潜降43m 初ドライスーツ
ショップVisit の詩織さんからドライスーツが仕上がったと連絡が来た。
それと同時にドライスーツのダイビングを習得するためにドライスーツ講習ダイビングを勧められた。
このドライスーツ講習ダイビングの受講記録は後のアドバンスド・オープンウォーターを取るための条件(※01)にカウントされるらしいのだ。
もちろん、私は受けることにした。
****
ここは伊豆半島の真ん中に位置する西伊豆・黄金崎公園。
岬を囲うは、夕日に照らされて黄金に輝く岩肌。
そこからここは
黄金崎ダイビング場は関係車両以外立ち入りが禁止されている。
公共駐車場から現地ダイビングセンターの車に乗り換えて施設へ向かう。
広いビーチに2つのエントリー口が見え、冬の透明度の良さに海底の石まで見えている。
とても穏やかな海だ。
降りていく車中、私の横には、なぜかいつもの峰岸さんがいるのだ。
峰岸さんとは同時期にOWを取得したのだから、まぁ不思議ではないか..
「桃ちゃん、桃ちゃん、ここの上の駐車場にある展望台からは馬ロックというのが見えるんだよ」
(なぜ『桃ちゃん』呼びをするのだ、峰岸氏!)
「峰岸さんは行って見たことあるの? 」
「いや、ないけど」
(ないのかい! )
「ダイビング終わったら見に行こうか? 」
と詩織さんが提案した。
施設に着くと更衣室でスウェット&トレーナーに着替えた。
「桃ちゃん、トレーナーはズボンの中に入れてスウェットの上に靴下をかぶせてね」
ドライスーツを着たときに衣服がずれないようにするためらしい。
見た目はかなりダサい。
しかし冬のダイビング施設内は、こんなダサい格好していてもみんな普通な顔をしている。
そして、いよいよmyドライスーツに足を通す時が来た。
とってもワクワク♪
詩織さんがまずは正しい着方を見せてくれた。
まずは、なるべく股下に近いところまで折り返し、足を入れる。
足をしっかりいれ、次にお尻まで着る。
内側についているサスペンダーを肩にかける。
そしていよいよ腕を通すが、袖先のネオプレンゴムの滑りを良くする為、白い粉をふりかける。
見た目はベビーパウダーみたいな感じ。
両手を通して、そして一番の難関である首だ。
峰岸さんはスポっとすぐに首を通したが、私は髪の毛がゴムに引っかかりなかなか通らない。
「桃ちゃん、これを頭に被ってごらん」
と詩織さんが出したのは大きめのコンビニ袋だった。
コンビニ袋を頭に被りながら首を通すとスルっと着ることが出来た。
(なるほど先人のアイデアは役に立つ!)
そして首のネオプレンゴムを内側に織り込み、シールドを完成させる。
「では、お互い助け合って背中のファスナーを閉めてくださいね」
装着完了!
詩織さんからドライスーツの吸気、排気のやり方を教わり、海の中で行う課題、エントリー、エキシットの方法などの説明を受けた。
いつもより重めのウエイトを身に着け、スキューバシステムを背負い、いざ海へ。
穏やかな海に足を入れるとキュッとドライスーツが足を圧迫するのがわかった。
だが冷たくない。
新鮮な感覚だ。
まずは浮いて水面移動。
水深4mくらいの場所で呼吸を整え潜降を開始!
BCDの空気を抜き、肩の排気バルブから空気を抜いていく。
徐々に透明な海の中に沈むと、海水は私の身体を圧迫してきた。
軽い真空パックのような状態だ。
詩織さんが胸にある吸気ボタンを指さし、空気を入れる。
私もまねしてみた。
ドライスーツの中に空気が入るとスーッと身体が楽になる。
OKサインをお互い確認すると水深10mくらいの砂地へ移動。
そこで私たちは中性浮力の特訓をした。
私たちのホバリングが合格レベルに達すると、詩織さんが水中ノートに『お散歩タイム』と書きこむ。
水中ツアー開始だ!
海の中では、絶えず私たちの頭上を周っている大きなマダイがいた。
マダイなのに人懐っこくて、凄く可愛い。
ゴロタ(岩場)と砂地の間をまっすぐ行くと途中でクロホシイシモチの群れがいた。
青く透明な海にとても綺麗だ。
突然、詩織さんが指示棒を向けた。
そして矢をいるようなジェスチャーをしてみせる。
30㎝くらいのユニークな形をした魚が近づいてきた。
その身体の真ん中には弓の的のような模様がついている。
詩織さんの水中ノートには「冬将軍!マトウダイ」と書かれていた。
透明度が高い綺麗な海は、白い砂地に太陽のカーテンをなびかせる。
冷たい水の中でのその光のゆらぎが心地良かった。
私たちのエアー量を表す残圧計が80を示すと詩織さんはエキジット口まで延びるガイドロープに向かった。
水深が浅くなるに連れ、足が浮く感じになってくる。
ドライスーツの肩にある排気バルブを押しても空気が出ない。
だけど足がどんどん浮いてしまう。
その様子に気づくと詩織さんが私の身体を寝返り打つように仰向けにする。
するとどうだろう、足の空気が上半身に集まり、肩からしっかりと空気が抜けていくのだ。
となりでは峰岸さんも浮きぎみの足に悪戦苦闘!
頭を中心にくるくると円を描いて回転していた。
まるでさっき見たカワハギが砂を吹いている姿のようだ。
水深5mでの安全停止中、詩織さんが岩の穴から顔を出す魚を教えてくれた。
水中ノートには『コケギンポ』と書いてあった。
頭がモヒカンのようで目がグリグリのとっても愛嬌のある顔してる。
そのままエキジット口へ進むと詩織さんから浮上の合図。
ゆっくり水面へ浮上して、私たちのダイビングは終了する。
・・・・・・
・・
全てのダイビングが終わり、ダイビング施設から駐車場に送ってもらった。
そして、みんなでVisitの車に荷物を積みこむ。
詩織さんは、ひと仕事終えた合図に2回手をはたくと..
「さてと、じゃあ、これから展望台へ向かいますか!」
車は坂を上り、展望台へ向かう。
「うわ~! こりゃ、確かに馬ロックだね」と峰岸さんがつぶやいた。
馬ロックは本当に馬みたいな形をしていてユニークだった。
でも私は、それよりも海の向こうの夕日に魅了されていた。
夕日から海に射すオレンジ色の光はやわらかくも力強かった。
その海に照り返す夕日の河を一艘の船が横切っていく。
◇◇◇◇
【桃のダイビング用語解説!】
※01
アドバンスド・オープンウォーター
ナビゲーションダイビング(必須)とディープダイビング(必須)を受講し、さらに魚の見分け方ダイビングやマルチレベルダイビング等など、数ある講習ダイビングから3つを選択し受講する。
合計5本の講習ダイビングを受けたことが証明されるとアドバンスド・オープンウォーターのCカードを取得することができる。
このアドバンスを取得すればOW水深18mまでしか潜れなかった水深をさらに水深40mまでにすることができる。
リゾート先でダイビングを計画しているなら必須の資格だね。
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