか喉乾いたな…水筒のお茶ももう無くなりそうだし一応念の為にお茶買ってくるわ。お前らなんか飲むか?」

「アタシは大丈夫、ありがとう」

「私もまだお茶あるから大丈夫だよ」

「俺コーラ!ゼロじゃないやつな!」

「登山途中にコーラ飲む馬鹿がいるかよ…だから行きのバスで吐くんだろ…」

「それはそれ!これはこれ!細かい事は気にすんなって!」

「細かくないぞ…。とりあえずウーロン茶2つ買ってくるわ」

「サンキュー!じゃあこれ二人分」

「え?いいのか?」

「買って来てくれるんだからいいのいいの、なんだかんだ俺のこと心配してくれてる優が俺は良いやつだと思うしお礼だよ」

「そっか、ならありがたく貰っとく。」


−−−−−−


「くぅ〜!冷えてるお茶最高!」

「確かに自販機の有り難みは感じるな…水筒のお茶は氷少なくて温かったし」

「…さて、水分補給もしたしそろそろ行く?」

「そうしよっか。…ねえ、そういえば優と向井君ってどうやって知り合ったの?」

「ああ、サトルは体育の時のドッジボールでいきなり絡んできてさ、ビビったよ」

「あの時のお前挙動不審だったもんなw」


ほっといてくれ…


−−−−−−


山頂。


「はあ…はあ…やっと着いた…疲れた…俺もう無理…喉カラカラだしちょっとお茶買ってくる…優達はこの辺で待っててくれ…はあ…はあ…」

「確かにアタシもちょっとキツいかも…ちょっと座って足伸ばしたい…」


そう言うと咲夜はシートをひいて地面に座って、脚を広げてくつろぎだした。

それを見てみんなシートをひいて休憩する事にした。

咲夜の正面にいる俺からはちょっとパンツ見える。黒か…大人しい性格なのに結構エロいの履いてるのな…痛ってえ!!!

「ユウ?今どこ見てたのかな?」にっこり

「ごめんなさい」

「もう…そんなに見たいなら私に言ってくれたら…」

「え?もしかしてアタシのを覗いてた?優…」

「誤解だ!何も見えてない!本当だ!」

「今日の青のパンツ子供っぽいから恥ずかしいのに…」

「え?黒のエロいやつじゃなかった?……はっ」

「やっぱり見てたんだ!変態!」

「今のは誘導尋問だ!ズルいぞ!」

「優が変態なのは置いといて、そもそもアタシのなんて見ても仕方ないでしょ?」

「いやそんなこと無いぞ。咲夜はちょっとツリ目で一見キツめだけどかなりのクール系美人だし見たいやつはたくさんいると思う。」


そう言った後に咲夜の顔を見ると首筋まで真っ赤にして震えていた。


「アタシの事ナンパしてどうすんのよ…しかもパンツ見たいだなんて変態…」

「いやいやちょっとそれは誤解だ!俺は咲夜が美人って事を伝えたいのであってですね…」

「ユウくん?オリエンテーリング終わったあとにがあるから時間空けといてね?」

「ヒィ!ごめんなさい!」

「自業自得ね…」

「俺ふっかーつ!…ってなんかあった?なんで優は土下座してるん?」

「おしおき」

「この二人怒らせるって何したん?」

「言えない…」


−−−−−−


集合写真撮影を終えて昼食。


「はい!今日のお弁当!」

「ありがとう真昼。…おっ今日はまた豪華だな」

「フフッ…ちょっと頑張ったよ?」


多分手作りと思われるハンバーグ、卵焼き、アスパラベーコン、ポテトサラダが入っていた。


「いいねえ…愛妻弁当」

「これは俺のだからやらんぞ。」

「盗らねえよ。てか盗ったら真昼ちゃんに○される」

「いただきま~す!うまっ!ハンバーグ冷えてるのにこんな美味しいの初めてだわ!ポテトサラダも大好きだから嬉しい」

「よかった!ゆっくり食べてね?」


ん?咲夜は何をモジモジしてるんだ?


「ねえ…優?良かったらアタシのも少し食べてみてくれない?真昼と向井くんもどうぞ」

「いいのか?じゃあ肉じゃが貰おうかな。…美味しい!味がよく染み込んでる。」

「本当?嬉しいな」 

「美味しいよ?私はまだ肉じゃが作れないから羨ましい…」

「いやこれマジで美味いわ!向井亭で料理しない?咲夜ちゃんなら大歓迎だぜ?」

「何言ってんのよもう…」


ベタ褒めされて頬を染めた咲夜は照れ隠しなのか急いでご飯を食べ始めた。


−−−−−−


昼食後。


「いや〜食った食った!俺もう腹一杯だわ!咲夜ちゃんの弁当最高すぎた」

「ならまた作ろうか?向井くんさえ良ければ…だけど。迷惑?」

「そんな訳無いじゃん!最高すぎるよぜひ宜しく!とりあえず今日のお礼したいしあそこのお土産屋行こうぜ!母ちゃんから2000円もらったからなんか買えるっしょ!」

「あっちょっと!」


行ってしまった…


「向井くんと咲夜行っちゃったね…」

「まあ咲夜も嬉しそうだったしいいんじゃないか?」

「そうだね。…ねえ、ユウも私とお土産見に行かない?」

「いいけど…俺今お金持ってきて無いんだよな。でもお礼はしたいし、ゴールデンウィーク一緒にイーオンに買い物に行かないか?もちろん二人で。」

「ユウ…嬉しい♪じゃあゴールデンウィーク楽しみにしてるね?」

「ああ。とりあえずウインドウショッピングになっちゃうけどお土産見に行くか。」

「うん!」


−−−−−−


集合時間。


「じゃあ男子から女子の順で点呼取るぞ。青山!伊藤!−−和田!よし全員いるな。下山する。」


「楽しかったね、オリエンテーリング」

「そうだね、ユウとデートの約束もしたし私は満足かな」

「アタシはサトルにキーホルダー買ってもらった!どう?」

「可愛い!私もその手のキーホルダー好きなんだ〜!」

「でしょ?アタシも好き」


横の女子達の会話を聞いてて一つ疑問があった。


「いつの間にお前は咲夜に下の名前呼んでもらう仲になったんだ?」

「あーそれはな、咲夜ちゃんがストラップ買ってあげるって言っても悪いからいいよって言うから、じゃあ代わりに名前読んでって頼んだんだ」

「なるほどな。」


そんな雑談をしてるうちにいつの間にか下山していた。


「じゃあバスに乗りますが、その前に点呼取ります。−−和田!よし、じゃあバス乗ってください」

「はーい」


帰りのバスは流石にみんな疲れたのかぐっすり寝ていた。


−−−−−−


帰路。


「じゃあユウまたね。」

「ああ、お疲れ。」


ゴールデンウィークのデートプランどうするか考えないとな…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る