潜降46m バディシステムの強み
峰岸さんと私はショップVisitに2月の休日を利用してのアドバンスド・オープンウォータープログラムの開催をお願いした。
この日は西伊豆の
私はコンパスナビゲーションの練習をした成果を出してみたくてワクワクしていた。
1本目は魚の見分け方ダイビング。
魚の生息する環境、水深、その魚の尾びれの形や色、大きさなどをメモしていく。
それを後に図鑑で調べて検証するというダイビング。
エントリーすると冷たい水が顔にヒンヤリ、でも凄く澄んだ水。
何メートル先までも見渡せる。
大瀬崎とは違い、海全体が明るい水色のようだ。
光の帯が私の顔の上でゆらめいているのがわかる。
少し進むといつものマダイがクルクルと私たちを出迎えてくれた。
(やぁ、久しぶり♪)
色:黒っぽい銀、形:体高ある、大きさ:50cmくらい、尻尾:ゆるいV型、水深6m、場所:中層(*マダイのだいちゃん)
Visitの詩織さんはエントリーから伸びるガイドロープ先にあるケーソンに連れて行ってくれた。
[この辺を探すとおもしろいかも? ]
と示してくれた場所を私と峰岸さんで手分けして探す。
峰岸さんは身体から棘が何本もでて鰭が綺麗な魚を見つけた(*ミノカサゴの子供)
私は藻に絡まりながら逆さになってる生物を発見。
(わぁ! これ知ってる。タツノオトシゴだ! でも魚なのかな? )
色:赤、形:口がとがって尻尾がクルン。顔に棘がいっぱい。大きさ4㎝、水深12m、場所:藻の中(*ハナタツ)
私たちの気配に気が付くと顔をそむけ、やがてピロピロと小さな胸鰭を動かして逃げようとしていた。
私はコンクリートブロックと砂のちょっとした隙間にウチワのような尻尾を見つけた。それが見え隠れしている。
その魚はだいだい色にコバルトブルーのライン。口がとがってちょっとタツノオトシゴみたいな顔をしていた。(*ノコギリヨウジ)
詩織さんは砂地を案内してくれた。
砂地をゆらゆら、日差しもゆらゆら。
あちらから大きな白っぽい魚が悠々と近づいてくる。
顔には黄色っぽい模様。体には斑点がいっぱい。
すごく堂々として白い砂地が身体に反射しているようで綺麗だったな。(*コロダイ)
ゴロタ沿いを泳ぎながら明るい日差しに照らされる水面を見上げていると、突然それを遮るように魚の群れが私たちを包み込む。体に入る黒いスジ。黄色い胸鰭をもつ魚だ(*イサキ)
私は人差し指と親指を目の前にかざし、フォトグラフのようにその風景を切り取ってみた。
エキジットすると私たちは施設の奥にある風呂に入り、黄金崎の海を見ながらダイビングの余韻を楽しんだ。
2本目に入る前に詩織さんは海で行うコンパスナビゲーションの練習をしてくれた。
「あれ? 2人とももしかして練習した? すごく余裕じゃない? 」
「へへへ。実はそうなんです」
「じゃ、今から言うことも追加で覚えておいてね。まず、ダイビングは計画性が大切なレジャースポーツ。だから私がスレートに『90度方向に右回りで四角形』と書いたら、その場で方向転換する角度をあらかじめ水中ノートに書きこむこと。つまり90度に30フィン進んだら次は180度、そして270度、最後は0度に方向転換していく。この90、180、270、0の方向をあらかじめ水中ノートに書いておくことが大切。そうすれば方向転換の度に計算する必要がない。ただ、その数字の通りに進めばいい。行動はシンプルにしておくことが大切だよ。覚えておいてね」
私たちは水中に入ると設置したフロート下を出発点とした。
ナビゲーションは2人1組で1人は方角をナビし、もう1人は距離を測る役目(フィンキックを数える)で行われる。
まずは私からだ。
詩織さんがスレートに書いた角度は「0度右回りにスタート」
私はその場で『0、90、180、270』と記入する。
そしてOKサインを出すと、詩織さんがスタートの合図をした。
0度の方向にコンパスの針がずれないように真っすぐ進む。
心の中で1フィン・2フィン・3・4・・・20と数えていく。
ところが、進むにつれ水深が深くなり、身体が沈んでいく。慌ててBCDに空気を入れ浮力を確保。
そして再び進むと方向がズレているのに気が付く。
方向を修正し進もうとすると自分で数えていたフィンキックの数を忘れてしまった。
おそらく23フィンくらい進んだだろう....
そして方向転換時には、次に何度の方向へ進むかを忘れてしまった。さっきまで頭に覚えていたのに.... 水中ノートを取り出して確認する。その間に身体は浮力が足りずに砂地に着底する。中世浮力をとらなければと思いまたBCDに空気を入れる。
ひとつの作業をするはずが、そこに次から次へといろいろな作業が上積みされていってしまうのだ。
さらにスタート地点に近づけば、今度は浮力過多になりBCDから空気をぬかなければ、水面まで浮いて行ってしまう。
最後の方向転換270度。30フィン進めばスタート地点に戻るはずだった。
しかしそこにスタート地点はなかった。
元のスタート地点はかなり遠い場所にあった..
次は峰岸さんの番だ
峰岸さんはナビゲーションだけに集中しキック数は私に任せていた。
結果スタート地点まで3mの誤差で到着した。
一発OKだ。
詩織さんは、峰岸さんと私に合格のOKサインをくれたけど、もう一回チャレンジしたかった。
水中ノートにそれを書くと詩織さんは承諾してくれた。
気が付いた。
そうだった。
できるだけシンプルにすべきだったのだ。
距離は峰岸さんに任せて、私はナビゲーションだけをすればよかったんだ。
それがバディシステムの強みなんだ。
今回はゆっくりのペースで峰岸さんとコンタクトをとれる位置を保つ。
方向転換の距離にくると峰岸さんが私の足をたたいて知らせてくれる。
その安心感だけで中世浮力を維持する作業も自然とこなすことができた
****
「凄い、凄い、桃ちゃん。私がはじめてコンパスナビを受講した時はもっと酷かったよ。たぶん作業分担の意味がわかったんだね? 」
「何もかも1人でやろうとすると訳わからなくなっちゃいますね。へへ」
「あ、あの詩織さん僕も凄いですよね? 」
(あっ、自分で言っちゃってる....)
「私、峰岸さんのナビを見て気が付きました。今回、峰岸さんのおかげなんです。ありがとうございました」
「ははは。まぁね。困ったときは頼ってくれていいよ」
来週はボートダイビングとディープダイビングだ。
この2つをクリアすれば、きっとまた何かできることが増えそうだ。
私は自分のスキルがひとつ上がったような気がして気持ちが高揚した。
「峰岸さん、またよろしくお願いします」
「ああ」
峰岸さんは『任せろ』っていう顔をしてみせた。
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