第12話 ニタマ駅長


クネクネと走る田舎道を走る。

車内は春の陽気で少し暑いくらいだが窓を全開で開けるとまだまだ肌寒い。


遠くに見える山の山間部には山桜がチラホラ咲き始めているところが見える。

撮影しようと思ったが、余りにも小さく映るので断念した。

駅に着くまでに、桜の代わりに後ろのバカップル夫婦を撮っておいた。

レンズを向けるとイチャイチャしだしてウザい。


そんなこんなで目的地周辺、車を停めたのは近くの河川敷の公園の駐車場。


「ここからちょっと歩くで~。あの橋を渡って10分もかからんし、駅に駐車場ないんよ」


どうやら駅は河川の向こうらしい。

桜が咲くには少し早く河川敷なので少しだけ肌寒く感じるが、日差しは暖かく心地よい。

家族で出かけるのもいいものだね~、両親は相変わらず仲良く後ろを付いてくる。

祖父とともに堤防にあがり春の陽気を感じながら並んで歩く。

何気ない日に祖父と出かけるのって何時ぶりだろう?


時折首からかけたカメラが歩く振動で胸を打つ。

軽く下を向きカメラを見下ろすと、胸の前で踊るカメラが可愛く見えた。

スマホを買ってもらった時と同じくらいワクワクする。


カメラを胸元からすくいあげ、歩きながらファインダーを覗いてみる。

橋の真ん中から見る景色も中々。左側に見える水門もファインダーを通すといい風に見える。


貴志川に架かる橋を渡りきり、道なりに歩くと左手側に貴志駅の看板が見える。

左にあるゆる~い坂を上がっていくと、不思議な形の屋根とTAMAの文字が見えた。

屋根に名前があるのにびっくりした。


ここがJR和歌山駅から約30分で到着する終点貴志駅。


「貴志駅舎の屋根はな、駅としては珍しい桧皮葺ひわだぶきといわれるひのきの皮を使ったもんなんやで、日本の伝統技術やな。

茅葺屋根にしようと思ったんやが、消防法かなんかでできなかったそうでな、この形になったんやって」

なんでも知ってる祖父が聞いていないのに説明してくれる。

なんとありがたい。


それにしても屋根には猫耳、窓が猫の目、駅全体で猫の顔になってるのってかわいい、ちょっと横長だからブサ可愛いダネ。

うれしくって小走りで駅舎に入る。

入り口にはたまちゃんの看板がある。  

入ってすぐ左手側には駅長室がありガラスの向こう側。タオルケットの上にだらんと寝そべったニタマ駅長がみえる。

チラッとコチラをみて何故か座りなおしてくれたニタマ駅長。

三毛猫ってそういえば近くで見るの初めてかも…、メッチャあのお腹をモフモフしたい。

触れないのでカメラで写真を撮ろう!!

ニタマ駅長は俄然こちらを見てくれている。

そのままピントを合わせ写真を撮っていく。

あれれピントが合わない!

右に左にフォーカスリングを回してなんとかピントをあわせる。


普通に撮影するよりも縦構図がなんだか落ち着くんだけど撮影しにくいな~。横にシャッター付いてたらいいのに。


駅長室は横からも観れるのでそちらに回って別アングルでシャッターを切っていると他の観光客が一気に駅長室に集まってきた。

夢中で写真を撮っていたので、駅に電車が到着したのに気が付かなかったのだ。

そう言えばなんか音楽なってたかも。


電車からお客さんがいっぱい降りてきたのね~。


って事でちょっと休憩。またあとでね、ニタマ駅長!!

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