第91話 現像 その5 ダークバッグ

「今からダークバッグのやり方を説明しますので皆さん見て下ださい」


ダークバッグを持ってきて四角い箱の蓋をあけると中身は全部真っ黒だ。

正面と右側に手を入れる穴が開いているが、事務員や銀行員とかは腕カバーみたいなのが付いている。


箱の中に必要なモノを入れていく。蓋が開いた【現像タンク】タンクに入れる【リール】を、練習用フィルムとハサミを入れた。


箱のサイドから手を入れて箱の中に手を出す。


裾と袖側にゴムひもが入っていて、本当に事務員さんがやってるカバーみたい。

光が入らないように肘くらいまで長さがあるよ。

先ずはフタを開けたままの練習。


フィルムを最後まで巻きとる。

ここまでは問題ない。


最後はフィルムをハサミでパトローネから切り離すんだけれど、ここはフィルムを確認しながら指でチョッキンするフリ。


「それでは別に用意していますこの2個目のリール。

フィルムを巻き終えパトローネから切り離していると思ってほしいです。

実際には何もしていないカラのリールだけれどタンクに入れる練習もしないと駄目ですからね」

先生が口頭で説明をして、私が実演する。

「替えのリールの中心に芯棒を差し込みます、差し込んだ方には芯棒の黒い部分が残っていて、裏面はツライチで突起はありません。突起のついてる方を下にしてタンクの中に入れますね。

そして蓋をします、最後まで入ったら時計回しにするとカチッといいます。

このカチッという音が聞こえたらダークバッグを開けて問題ありません。」


これで一応終わりか…。

フウ…と一息ついたところ。


「じゃぁ先生、このまま蓋閉じちゃいます。練習用フィルムとリールは新しいもの入れますね。場所しっかり覚えてくださいね」


横で見守る先生の無茶ぶりにびっくりしたが箱に手を突っ込んだ私は何もできずに用意が終わり蓋が閉まる。


「上手くできますよ、落ち着いてやってください」


ひと声かけてもらうだけで少し不安が薄れたが緊張してきた。


ダークバッグの蓋を見ずに目を閉じる。

さっき練習したとおりにやればOKだ。


リールを手に取り、フィルムを探す。

おいてある場所は解ってるんだけどフィルムが見つからない。

フィルム…フィルム…左手でフィルムを探す。


あったあった…、パトローネ部分を手にしていたのでフィルムの方に持ちかえる。

そしてそのままリールに入れようとするのだけれど差し込みの場所が解らない。


フィルムを置いて、リールをクルクル両手で回すと一部分違う所がある。

右手でフィルムを持ちリールに差し込む。

上手い事入ったので、リールを両手で持って前後にガチャガチャとやってフィルムを巻き取る。

パトローネからフィルムを引っ張りガチャガチャ巻き取るの繰り返し。


「焦らなくて大丈夫です。ゆっくり巻き上げてください」


結構ガチャガチャやってたようで先生の方を見ると、全員が手を停めてこっちを見ていた。


気を取り直して最終まで巻き取る。


「良し巻けた!」

リールの中心に芯棒を差し込んで、差し込んだ方を下にしてタンクに入れる。

蓋を載せて時計回りに回してやる。


カチッ。


ダークバッグを閉めていても聞こえたので無事完了!!


ヤバい!コレ本番で失敗しそうなくらい緊張しそうだよ!!

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