第3話 男、地の王者となる

 頭上には真っ青な空が、首の痛くなるくらいに広がっている。

 下を向けば、未だ誰にも踏まれたことのないような綺麗すぎる草が、永遠に生えている。

 僕の目線の先には、360度見渡す限りの地平線が。

 自分以外に生き物がいるとは思えない程、静寂な空間。


 どれもこれも、僕の生活圏には存在しない。

 だがしかし、見覚えがある。

 僕は、この景色をよく知っている。あぁ、そうか…。わかった。

「LANDすけーる」

 これは、僕の大好きなゲームソフトの名前だ。

 どうやら僕は、ゲームの世界に転生したらしい。まぁ、死んだわけじゃあないから、入り込んだ、くらいにしておこうか。


 僕以外の、誰もいないこの世界に来たことが、とにかく嬉しい。

 それも、大好きなLANDすけーるに。


         ***


「あの…僕そろそろ死にそうなんですけど」

 苦手な直射日光を浴び続け、身体が溶けそうになってきた。

 …言っておくが、僕は至って真面目だ。

 少しでも日のないところで、休みたい。だけど、周囲を見る限りそれは不可能だと思い知る。

 木陰すら、見当たらないのだから。

「こうなったら、地面に穴掘るっきゃないでしょ…。はぁ…」

 いや、待てよ…。ここがもし、本当にLANDすけーる内だとすれば、穴を開けることくらい容易いかもしれない。

 爪先で軽く、地面を叩いてみた。

「何も起こる筈、ないよな…」

 別の方法を考え始めた、その瞬間。

 メキッ。パンっ!

 小さな破裂音がして、地面が揺れた。そして、そこにあった筈の土が、円を描いて消えていた。

 容易い御用だった。

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