第11話 ピントの合わせ方

「美幸ちゃん、それなただ単にピント合ってないんよ。

あぁ~レンズと撮影の仕方を教えていなかったな、とりあえずモードからやな。

シャッタースピードが書いてある横、『Sモード』と『Aモード』があるんやけれども、おじいちゃんは絞り優先モードがおすすめやな。今回みたいな猫や人物撮影ってのはポートレート肖像画や肖像写真の意味やからな、絞り開いてバックをボカして被写体を際立たせるんや、料理写真とかもそんな感じで美味そうに撮るよな。

雑誌とかで見たことあるやろ?最近じゃスマホのアプリで一発やけどな」


最近のカメラアプリの話をしながら運転している祖父…。なんかちょっと怖いんだけど…。


その後、カメラの絞り値の話になったんだけれど、要は数字が小さいとピントの合う位置が少なく後はボケる、数字が多いと全部にピントが合うので、集合写真や風景に良いんだとか…。

スマホじゃ気にしたことが無かったが、覚えておくと良さそうだ。


で、カメラのピントの合わせ方は車内で練習することになった。


シャッターボタン半押ししたらピントって合うんじゃなかったの?

スマホなら合わせたいところにタッチするだけなのにね、全くもって全てを自分でしないとイケない手のかかるカメラめっ!



とりあえず祖父の言う手順でやってみようかな?

「じゃあ説明しようか!ファインダーで見ながら、フォーカスリングを回してみぃ」


言われたとおりファインダー覗き込む。

とりあえずダッシュボードを見てみることに。

直線が多くてピント合わせやすいんだとか。

中央部分にある〇の部分が二つあり、中央の〇の真ん中には線が一本引かれてるのがみえるね。

フォーカスリングをぐりぐり回していくと、真ん中の〇の線がずれたり近寄ったりする。

さらにリングを回すと、輪郭がぴったり合う所がある。

上下左右に少しカメラを動かして輪郭のズレが無いか見てみる。

ここをスプリットイメージって言うらしく、綺麗に見えたらピントが合っている証拠らしい。

「おじいちゃんなんとなくだけどわかった気がするよ」

そう言いながら運転中の祖父をそのまま見てピントを合わせてみる。

とりあえず、めいいっぱいフォーカスリングを回しきってから、ゆっくり逆向きに送っていく。

とりあえずこうしたら何処かでピントが合うだろう。

そうこうしていると、祖父がきれいに見えた。

なんだかいい感じに見えるのは、ファインダーを覗いてるからなのかな?


一度目をファインダーから外す。

絞り値の変更をしてみようっと。ボケボケにするには最大絞り値のF1.7にしてっと…最少はF22か…。とりあえずボケボケ写真試してみますかね~。



巻き上げレバーをペコっと出して、親指をひっかけてフィルムを巻き上げる。空シャッターとは違い抵抗がある…この感覚何とも言えないわ。


そしてもう一度祖父にファインダーを向け、ピントを合わせてみる。

フォーカスリングを動かしていくと輪郭がどんどんズレていく。

あちゃ~逆だったか~。

グニグニとリングを回してなんとかピントが合う。

祖父の横顔しか入らないのでカメラを縦に構える。

スマホで撮り慣れてるからこっちの方が落ち着くよね。


祖父はチラッとコチラを見てニヤリと笑った。

途端ブレーキを軽くかけ車を減速させながらブワンブワンとアクセルを煽りシフトを一段落とした。


カシャン…。


一連の動作がカッコよくシャッターを押してしまった。


コーナーを抜けて加速していくのを体で感じる。


「おじいちゃんとっても何もおもろないで~」


ちょんまげみたいなポニーテールが少し開けた窓から入る風でサラサラとなびいでている。

少し肌寒い車内、チラッとコチラをみて笑う祖父をもう一枚フィルムに収めるのだった。

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