第20話 写真

3月の終わりだというのに朝はまだ少し肌寒い。


おじいちゃんに借りた自転車でカメラ屋さんのオープンに合わせて走っているところなんだけど、カメラ屋さんって少なくなったよね。


JR海南駅の近くにあるカメラ屋さんで、昨日来たときは気が付かなかった黄色い看板が目印でコダックって書いてある、ポケモンかな?


シャッターを開けているタイミングで到着、昨日の店長さんに挨拶をする。


「昨日のお嬢さんだね!!写真だね!お店開けるからちょっと待ってね~」

自転車をお店の前に停めて、店内に入る。


店長さんはカウンター下から写真のが入っているであろう横長の紙の袋を取り出してカウンターに置いた。


「昨日がフィルムで初めての撮影だったんだって?上手に撮れてましたよ~。今時フィルムカメラって珍しいね~おじいちゃんの影響かな?あの人写真にうるさいからね~」

じゃあこちらがフィルムですね~、そういってカウンターに置いたのを見てギョッとした、なんか色が変だ…。

手に取ってみると6枚の写真の枠が確認できる。

横長のフィルムの入った袋が1つ、その下にも同じようにフィルムが入っている。

残りのフィルムは重なるように後ろに畳まれて厚みが出ている。

上部を持ってパラパラと広げると下に4枚広がって見えた…あぁ…やっぱりだ…。



失敗している…全部真っ黒だ…もう駄目だ…。



急にショボンとした私を見て店長さんは慌ててフォローしてくれた。

「大丈夫ですよ~。フィルム見るの初めてですもんね~、ビックリしましたよね!!フィルムを現像するとこうやって写るんですよ。仕上げのプリントアウトしたものがコチラです!」

そして同じ袋から出てきたいつもの見慣れた写真が出てきた。

チラッとたまちゃんの写真が見えて涙が出た。


メッチャ焦った!!ちょっと涙目になってるかも…、写真を確認する前に店長さんに断りをいれ化粧室にいったん逃走だ。


絶対目が真っ赤になってるよ…恥ずかしすぎる…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る