第3話 セーブポイント
一話ぶりですね。鷹斗です。なに?メタいって?知らないよ、そんなこと。今はそれどころじゃあないんだよ。なんでかっていうのは第1話『序盤は負けイベント』を読んでくれたならわかる。そうだよ、一回自己紹介ミスって退場したよ。そんないきなり色々とビックな奴が先生の粋な計らいかクラスの中央に、席を位置取っているよ。うん、死にたいね。
いやでもスタートダッシュ失敗してるし、俺は顔はそんないけてないしコミュ障だし話しかけてくれる奴なんていないよね。
お母さん、今までありがとう。今日帰ったら遺言でも書こうかな。なんて思っていると、先生のちょっとした業務連絡が終わった。
「じゃあ1時間目から集中して過ごすように。先生からは終わります」
ざわざわと生徒たちが席を立って友達と話しに行き出す。人によってはトイレなどにも行くだろう。そう言えばあの勇気をくれた女神は何組なんだろう。同じ学年なのかな?そんなことを一瞬思ったが一瞬で今の状況に焦る。いや普通にこれからの学校生活どうしよう。誰かに話しかけるべきだろうか。
右隣をチラ見してみた。the真面目というような女の子だった。顔はあまり見れない、目があったらエンカウントしてバトルでもしそうだしな。いや逃げられるだろう。それこそ初対面でジロジロみるなんて負けイベだ。だが眼鏡をしているのはわかる。失礼かもしれないが少しガリ勉っぽい。髪型はおさげだ。今どきおさげなんているのかとびっくりした。ジブリでしか見たことないぞ?
でもきれいな髪だな。なんというかツヤがあるというか、男には出せない綺麗さとうか。
顔を見てしまいたい欲が増したように思える。「くそっ、また忘れていた」。今は話しかけれる人に話しかけて友達を作らなくては。「あ、そういえば左隣のやつが男子だった気が」。
見てみるとそれは不運にもチャラ男だった。見るからにチャラ男、全盛期のオリラジの藤森くらいチャラ男。いやそれは言い過ぎかもしれないな。とりあえず目をそらした。
「ねえ、今見てたでしょ」
「げ」
やべえ、ばれた。
「鷹斗くんだっけ?俺は八頭 大聖。よろしく」
「うん、よろしく」
「うん、とりあえず目をそらさないでくれない?」
「は、はい」
緊張が手に伝わる。今なら連打でプロ目指せる。それどころではない。人の目が怖くなったのはいつからだろうか。でもせっかく話しかけられたのだ。チャラそうな人であってもその行為に応えたい、顔を左に向けようとした時だった。
「いや、無理にとは言わないよ。苦手な人だっているもんな」
「ごめん」
「謝る必要ないよ。よろしくね」
「うん、よろしく」
見た目と人は比例しない。そう思わせてくれるいい人だと思った。だが我ながらコミュ力の低さが怖い。休み時間も五分程度のものだから終わってしまう。
「席に着けー。もう始めるぞ」
ざわざわと席に着きだす人々の椅子を引く音。教科書の準備のために机から出そうとするときにする布がこすれる小さな音が三十人の生徒が出すことにより大きなせわしい音を作り出す。
一時限目の開始のチャイムが鳴り響く。その音が鳴りやむと同時に静寂が生まれる。
「起立」
日直と思わしき生徒が少しだるそう、だが怒られたくないからだろうか、しっかりと聞こえる様に発声しているのがわかる。
ガタガタと摩擦の強い椅子を引く。この学校は椅子を引くと引きっぱなしにせず、机にしまうというずいぶん律儀なことをする学校だ。
少しきょろきょろとしながら周りの人に合わせる。
「きょーつけ、礼」
「よろしくお願いします」
自分だけがずれたら嫌なのか、クラス全体の声は小さい。これはどこも共通なのだと感じる。もちろん俺は声をださない。だしたら周りに何を思われるかわからない。自意識過剰なのかもしれないが自分は一番自分自身を守りたいものではないのだろうか。
「着席」
ガタガタ。さすがと言うべきか。一年半ほど行ってきたその座るまでのルーティンは洗礼されていた。
一時限目の授業は社会。日本の地理の内容のようだ。自分の教科書は前の学校で使っていたものを使えるところは使うことにしていた。
「おぉ、見ない顔がいると思ったら転校生が来たのはこのクラスだったか」
小さく会釈をする。社会の先生はおとなしそうな温厚な先生。指には結婚指輪が見えて「ああ、この人の家庭は良い家庭なのかな」と思わせるなにかがある。服も暖かそうなニットベストをシャツの上から着ている。色は落ち着いた灰色、そこからでる白シャツ。清潔感がある服装とは一変して顎にが髭が。だが綺麗めな黒縁眼鏡、優しそうな細長な瞳。髪は短めだがとがった印象がないナチュラルな髪。その中にぽつぽつと白髪が見える。
「いきなり都会から田舎は慣れないことも多いかもしれないけど、いろんな人に聞きなさい」
「はい」
この人は何か人の心をつかむ何かを持っている。目までは合わせれないが少し声を張って、何席か離れた先の教卓にいる先生に応えた。
「じゃあ始めます」
遅くもなく早くもない授業が始まった。前までいた学校はそこそこ頭がよかったのでついてくのには困らなかった。一時限目の授業はゆっくりとはじまっていった。そして朝早くから登校してきた生徒たちは怒られるともつゆ知らず睡魔には逆らえなかた。俺は緊張からか疲れていていつの間にか暗闇を見ていた。
「じゃあ今日はここまで、日直お願い」
「起立」
ガタガタと椅子を引く音に俺は起こされた。「やっべ」っと、居眠りしていたことを勘づかれないように急いで起立する。初っ端の授業で居眠りするなんて思わなった。自分では気づかないうちにつかれていたのか、それとも先生の声が睡眠導入につながったのか。後者であってほしい。
転校したら家族を好きになってしまった 丹頂 @04-natu-04
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