愛をしてるんだ。

@kusahayashi

第1話 愛をしてるんだ。

愛してるんだ。


どう思っていても良い。だから意思は関係ない。

君の目に写るのは、ショーウィンドウの中の可愛い可愛い可愛いとても可愛い人形。

それは痛いほど分かっているんだ。


でも嬉しいんだよ。君は、その人形に恋をしたことでやっと恋と言うものを知ったんだ。恋い焦がれるという衝動を知ったんだ。


ということはね。恋をしている僕と同じなんだ。僕の衝動を理解できるということだから!


わからない?そうだね。別に同意を求めているわけではないんだよ。


でもその衝動を知る前と知った後では意味が違うんだ。僕は、ずっと君を見てきたからね。


君は、覚えているよね??僕が恋に落ちた瞬間を!出会ったとき雷に落ちるような衝撃を受けた僕を!とても可憐な少女だったからびっくりしたんだ。これは運命だ!そう思ったよ。周りはそう見てなかったようだが僕には世界一可愛い子に見えた。でも僕が手を差し伸べようとすると色んな角度から邪魔が入った。


あそこは、母子家庭だから


犯罪者の子供よ


汚いやつだ


それでも手を差し伸べたがその結果は君が一番知っているだろう?それに耐えきれずに転校してしまった。

追いかけたかったが当時子供の僕にはなにも出来なかった。


でも、僕は諦めなかった。必死に勉強した。ない頭で考えた結論は、大人になり、金を稼ぐだったからだ。


大人になる。金がある。こうなると僕の予想以上にいろんな事が出来ることを知ったよ。

あれほど欲しがっていた居場所や今の状況全てを手にいれることが出来た。それも結構簡単にだ。


成長した女の子は、あの時以上に可愛くなっていたよ。母親とは離れて暮らしているなんて!!!女一人で不用心にもマンション一階の道沿いに住んでいるなんて!!

とてもとても不用心だ。

僕は心配だよ。


そうだね。でも…それだからこそ

君は今ここにいるんだ。

本当に危なかった。


あのまま家に居れば君は、殺されてしまう。

だから少しの間待っていてね。

それが終われば解放するから少しだけ、少しだけ自由を縛らせてね。

これは、僕が解決しなければならないんだ。

それじゃあ


ガタン

と大きな音がして扉がしまった。


彼の独白を聞いて

私は、大きな溜め息をついた。


私の名前は、石津北 友紀 覚えにくい名字のせいで大体の友達には北と呼ばれている。

そして私を部屋に閉じ込めた男の名は、南川 薺、こいつは名前が覚えにくいと言う理由で南と呼ばれている、と言ってもこいつの場合は、友達と呼べる人は少ないが私は、南を友達だと思っていた。

いや、多分南のことだから自分の理論で助けたと思っているのだろう。

彼は、最善を自己完結するきらいがある。しかして頭が良く奇抜な行動も全てが善に片寄っているので長い付き合いをやってこれたのだ。


確かに彼が言っていた言葉を推理するとなんとなく思い付く節がある。


がこれはいけない。犯罪だ。後ろ手に縛って部屋に監禁とは立派な犯罪者だ。


さて、どうするか、縄はきつく外れる気配もない、頑張れば立ち上がることは出来るがだからといって非力な私に外から鍵がかかったドアが開けれるはずはない。

この部屋は、窓もない。

いっそのこと大声で暴れてみようかと考えたが一軒家の片隅でギャーギャー言った程度で通報するようなことになるだろうか?いや、ないだろう。体力の無駄だ。それよりも帰ってきた南に、ゴメンねとか言いながら口まで塞がれそうだ。


やめだ。


私はごろんと転がった。


南が解放するといったのだから余計な事をしなければいつか無事解放されるのだろう。さっきも言ったが南は、思考回路こそ倫理観から外れたところにあるが思考は善に振り切れており、自分の友に危害を加えることは絶対にしない。

そんな彼が私の監禁と一見して私を傷つける選択をしたからには、しなければならないこれ以上の理由があるはずなのだ。

そして私に危険があるから監禁したと南は言った。


多分それがすべてだ。


監禁して閉じ込めなければ私が傷つく可能性がある。


その相手をどうにかする為に南は、行動している。


ならば私に危険性はないのだ。がその相手には??


それが仮に事実だとして。南は、もしかしなくてもそいつと心中するつもりなのでは?

その場合、私どうなるんだ?

ここで餓死か?


