第10話 海に行く準備と出発

 海に行く前日の土曜日に僕は色々と準備を始めた。

 まずはリュックサックを用意し、紳士の嗜みとして中にハンカチやポケットティッシュ、それにレジャーシートなどを入れておく。

 またリュックサックが必要な主な理由は、明日母にお弁当を二人分作ってもらい持っていこうと考えているからだ。

 まだ母にはお願いしていないので、今から頼みに行くつもりだ。


 僕はリュックサックを部屋に置いてから部屋を出てリビングに向かう。

 リビングに着くと母がテレビを見てくつろいでいたので、声をかける。

「ママちょっとお願いがあるんだけど」

「どうしたの蓮?」

「明日沙菜と一緒にピクニックに行くんだけど。それでお弁当を作ってほしいんだ」

「そういえば沙菜もピクニックに行くとか言ってたわね。お弁当を作るくらいかまわないわよ」

 どうやら簡単に了承を得られたようだ。


「ありがとうママ」

「それにしてもふたりで一緒に出掛けるなんて珍しいね」

「うん。たまにはいいかなって思って」

「どもまで行くの? 沙菜は教えてくれなかったけど」

「ああ、それは……」

 僕は事前に考えていた家から電車で30分ほどの所にある、大きな公園の名前を口にした。


「ふうん。あの公園ね」

 どうやら母は僕の言葉に疑いを持つことはないようだった。

「少し遠いけどふたりだけで大丈夫?」

「大丈夫だよ。沙菜のことも僕がしっかり面倒見るから心配しないでいいよ」

「そう。沙菜の事よろしくね」

「うん」

 これで僕に出来る準備は完了した。後は明日母にお弁当を受け取り沙菜とふたりで出発するだけだ。

 僕は自室に戻り明日の海への旅路に思いを馳せるのだった。


  ☆


 その日は海に行く日で、朝の8時に目を覚ました。

 自室に置いてあったリュックサックと大事なメモ帳を手に持ってダイニングへ向かう。

 ダイニングでは既に沙菜がテーブルで朝食を取っており、僕を見るなり声をかけてくる。

「おはようお兄ちゃん」

「おはよう沙菜。今日は体調は万全か?」

「うん、大丈夫。元気だよ」

 それから僕はキッチンにいる母に声をかける。

「おはようママ。お弁当は出来てる?」

「おはよう蓮。お弁当なら出来てるわよ」

 そういって母が弁当箱をふたつ手渡してくれる。


「はい、どうぞ」

「ありがとうママ」

 手渡された弁当箱はその場でリュックサックの中に入れた。

「蓮も朝ごはんはトーストでいい?」

 母が聞いてくるので僕は「いいよ」と答えた。

 僕はトーストが焼き上がるのを待つ間、テーブルの椅子に座って待つ。

 しばらくするとトーストと一緒にサラダが出てきたので食べ始める。

 完食して牛乳を飲んだら、朝食はおしまいだ。


 その後は洗面所で顔を洗ったり、服を着替えたり、水筒にお茶を入れたりして準備を整える。

 僕のリュックサックに沙菜の分の水筒も入れておいた。

 8時30分になって僕は沙菜に声をかけた。

「それじゃ、そろそろ出発するぞ。準備は整ってるか?」

「大丈夫」

「財布にお金がきちんと入ってるか? 最終確認をするぞ」

「えーっと」


 沙菜が財布の中身をチェックする間、僕も自分の財布の中身をチェックする。

 僕のお金は大丈夫だ。

「入ってる」と沙菜が告げる。

「それじゃあ、出発するぞ」

「はーい」

 それから僕は近くで僕らを見守っていた母に声をかける。

「じゃあママ。行ってきます」

「ふたりとも気を付けてピクニックを楽しんできてね。いってらっしゃい」

 そして僕と沙菜のふたりは母に見送られて家を出た。

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