幼馴染と俺

「あやちゃん……」


「ん……もっと……」


「な、なんか変だよ! もう揉みたくないよ!」


「や!! お願いひなた! もっと揉んで!」


 目を潤ませてお願いする幼馴染


「ピアノを弾いている感じで、私の胸を揉んで欲しいな」


 また変な注文をされたけど、そうか、ピアノを弾く感じか。


 人の肌でそんな事をしていいのか、すら知らない幼い俺は、その日からも毎日彩の胸を揉み続けた。


 それが果たしてどんな結果になるのかは知らないけど、幼馴染の頼みなら何でも聞いてあげたいと思った俺は、言われるがまま続けたのだ。




 それから数年後。


 発育の良い彩の胸は既に豊満な感じになっていた。


 しかし、既に毎日揉んできた俺が思う事は、あの中に夢は詰まっていない事を知った。


 ピアノみたいに綺麗な音はしないし、彩は変な声を出すし。


 いい加減辞めたい…………。


「彩、悪いんだけど……」


「却下」


「俺達もう中学生だよ!? もうこんな事やめようよ!」


「…………ひなた、最近好きな人、出来たでしょう?」


 グサッ。


「そ、そ、そ、そんな事……」


「私達が何年一緒にいると思っているの…………隣クラスの三上さんね?」


「ええええ!? 何で分かるの!?」


「ひなたの顔見てれば直ぐに分かるわよ! ひなたの馬鹿!!」


 そして、彩はいつもの俺の席で大泣きし始めた。




 あれから数日後。


 クラスの男子同士で話すのが聞こえてきた。


「なあなあ、女子の胸ってめちゃ柔らかいらしいんだぜ?」


「まじ!? 触ってみてぇ~」


「なんかよ、あの遠藤・・さんにお願いしたら触らせてくれるらしいよ?」


「まじかよ! めちゃ大きいもんな! 今度お願いしてみようかな!」


 その言葉があまりにも衝撃的で、俺はそのまま彩の元に走って行った。


 吹奏楽部に入った彩が終わるのを待って、出て来た彩を直ぐに連れて校舎裏に行った。



「はぁはぁ……ひなた? どうしたの?」


「はぁはぁ……彩、お前! 色んな人に胸を揉んで貰ってるのか!?」


「ッ!? そんなわ――――――だとしたら?」


 少し怒った彩の顔。


 普段から俺に対して全く怒らない彼女から初めて見た表情かも知れない。


 俺は拳を握り締めた。


「それ、やめろよ」


「ひなたには関係ないでしょう」


「関係あるよ!」


「でも揉んでくれないじゃん!」


「そ、それは――――お、お前が大事だからだよ! 胸は大事な人にしか触らせちゃ駄目なんだから! だからもう他の人に触らせるのはやめろよ!」


「……ひなたは私が嫌いになったんじゃないの?」


「嫌いになってない! お前は俺にとって一番・・大切な友人なんだ!」


「っ!? ――――――ひなた」


「う、うん?」


「…………私、誰でも良い訳じゃないよ? ひなた以外は嫌だよ? それに私の胸はひなた以外の人には触らせた事ないからね? 信じてくれる?」


 ああ、長年一緒にいるからこそ分かる。その言葉に偽りなどない事を。


「ああ、信じるさ。でも俺はもう揉まないけどな」


「ぶー、ひなたの意地悪! …………こうなったら…………えいっ!」


 彩が俺の右腕に絡んできた。


 いつも揉んでいた大きな胸を右腕に押し付けてくる。


「や、やめろよ!」


「や! これだけは譲れません!」


 この日から彩が俺の腕に絡んでくるようになった。

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