俺がピアノを好きになった原因が幼馴染にある事を誰も知らない

 次の日の部活終わりの音楽室。


「…………彩? 三上さん?」


「「こちらは気にしないで!」」


「いやいやいや! 気にするだろう! 写真もボイスレコーダーもよく分からないけど、今度はビデオカメラ!?」


「いいのいいの、ひなたは私達に任せてピアノを楽しんで」


「それでは楽しめないだろう!!」


「大丈夫よ。ひなたくんなら出来るわ♡」


 それも違うと思うんだけど…………はぁ。


 浅田先生もニヤニヤしながら見つめているし、一体今度は何を企んでいるのやら……。


「はぁ、分かったよ」


 不敵な笑みの二人から目を離し、俺はピアノに集中する。


 いつもピアノを前にすると、不思議と世界が綺麗に見える。


 キラキラしたような、光り輝く世界が美しくなり、ピアノから流れる美しい音が俺は大好きだ。


 いつからだったかな……俺がピアノを弾くようになったのは。




 ◇




「ひなた~」


「ん?」


「うちのお母さんがピアノ教室に行けってうるさくて……」


「そっか、それは仕方ないよ。いってらっしゃい」


「…………ねえ、ひなた? 私と一緒に行かない?」


「え? 僕、お金ないよ?」


「見るだけなら大丈夫かも知れないから!」


「…………ん~暇だし、いっか」


「えへへ、行こう!」


 それがピアノとの初めての出会いだった。


 その日、彩に連れられ向かったピアノ教室。


 見学なら自由にどうぞと優しい笑顔の先生のおかげで、俺は初めてピアノに触れられた。


 その日の事はよく覚えていない。


 ピアノを弾いていた彩が驚いた顔をして、俺は何故かピアノに触れたような気がする。


 ただ一つだけ大きく変わった事は、先生からお金はいいから毎日来て欲しいと言われた。


 それが俺とピアノの出会いだった。

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