ハルカ VS 片角の魔族
「さぁ決めろ。死ぬのと殺されるのはどっちがいいかを」
「ど、どっちも同じじゃねぇか!」
マルクスのツッコミに魔族は笑った。
「よ、余裕ぶって笑ってられるのも今のうちだぜ」
足を震わせながらもマルクスがそう言うのは、後ろから王都の高速機動隊と騎士団が向かってきたからだ。
退魔結界の壁を突き破ってきたとはいえ、魔族の力は削がれ続け、確実に影響があると感じられる。対邪力減衰魔術陣は魔族の力を抑え、ここに向かってくる王都の援軍が使う強化魔術も範囲拡張術式によってマルクスたちにも届いていた。
そのことで少々強気になっていたマルクスだったが、次の瞬間にはそんな思いは吹き飛んでしまう。
「散れ! マリスハリケーン」
魔族が腕をひと振りしたことで巻き起こった風の渦がマルクスたちを襲う。マルクスとレミとエリオを巻き込み重戦士のザックの大盾を巻き上げ、近付いてくる王都騎士の半分を薙ぎ払った。ギルドの扉や壁も大きく破損し、その近くにいたセミールは魔族の前に落下する。
「うわぁぁぁぁ」
バタバタしながら起き上がった彼は四つん這いのままゴレッドの後ろに隠れ、この場に立っている者はザックとゴレッド、ハルカの三人だけとなった。
「ハルカ、大丈夫なのか?」
どうにか踏みとどまったザックの言葉にハルカはあわてて答えた。
「え? あ、はい」
(今のは吹き飛ばないといけなかったよね。ついふんばっちゃったわ)
そして、言い訳を口にする。
「ま、魔法です。風の魔法でなんとか耐えました」
「魔法で耐えただと?」
ハルカの回答が気に入らなかったのか、魔族はハルカに視線を向ける。
「おい。もう一回耐えて見せろ」
(えー、ちょっと個別の対象にしないでよ!)
軽く腕を上げた魔族に対して、ハルカはしかたなく杖をかざして法名を叫んだ。
「ガンヴォルドバースト」
電撃を帯びた空圧弾。それはハルカの身長に近い大きさで、彼女の魔法の非凡さが顕著に現れているチート級の魔法だ。その魔法が空気の破裂音とバチッという電撃音を入り混ぜた発射音で撃ち出された。
「フェイタリティーブロー」
ほぼ同時に魔族が使った魔法によって発生した強烈な突風が、ハルカの放った魔法ごと彼女を飲みこみ吹き飛ばした。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
きりもみ状態で吹き飛ばされたハルカの叫び声が遠ざかり、建物の向こうに落ちていく。仲間たちは驚きと悲痛に満ちた声をあげてそれを見ているのだが、なぜか魔族の男も少し驚いたような表情でハルカを目で追っていた。
そんなハルカは皆の視界から消えた瞬間に叫んだ。
「リリース・アルティメットコート」
このボイスキーに反応して首に巻かれたチョーカーのシンボルが光を放つ。そこから流れ出た光の液体が着衣を取り込みながら全身を覆い、トリコロール系のスーツとケープに変化していった。彼女の髪を赤みを帯びたブロンドヘアーに染め上げて、その髪をなびかせながらふわりと着地したハルカはアルティメットガールへと姿を変えていた。
ハルカが落ちていく様子を見ていた魔族はゴレッドとザックのふたりを見てこう言った。
「あれは死ぬことを選んだ場合だ。次は殺されることを選んだ場合を見せてやろうか?」
「そいつは……遠慮したいもんだ」
歴戦の元冒険者十闘士のゴレッドが戦闘態勢に移行した。
「遠慮は許さん。なにせ俺は残忍だからな。だが、わずかながら慈悲もある。貴様らの命を境界鏡と交換してやろう」
結界や魔術陣の影響を受けているとはいえ、油断の欠片も許されない相手に、少しでも全盛期の力を発揮しようとゴレッドが気合を込めたとき、魔族の背後になにかが見えた。
その一瞬の視線の変化を見た魔族は、背後に不穏な気配を感じて振り返ろうとしたところ、アルティメットガールの跳び蹴りが突き刺さる。
「ぐぼっ!」
魔族はもんどりうって地面に接触して転がっていった。
「ア、ア、ア……アルティメットガール!」
ザックの叫ぶタイミングに合わせて皆が彼女の名前を呼ぶ。
「こんにちは」
優しく涼しげな笑顔の彼女に唖然としながらも、皆は挨拶を返した。
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