両手に花という言葉が嘘なのを僕は知っている

 あははは…………笑ってくれよ。


 どうしてこうなった…………。



「みてみて! あの子、女の子がもう一人増えてるよ?」


「おいおい、あいつ、リア充を越えて、二人になったぞ!?」


「嫌らしい!」


 はぁ……。


 右腕に巨乳を押し付ける幼馴染


 左腕に貧乳を押し付ける美女三上さん


 それで登校した俺は、怒り狂う先生から、そのまま職員室に連行された。




「ひ!! な!! たっ!!!」


 一々、毎回机を叩くなよ、青山あおやま先生……。


「はい」


「お前は……何で毎朝腕を組んで登校するんだ! しかも、あの優等生の三上さんまで巻き込んで!」


 職員室内に大声を上げる青山先生。


 他の先生がクスクス笑う。


 はぁ……別にそうしたくてしてる訳じゃないんだよ。



 以前、彩を力づくで拒否した事があった。


 彩はその場で泣き崩れ、地面に大の字になってジタバタしながら泣き叫んだのだ。


 スカートの中が丸見えだったのはともかく、もう高校生にもなって駄々こねる幼馴染をそのままには出来ず、今でも腕組み登校を許している。


 今朝、何故か一緒に待ち伏せしていた三上さんが左腕に絡んで、負けじと彩も右腕に絡んだ。


「先生。あれを拒否したら、道で大の字になって泣き叫ぶって言ったじゃないですか」


「そんな事、有り得るか!!」


 それがありえるんだよ。彩は。


「それと三上さんのあれはなんだ!」


「それなんですよ! 寧ろ、教えてくださいよ! 三上さんがどうして俺に、おっ、おっ」


「おっ?」


「おっ……おっぱいを押し当てて来るのか…………」


 それを聞いた青山先生の怒り狂う説教が始まった。


 はぁ……そんな事言われても、俺はただ登校してるだけなんだけどな……。




 教室に戻る。


 ポツンとした自分の席に座る。


 登校がああいうものだから、高校で友人は一人もいない。


 ――――と思ったけど。


「三上さん?」


「うふふ、ひなたくん。隣、いいかな?」


「い、いいけど…………大丈夫?」


「うふふ、大丈夫よ」



 基本的にクラス内を見ない俺は気付かなかったけど、三上さんは『美人過ぎて誰からも声を掛けて貰えない』人だった。

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