彼女達の目的を知った日

「ひなた! 見て見て!」


 彩が大きなタブレットを持って、俺に見せてくれた。


 隣には三上さんも浅田先生もいて、みんな笑顔で見つめていた。


「ん…………『ボックス~箱の形は自由~』? 何これ?」


 タブレットに書かれている文字を読んだ。


 そこには色んな写真が写っていて、下に時間を表す数字が書いてある。


「これはね。音楽を載せる専門サイトなんだって。箱というのは、ライブ会場の事を指しているらしくて、インターネットを使って自分の自由な箱をここに投稿するんだ」


「へ、へぇー、……………………まさか」


「えへへ、ひなたのピアノも載せようと思うの!」


 あぁ……そう来たか…………。


 あのビデオカメラが現れて数日。


 嫌な予感はしていた。


 しかし、満面の笑顔の幼馴染と、美少女三上さんと、先生浅田先生は既にそのつもりで動いていたらしい。


「はぁ、今更嫌だとは思わないし、ピアノ弾くの好きだから、彩には感謝もしてるし、好きにしてくれていいよ」


「ほんと!? やったぁあああ! ひなた大好き!」


 抱き着いてくる彩の甘い香りと豊満なあれが俺の身体を包み込む。


 それと同時に、別な方から抱き着く人影。


 彩とは違う爽やかな香りと心臓の鼓動の音が聞こえそうな程、身体を密着させてくる三上さん。




「ま、待って! 二人とも! 先生の前で抱きつかないでってば!」




 ふふっと笑った浅田先生は、


「私の前じゃなければ、いいのかしら……」


 と呟く。


 そういう訳じゃないんだけど、腕くらいなら何とか我慢できるようになったけど、身体に直接抱きつかれては色々と困るのだ。


 服越しとはいえ、今は夏。


 つまり薄着だ。


 彼女達の体温が伝わって来る。


「三上さん? 俺の汗を嗅ぐのはやめてね?」


「ふふっ、大丈夫。ひなたくんの匂いなら全て受け入れるわ♡」


「えっ! 私も! クンクン」


「わーっ! 彩もやめろ!!」


 そんな俺達を浅田先生は微笑ましく見守ってくれた。






「私も混ざって良いのかしら?」


 聞こえなかった事にしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る