転がった姿勢からなんとか座り直す。やばいことになっていたぞ。


ちょっと状況を整理しよう。南は、まず私の最近の近況を話していた。


確かに私は、最近対物性愛者であることを自覚した。つまり人以外に愛を囁くことを肯定したのだ。


それを南が知覚したのは、自覚する瞬間に確かに彼がたからだ

いたというか興奮した様子で話しかけてきたのだ。

気持ち悪いやつだ。


そして突然危ないと叫び、私の手を取って走り出したのだ。

愛しの人(人形)との出会いを邪魔されその後感情的に激怒して別れた記憶がある。


その時に私が狙われる何かあったのかもだろう。

私の視線は、愛しの彼(人形)に釘付けであったし、突然現れてペラペラなにかを話し出した南が言っていた言葉は、何一つ覚えていない。

それどころではなかった。私は愛しの彼女(人形)と運命的な出会いをしたのだから


確かに南の言っていた通りこれが恋の衝動なのだろう。


南は、だから動けると言った。

そして知ったから殺されると


「いや。どういうことだ?」


確かに現在進行形でストーカー被害を受けているのでその相手が凶行を取るかもしれないが南は知らないはずだし

、どこかで知っていたとして恋したから殺されるなどどうしても繋がらない。

何か他に事実があるようだ。


ブーブーブー


突然どこからかバイブ音が聞こえた。

以外と近くだ。


ブーブーブー


まだ鳴っている。

……私のズボンのポケットの中からだ。


もしや南は、私が思っているよりも馬鹿なのかも知れない。



何度目かの長いコールを鳴らしているが北は、出ない。

約束をしたのは、15時半。今は、もう16時を回っている。


北は、連絡なく遅れてくるようなやつではない。どちらかと言えば俺が遅れてくるほうだ。

本日もピッタリに着くつもりが5分ほど遅れていた。その段階で北が居ないから俺は、待ち合わせ時間を間違えたんじゃないかとスマホを確認したぐらいだ。


なんだよー帰るぞーそう思った時

ブツッ

大きな音が聞こえてやっと繋がった。


「もしもし、北?どうした?風邪か???大丈夫か?」


「あーその声は、西」


なんだか遠くから声が聞こえる。


「声?名前がディスプレイに表示されてるだろ??」


「ちょっと非常事態で」


「はい?なんだって???!」


あまりにも小さな声に普段も大きな声がもっと大きくなる。

俺の名前は西恭平、お分かりの通り西と呼ばれている。なんの捻りもないが俺のせいで東がつかないが東と呼ばれてるヤツがいるのでそれよりはマシかなあと思っている。東西南北同盟の一人だ。いや嘘だ。今思い付いた。


今電話で話している北とはもう中学からの友達だ。奇人変人超天才がいると聞いて南を見に行ったら、そんな南を介護していたのが北だった。

中学の南は、今より幾分も奇人は成りを潜めていたがクラスで浮いて一人になるくらいには変人で北が何故付き合っていたか不明だった、が付き合ってみれば行動全てが秩序的な善性あふれる行動だったことに気付いた。説明不足に言葉不足ついでに人見知りのせいで変な人に見られてるが。あっいやまあ、普通に変な奴ではあるが。と話が南になってしまったが北の説明に戻ろう。北はそんな変人と付き合えるだけの忍耐力と持ち、そして冷徹な奴だ。一見してとても礼儀正しく、優しい奴に見えるのだがこいつは自分に利益があることを優先し、それと同時に感情よりも合理性を一番に考えて行動している。だからこそ行動が善性に帰依する南と仲が良いのだ。


「つまり、お前南に軟禁されてるのか」


「これは、軟禁なのか?」


「はい???聞こえねえ」


北にあらましを聞いて出た感想がこれだ。何度も何度も説明したかと思うが南は、行動が善に振り切る。軟禁されてようが犯罪おかしていようがそれ以上に善なる行動でやらないといけないことがあるのだ。それにおいて南を野に放置すると危険であり、携帯を残したというところを見ると一日ぐらいで解決する程度のことと言うことだろう。


「南のことだ。そのスマホ残したのは、故意だろ」


「そう…なの…か…」


「ん?おめえにしては耄碌してんな。その通り、南の仕業だぞ。」


「待て待て、突然縛られて軟禁されめるんだぞ。こっちは」


「あの南だぞ」


足は南の家に向かいながら電話を続ける。どこと説明はなかったが南の体力のなさは俺が一番知ってる。用意もあるとしたなら北がいるのは、絶対に南の家だ。


「うーん、力押しが過ぎないか」


「事実だ。と話は代わるがこうなると南が心配だな」


「南がなんでだ??」


「あいつがお前を軟禁してまで家においたってことはつまり北が外にいたら危険ってことだ。でその危険な事に代わりに突っ込んでいったて事になるだろ。」


「…」


「しかもスマホを置いていったってことは1日程度で解決する話と来てる。」


「…」


「北?どうした?黙りこんで」


「…やばいかもしれない」


「そうだな。」


状況を聞くだけでまだ深入りしてない西の声色は軽やかだがどんどん北の声が暗くなる。


「西、お前と話していて思い出したんだが私はストーカーされてる」


「え?」


「がそれは、問題じゃない。問題は、そのストーカーの相手を南が多分見たんだ。」


「見た」


「見たというよりストーカーを認識したて感じかな。私は、ストーカー相手を知らないし、ストーカーの事を誰にも言ったことはない。そこまでの被害もなくただ、手紙が職場に届く程度だったからだ。がその相手がもしも南の知り合いなら?そしてそれを南に相談していたら?そのストーカーしてる相手が私だと気づいたとしたのなら?」


「待て待て、最初から説明しろ。流石な俺もわからん」


北のあーとかうーとかいう声が聞こえる。

どうした?


