8月23日(火)おげんさんに学ぶ地獄のススメ
先週『おげんさんといっしょ』という番組がやっていた。
私はこの番組が大好きで、星野源がMCでNHKにて不定期で放送されているのだが、第一回放送から欠かさず観ているお気に入りの番組である。
基本的に生放送で、段取りに追われながらも演者のテンションはナチュラルにダラダラと続く。
それがまったく不愉快でなく、むしろ居心地がいい。画面の中に自分の部屋がもう一つあってなにか祭りをやっているといった雰囲気なのだ。
星野源という人は色んな場所をそうしてしまう。
一番たまげたのは東京ドームさえもそんな感じにしてしまった。名だたる演奏家も、一ファンも、カモナ・マイ・ホームってな具合である。
演者としてこれはたまらなく憧れる。こんな風になれたらなといつもいつも心の何処かで星野源を置いて演じている気がする。
そして、作り手としてはこの番組みたいなものを作りたいと思わされる。
観た後には、なにか作りたい!とか、なんか元気が出た!とか、明日も頑張ろう!と思わせてくれる、動く力を残してくれるような作品を作りたい。
また、情けない話、私ってこういうものを作りたかったんだったと毎回思い出させてくれる。
宮沢賢治は「こういうものにわたしはなりたい」と詩に書いた。
本当にそんな温度感。遠くの星を見るようにいつも私はこの番組を観ている。
そんな中、今回のラスト大締めの曲に『地獄でなぜ悪い』を歌った。
星野源が大病で倒れ病室で作った曲ということは知っていたが、コロナ禍第七波で寝込んでいる人が多い中、これを選曲し、曲の始まりイントロで「地獄にいるみなさーん!お元気ですかー!」と元気良く宣った。
泣くかと思った。
私は運のいいことに逃げ切れているが、絶対にいるのだ。
ベッドの中で、高熱に浮かされながら、苦しい咳に耐えながら、後遺症に苦しみながらコレを観ている人が。
毎日自分も感染するかもという恐怖と戦いながら、苦しんでる患者たちと向き合っている人たちが。
見捨てず拾って声をかけた。そうなのよ、トップスターだからよ。
それに引き換え日本のトップはそんな人達の気持ちも察せず「夏休みでーす♪」とゴルフ姿を広報だと放送しまくり、ペロッとコロナに罹ってしまった。
……びっくりした。
人の心があるなら絶対にそんなこと出来ないはずだ。だって自分は日本のリーダーで、この国に暮らす人達の代表だからだ。大変な思いをしている人が毎日10万人単位で出ている中、休みを取るのはしょうがないにしても、わざわざそれを広報する!?
ちゃんと地獄にいないから、そんな無神経なことが出来るのだ。
私はこの世を地獄だと思っている。
子供の頃「悪いことしたら地獄に落ちるよ」なんて脅されていたものだが、安心しろ、すでにここは地獄だ。昔の人達の尽力のおかげでいくらかマシにして貰えてるだけだ。油断すればあっという間に頭に爆弾が落ちてくるような景色になる。そういうものを全てはらんでいる。
そんな中を這いつくばって這いつくばってみんな生きているから凄いのだ。
辛いよーと泣いている人に、ある人は歌で、ある人は芸で、スポーツで、ビジネスで、政治で……、あらゆる手段を持って声をかけて力を分けてあげられるから、トップに行けるのだ。スターになれるのだ。
私達だって地獄を少しでもより良くするために知恵を使ってコツコツやっていくしかない。それに気がつけば知らない誰かにもちょっと優しく出来るだろう。
自分も地獄でなぜ悪いと開き直って、元気良く這いつくばって進んで行きたい。
星野源はただそれだけが悲しい記憶に勝つよと歌ってくれている。
あなたにとっての悲しい記憶とは何だ。
日本にとっての悲しい記憶とは何だ。
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