第2話 実践
なんだ、この、数値は、
レベルが異常に少なすぎるぞ。
5……!? みんな大体、40〜50ぐらいのレベルと喋っていたはずだ。
それに、「災厄」……? 何だ、何なんだこれは?
使ったらどうなるんだ。そもそも災厄って何だ?
クラスだと浮いていたからスキルのことは誰にも話せない。
話せたとしても馬鹿にされるだけだろう。
そもそも何でみんな炎とか治癒とか色々ファンタジーというか具体的なスキルなのに、俺だけなんで抽象的なんだ。
俺だけ……世界からも、舐められた気分だ。
疎外感を感じながら、俺は教室へ戻った。
———
授業も終わり、俺は帰路へ着いていた。
夕日を見ながら帰る。毎日何度も繰り返したことだ。
そしてその帰路の中、俺はふと考えが浮かんだ。
ここは河川敷で人も普段から来ない。
それに近隣の敷地も広い災害避難用の空き地だ。
つまり……自分のスキルである災厄とやらを試せるベストタイミングではないか……と。
「よし……やるか。」
「……“災厄”」
特別何も無いところに移動し、意を決して俺は人生で初めてスキルを発動した。
体の周りがボウッと青く光る。透き通るような青が夕焼けと交差して紫にも見えた。
何かありそうなので92秒間頑張って発動させたが……。
「……何もない。」
何なんだこの謎の能力は。
ただ光るだけ? イルミネーション人間?
嘘でしょ?
「俺のスキルしょぼすぎだろ……!?」
そう呟いた瞬間、ドサッと何かが落ちたような音がした。
「何だ!?」
後ろを振り向くと……カラスだった。
さっき落ちたのか……?
たまたまか……?
近づいてみると、普通に死んでいた。
強いて言えば棒で突くと羽が簡単に抜けるぐらいだ。
「……わからない。」
自分で使ってみてもわからない能力って……。
つくづく情けなくなった。
「帰ろう。」
気分が沈む。とぼとぼと帰路に戻り、俺は家に帰った。
俺以外誰もいない家へ。
“今月の晩御飯代です。良いスキルもらえると良いね”
達筆なメモと金銭がテーブルの上にポツンと置かれていた。
筆跡からしておそらく母だろう。
虚無的なルーティンをこなす毎日を、スキルは打破してくれなかった。
今月もまたこの置かれた金で自炊して、風呂に入り寝るだけだ。
『スキルを使ったら人生二倍は楽しくなるぞ!?』
何となく父の言葉が頭をよぎった。
「嘘つけ。」
誰にも聞こえない文句が、虚しく反響する。
「……テレビでも見るか」
何気なく俺はテレビをつけた。沈黙の空間に耐えられなかったからだ。
俺はいつもニュースを見ている。毎日違う内容だし、何となく他の人間の人生を垣間見てる感じが好きだった。
どうしようもなく自分の人生がつまらないのもあるけれど。
ニュースをBGM代わりに俺は自炊を始める。
適当に聞き流しながら料理するので内容は殆ど入ってこない。
『今日、槙島市の路上で高い放射線量が検出され———』
料理が出来た頃にはテレビは消している。
つまらないバラエティが流れる時間帯だからだ。
シンプルなチャーハンを食べ終え、俺は風呂に入り、床に入った。
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