出会い(2)

 優人は僕の幼馴染。とは言っても、小学2年生の時から入ってきた子なのだけれど。


 近畿から、仕事の都合で引っ越してきた。


 忘れもしない。初めて顔を合わせた日を。


 **********


 桜の葉っぱが生えてきた季節。そんなある日の朝のこと。


「みなさん、おはようございます。」

「おはよーございまーす!」

「実は、うちのクラスに転校生がやってきました!紹介しますね。

 あ、うん、入って来てね。」


 教室がざわめく。


 どんな子なんだろー。

 男の子みたいだけど。

 なかよくなれるかなぁー。


 次の瞬間、教室の空気がピンと張り詰めた。

 足を踏み入れてくる。


 うわ……でっか。でかい。でかすぎる。


 ――「はじめまして、大勝優人おおかつまさとです。」


 先生が黒板に名前を書く。


「みんな、なかよくしてあげてね!自己紹介は、ここではあえてしません。みなさんから色々聞き出してあげてくださいね。

 ありがとう大勝くん。とりあえず、隅に新しい机置いておいたから、そこに行ってくれるかな。」

「はい。」


 あぁ、でも大きめの、丸みを帯びた可愛らしい目をしている。細身で色白の男の子だ。

 口数が少ない……?あまり喋るタイプではないのだろうか。


 あれ?そういえばなんだか喋り方が……


 僕の心の中で、好奇心は膨れ上がる。


 ――そして休み時間。

 みんな僕と同じ気持ちだったようで、大勝くんの周りには人だかりが。


「どこから来たんだ?」

「よう分からん……」


「何か好きなことはないの?」

「本読むこととか……」


 やんよやんよと、大勝くんは質問攻めにあっている。でも相変わらず、あまり喋らない。


 あっ、今やっと分かった。

 違和感の正体は「関西弁」だ。テレビでアニメを見た時のキャラに、いたなぁこういう人。

 ただ、大勝くんのは――アニメとは違う、もっとほんわかした喋り方。心地良くて、心がぽかぽかする。


 そのうち、みんなひと通り質問ができたようで、遊びに行ってしまった。


 だから僕はそーっと近づいて、声をかけた。


「あの、大勝くん、今日一緒に遊ばない?」


 しまった。僕はバカだ。

 気持ちが先走った。なんで普通の質問ができないんだ。

 こんな急に誘われたら困っちゃうに決まっているのに。

 どうしよう、嫌がられたら。嫌われたら。


 どうしよう、どうしよう、どうしよう……


 ――長い長い沈黙。もう1時間も経ったんじゃないかという気持ちがする。


 しかし、大勝くんの返事は、


 意外にも


「……いいよ。」


 だった。


 たった一言でこんなに胸が軽くなるなんて。こんなにも胸が弾むなんて。


 ***


 もちもち地蔵のところまで、少年2人、さぞ愉快そうに歩いていく。


 まるで、もう何年も前からの知り合った、唯一無二の親友のように。

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「野球」に住まう少年 @minato73

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