第16話 電車を撮ってみよう
祖父の車に揺られながら私は窓の外ばかり見ていた。
遠くの方で電車が貴志駅に向かっているのが見えたが、撮影できる距離じゃなかった、残念…。
今はぼんやり外を見ながら軽快なジャズを聴いている。
ピアノの伴奏から始まるこの曲、あっおじいちゃんの好きなヤツだ。
えぇ~~っと車でかかってるし、ブレーキのモーニングって曲だったかな?
おじいちゃんに聞いたらオシイ!!って言ってた、正解はアート・ブレイキーのMoanin'だった。BLUE NOTE, BST-4003のレコードを家のPCでデータ変換して聞いてるんだって、ハイテク爺さんマジ何者?。
どうでもいい話をしながら来た道とは違うルートで帰っている。
帰り道は折角だから、貴志川線が見える道で帰ろうと言う話になっており、どこかで電車を撮っていこうと、父が時刻表を見ながらどのポイントで撮影するか祖父と相談している。
道路真横に線路があって、その時すれ違っても嫌なのでカメラを持って外を見ている、でもピントすぐに合わせれるかな?絶対失敗するよ。
てか、近づくどころか道からかなり線路離れてるし、さっき1回通っていったし!
パパが言うには、ホームに電車が停まっている時が良い!!
狙うなら、すれ違い拠点駅にするべし!!
すれ違いにはロマンがあるんだとかなんとか…。
車両がすれ違う駅は、和歌山人なら皆が知っている神社、そこの最寄り駅になっている『日前宮駅』と『伊太祈曽駅』の2か所。
そして車が停めれて便利なのは『伊太祈曽駅』になる。
『日前宮駅』だと少し時間がかかるから夕方になってしまうから、あと駐車場あったか分からないらしい。
今話した駅は有名な神社の最寄り駅なるんだよね。
3つの神社に詣でる風習が残るのが和歌山市周辺の人たちです。
紀伊國一之宮でもある
お正月にお参り、毎年行くよね。
えっ?みんなお正月3社参り行かないの?
で、この3社を電車でお参りできるのが貴志川線ってわけだ!!
メッチャ便利!!
すごく詳しいのは、全部祖父と父が車の中で教えてくれたぜぃ~!!
カフェで神社の話していたのも納得、皆物知りだね~。
『伊太祈曽駅』は貴志川線の車両基地があり、国の登録有形文化財に指定されている文化財『和歌山電鐵貴志川線伊太祈曽駅検査場』なるものがあるゆだって。和歌山電鐵貴志川線内で唯一の有人駅だし、自転車の貸し出しもあるんだって。
電車にそんなに興味はないし、予備知識として頭に入れておこう!
それよりも電車だよ!!
撮影だよね!!!
これからどうするの?!
走っているところをみんなで待ち構えて撮ろうと言うことになり、すれ違い駅は見送りとなりました。
三月下旬の桜スポットで貴志川線が綺麗に見える場所…。
『大池遊園駅』のある大池遊園って公園。
ここはデッカイ池と桜の名所で超久しぶりに来たよ!!
小さいときにボードに乗りに来て以来だから何年前?小学生の時だからかなり前だね。
祖父が言うには桜と電車を撮るならここしかない!!って場所なんだって。
そういえば写真屋さんの展示パネルで桜と電車の写真を見たことあるかも。
目的地に向かって車は進み約10分ほどで到着する。
ジェラート屋さんがあるのをちらっと確認。
後で母をどう誘惑するか思案しながら公園中に入っていく。
大きい池に赤茶っぽい橋桁に貴志川線の線路が通っているのが見える。
東側奥には少し小高い丘があり、目線の真ん中に池、西側は桜並木になっている。
周辺をうろうろしていると、そろそろ電車が来る時間になるぞ!と父がスマホを見ながら教えてくれた。
私は西の桜並木の方に足を運び、池を正面に右上がりに線路が来るようにファインダーをのぞく。
良い感じで咲きはじめた桜がアーチのようにフレーム上部に来る場所を見つけた。
桜で囲まれた電車の絵が思い浮かぶ。
連射ができないので一発勝負だね。
橋の部分でピントを合わせ準備万全。
踏切の音が遠くから聞こえそれと同時に電車のガタンゴトンという音が近づいてくる。
貴志駅から発車した車両がコチラを向いて走って来ている。
遠目に白いボディの2両編、正面には3本のひげが書かれた『たま電車』だった。
ドキドキしながら巻き上げレバーを巻き上げ、1度たま電車を確認しからファインダーを覗く。
構図は決まっていて、ピントもきっちり橋で合わせた(つもり)。
後は桜のアーチに電車が綺麗に収まれば最高の一枚になるに違いない!!
電車が池に差し掛かり、橋の上を走る。
もう少し、桜のアーチに電車が入った瞬間。
カシャン!
1枚しか撮れないってメッチャ不安しかない。
いやぁ~~~なんだか緊張したなぁ~……一気に疲れが………。
甘いモノたべた~い!!
そうだジェラート屋さんがあるじゃないか!
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