潜降54m my白いフィン

柿沢 桃様

鳥たちも喜び美しい声に街も色づくような春の季節となりました。とはいえ、朝夕はまだまだ冷え込みますが、風邪など召されてませんでしょうか。

ダイビングという同じ趣味をもたれる柿沢様といつもご一緒出来て、楽しみが増している今日この頃であります。

さて、この先、お互いいろいろな器材を持ち合わせることもありましょう。そこで来週の土曜日など、もしご都合がよろしければダイビング量販店アクアエコーにご一緒いたしませんか?そこで様々なダイビングイクイップメントなどを共に模索いたしましょう。お返事の程お待ちしております。    峰岸 歩  


****


(うわ~。何となくめんどくさいメール.... )

 

ダイビング仲間である峰岸さんのメールは、いつも肩がこるようなヘンテコ文章で面倒くささを感じてしまう。

要は『量販店に器材を見にいきませんか? 』てことでしょ?


ショップVisit の売り上げにも貢献したいけど、正直なとこ、いろいろな器材を自分の目で見てみたいとも思っている。

私は土曜日に渋谷駅のモヤイ像で峰岸さんと待ち合わせをした。


(15:00待ち合わせのはずなのに待たせるとは....峰岸め)


『ねえ、彼女、何してるの?』と何度声をかけられたことか?


その後26分と32秒遅刻して峰岸さんは姿を現した。

「いや、ごめん、桃ちゃん。ちょっと電車が渋滞して」

「じゃ、行きますよ」


峰岸さんはアクアエコーの会員になっていて、よくお店にいくと言っていた。

このビルの3階だよ。


店に入るとすぐに多くのフィンが並べられていた。

「峰岸さん、今日は取りあえず買わないんだけど大丈夫かな? 」

「大丈夫だよ。それに俺は買うものがあるからさ」


「フィンってどんなのがいいのかな? 」

「そうだな。良く言われるのがプラフィンとゴムフィンだよね」


「プラフィン?」

「プラフィンは、いつもレンタルして履いてるようなのだよ。ゴムフィンは、ほら、これみたいにガッツリゴム素材。最近は両方の特性をあわせもつハイブリッドもあるよ。」


「違いは? 何かあるの?」

「ゴムフィンはプラフィンよりもどっしりしてるから水中で足がフワフワすることがなく安定するよ。そのかわり少し脚力が必要かも」


「そっかぁ。私、ゴムフィンがいいな。なんかドライだと足が安定しない感じだし」


「うん。ちなみに俺が使っているのはこれと同じドライ用のフィンだよ」

「これ? うわ、凄く重たくない? これ」


「これは足にアンクルウエイトを付けなくてもフィン自体が重いから足が安定するんだ。ただデメリットは脚力が必要なことと、ボートダイブでフィンをうっかり落としてしまうと水底まで一直線に落ちていくこと。取扱いに注意しないとだめなんだよね」


(やっぱり峰岸さんはいろいろ予習してるなぁ。)


[お客様、何か履いてみますか? ]

「ああ、あのまだ初心者なんですが、何を選べばいいかわからなくて。あと今日はちょっと見に来ただけなんです。」


[ そうですか。フィンってきっと好みのフィンに出会うまで何度も買い替える方が多いと思いますよ。 ..これは個人的な考えですが、一番最初のフィンは自分が思う直感に頼って選ぶのもひとつの手だと思います ]


「そっかぁ.. じゃあ、ゴムフィンってどんなのがあるのですか? 」


・・・・・・

・・


結局、買ってしまった....

いや、何となくそうなる予感はしていたのだ..


でも、長くもなく短くもないこのTUSAの白いゴムフィンが何かしっくりくる感じだった。

ついでにかわいいマスクストラップカバーと曇り止めを買ってしまった..

3点で12,800円.... また散財してしまった(><)


ちなみに峰岸さんはダイコンを買っていた。

見間違いでなければ12の後0が4個ついていたような....


私が最初、『大根?』と勘違いするとダイブコンピュータだと説明してくれた。

その時『ふっ.... 』と軽く馬鹿にされた気がしたのは気のせいであろうか。


最後に、峰岸さんが使用しているのと同じレギュレターを見せてくれた。

「俺のは、このATOMICのチタンレギュレターだよ。ほら、持ってごらんよ」

「うわ、なにこれ!すごく軽い」


(な、なぜにドヤ顔するの??)


私はあの軽いチタンレギュレターが凄く欲しくなってしまった。

でもすごく高い!

これ、今はパスだけど、いつか買いたいな!

欲しいものリストに入れておこう。


帰り際、峰岸さんの知り合いの店員さんがやってきた。

[ あれ?今日は彼女ときたの? ]

「いや、まぁ、何といいましょうか」


(な、なぜ否定しない!)


「違います~。ただのお友達なんですよ」


****


『お客様、ダイビング場だと誰のフィンかわからなくなるから印をつけておくことをお勧めしますよ』

そんな店員さんの親切アドバイスに従って、部屋に帰ると白いフィンの裏に太郎丸の似顔絵を書いた。


これで私のオリジナルフィンの出来上がり。


早くこれで潜りたいなぁ♪

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