「…まず、南の初恋の話になるが」


「なんでだよ!!」


あるところに可哀想な女の子かいました。彼女は、祖母と暮らし、その暮らしは決して裕福なものではありませんでした。人と違うことは、差別に変わります。時に年若いものたちには特に彼女は例に違わず、小学でいじめられていました。

そんな彼女は、別段綺麗でもなんでもなかった。汚いこともなかったがただただ背景を除けばそこら辺の子となにも変わらなかった。それでも皆と違うということは、いじめの起因になるのだろう。いじめがはじまって半年もすれば彼女は、いじめても良いというクラスの認識が出来ていた。


「が南は、違ったてことか、というかなんで南は、いじめられてないんだよ。」


「あいつの場合あまりにも変すぎてまず、人が集まらないからはじめから遠巻きに見られてる。」


「おっおう」


「それでも小学五年生までは何事もなかったんだ。その子も友達がいたし、ただの可哀想な子なだけだったんだ。が突然いじめは始まり、クラスにその波は広がっていた。私はこの事には、関わらなかったが南は、そんなことできなかった。」


「正義マンだもんな。あいつ」


「正確に言うとジャッジマンだけどな。裁いて後は、適切な人に任せるということをしている気でいる。」


「面倒な奴だなー本当に」


「ほんとだよ。でもそれは総じてあいつは正しい。」


「おめえも面倒だな。でそれがどうした?」


「彼女が私のストーカーでその上で私の恋人の主人だ。」


西は、頭に?が並んだ。過程がすっ飛ばされてるからだ。


「なるほどお前が好きになった人形売ってるお店の主人は女の人でその上でその人を見た瞬間に南は全てに気付いて説得出来ずにこの凶行に及んだと。うっせえ馬鹿!こじつけ過ぎる。」


「しかし、それ以外に辻褄があわない。」


「ああ、お前にはそうなんだろうな。今分かったよ。確かにお前は何かに殺されかけてる。」


目の前でドアが開いた。

西がいる。


「どうして?」


「鍵開いてた。南の居場所も分かったよ。女の子は関係ない。」


「なんで?」


西は、こちらを見下ろしたまま複雑な顔をしている。


「西、縄を外し」


「なあ、北。お前と会うのはいつぶりだ?」


「なんだよ。3ヶ月、いや半年か?大学の夏休みが終わったぶりだな。なんだよ。」


「お前は、半年前そんなに痩せてなかった。どちらかと言えば肥ってたほうだった。」


「ああ、ダイエット成功したんだ」


「近くで見ていた南は地獄だな。お前が急激に痩せていく姿を見るのは、どうした?なぜ食べない??なにか悩んでいるのか」


西の目の前にいた北の顔は浅黒く骨と皮だけと言われても納得出来るほどに痩せていた。

北は、誰かに殺されそうになったわけではない。自分に殺されそうなのだ。


本当に緊急性があり人が害をなしているならなんらかの理由付けをして知らない遠くに連れて行けば良い。北なら南が突然旅行に誘っても1日位なら着いていくだろう、が実際は、自宅に監禁している。

何故か?

彼が北が自分で自分を殺そうとしているからだ。


「食べてない訳ではないよ。金が必要でね。後少し、後少しなんだ。彼女が彼が…私を」


彼女…ああ、彼の愛した人形か


「うわーー!」


大きな声が聞こえた、南だ。

自宅に知らない人がいたら叫ぶだろうが何故大声を出して逃げる。

俺が殺人犯なら追いかけて殺すぞ。


「逃げるな、俺だ。」


「にっ西?!」


「詳しい説明は後でするからお前は東を呼べ、お前のそれは解決じゃない」


「でも…」


「でも、もかかしもねえよ!お前で解決出来ねえって誰かに相談しなかったのはお前の落ち度だ。早く電話しろ」


携帯を取り出したのを見て、北に視線を戻す。

痩せろーとかいいつつ腹の贅肉をさわった記憶はまだ半年前だ。別にこんなになれとは誰も言っていない。


「俺は、愛とか恋とかにここまで焦がれたことはねぇけどよ。体調を壊してまで相手に尽くしても手に入れた瞬間に緊張の線が切れて死んじまうぜ?」


「…早く会いたいし、彼女は人と違って居なくなってしまう(売られてしまう)かもしれないんだ。それをを私は許容出来ない。」


「…南に」


南の解決方法はいたって簡単だ。彼女を買ったんだろう


「……私の彼女(人形)は、500万近くする」


南、あいつまじ金持ちだな。


「…」


「南が解決したんだろうな…ははは」


南は、恋の衝動を知っているからこそこの状態を正しく理解できたと思ってるんだろう。しかも彼も追いかける恋だ。手にいれたい恋だ。


だがそれは解決じゃないし、北は、自分で手に入れたかったから南を頼らなかったのだ。


「北、聞こえてるかと思うが東を呼んだ。お前に必要なのは彼女じゃない。医療だ。」


歯科医希望の東には悪いが北を医療に繋げる相手としては最適だ。


その後項垂れるように東と話す北を見 る。とんだ週末になったと思う西は、手に持った携帯をくるりと回した。


END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愛をしてるんだ。 @kusahayashi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る