第24話 紀三井寺

ひたすら自転車で走り続けている…。

ぶっちゃけもう帰りたい…。30分ほど走ったがまだ目的地には着かない。


標識見て思ったんだけど、ひたすら南へ直進しているこの4車線道路は「国体道路」と呼ぶ、今まで違和感なく呼んでたけど、しんどさを紛らわすために色々考えていると不思議に思えてきた。

ちょっと休憩がてら自転車を止め、スマホで検索。

ほうほう…和歌山で行われた1度目の国民体育大会に合わせて整備された道路で、それ以来この名前で呼ばれているそうだけど、他府県の人が聞いたら笑われそう。

国道○○号とかじゃないんだよね、スマホのマップで確認しても国体道路って書いてあったし、まぁ解りやすいから良いんだけど…おぉ他府県にもあるんだ国体道路、なんだかちょっと親近感。


止まっていても着かないので気合を入れてひたすら走る…。

カメラ屋さん出てから1時間ぐらいは走ったんじゃないかってくらい走ったらでっかい交差点が出てきて、左に紀三井寺の文字。


あぁ…この交差点をこえた所にあるハンバーガー屋さんによって一息つきたいが、道を外れるのも嫌になってきたしお財布の中身が寂しいのでやめた。


標識通り左に曲がると和歌山では超有名はローカルCMを流しているホテルが出てきた。ホテルの温泉で一休みしたい、汗を流したいと思いながら、踏切があり線路を越えると、両サイドにお土産物屋さんが立ち並び、朱色の楼門が目に入る。

階段の両サイドには桜が咲いており人で賑わっている。


あぁ来てよかった~~!!

すごくきれいな所、そういえば初めて来たな~。

写真を撮ろうと思わないと来ることない場所だよね~。

そう思いながら、胸元にぶら下げたカメラを手に取り、巻き上げレバーを引き上げ、ピントを合わせて楼門をパシャリと1枚。

なんか感触が変だ!壊れた?



………あぁフィルム入れ忘れてる!!


「日中に使い切るつもりで買ったのはジャジャ~ン『FUJIFILM FUJICOLOR 100 24枚』ちゃん、さぁ出ておいで仕事の時間だよ」

肩から掛けていたバッグから緑色の箱を取り出し、ササっとパトローネを装填する。


カッシャン、カッシャンとフィルムを送る儀式を行い、フィルムの枚数が1になっているのを確認する。

「フィルム入れた!(指さし)えぇ~~っと、感度を100にするのを忘れずに…よし出来た!!それから後は遠目の風景だから絞りをF22にしようっと!!後は何か忘れているの無いかな?フィルムゲージは…っと、ちょっと出てるね!大丈夫…ぅん?」


視線を感じてきょろきょろすると観光客がチラッとコチラを見ているのに気が付いた。

しまった!今ブツブツ言ってたよね…傍から見ればボソボソ何か言ってるカメラ女子、しかも1人、ちょっと気持ち悪かったかな?

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