第13話 これから始まるハーレムラブコメの序章的なおはなし〈集合の怪〉
ーーという訳でGW初日、何故かなし崩しに俺の家で自由部の面々が勉強会という名ばかりの狂乱の宴を開催する事が決定してしまった。
<GW初日>
-駅-
隣町から通う面々もいるので俺達は一度俺の家の最寄り駅に集合する事になった。
「もうそろそろだな……」
集合時間前に来ていた俺は淡い期待をしながら辺りを見回す。
ワイワイガヤガヤ…
今までは高校の敷地内故にとち狂った姿をさらけ出してきた面々ではあるが、地方とはいえ雑踏極まる駅前。
これだけの人混みの中であんな醜態を晒すわけない、と。
さすがにここでは普通の登場をするだろう、と。
自分でも針の穴にうまい棒をぶん投げて通すようなあり得ない確率ではあるとは思ったが、それでも奇跡を信じた。
「あっ、響木くん。こんばんわ」
今は控えめにみても昼前であるが、そんな挨拶と共に一人目の部員がやってきた。
【萌葱林林】だ。
彼女は天狗の格好をしていた。
巡業にでも行くかのような山伏装束に身を纏い、鍋の蓋と扇を装備していた。
一つ違うのは顔につけるはずのお面を股関につけていた事。
「女の子達だけだと響木くんが居辛いかと思って男になってみました」
その発想が既にもうとち狂っていた。
一人目の登場だけでHPをごっそりもっていかれたように疲れ果ててしまった、何なんだこの裏ボス集団は。
俺は天狗と一緒に駅で待ち合わせをしなければいけないのか……
まるで恥ずかしさと切なさと身勝手の極意が同時に来たような感覚に陥った。
「お待たせ」ウィィィィィン……ガツッッガツッッ
二人目に現れた部員は、部長【白磁雪音】
彼女はお掃除ロボット、ルンバに乗って現れた。
初心者が操るバイオハザードのように、ルンバと共に壁やガードレールなどにガツガツ当たっていた。
「部長、それは?」
「今流行りの電動キックボード」
どうみてもそれは移動を快適にするものではなかった。
「夜永に貰った。開発した電動キックボードの新作を試し乗りしてほしいって。快適」
「きっとそれ騙されてますよ」
「ふんばっ」ぶばば
謎のかけ声と共に部長のお尻は少し浮き上がった。
きっといつものように粗相をしたのだろう。
くるくるくる……
自分の上にゴミが乗るなど初体験だったお掃除ロボットは行き先を見失い、その場でぐるぐるしていた。
今世界で一番可哀想なお掃除ロボットだった。
「お待たせ~」
「待たせたな」
二人一緒に現れたのは部員【群青雨】と【黒檀夜永】
二人の後ろには総勢百人くらいの集団がぞろぞろとドラクエのように付いてきていた。
「雨先輩の後ろの臭いキモオタ集団はファンクラブって聞きましたけど、夜永先輩の後ろの黒いスーツ集団は何ですか?」
林林は初めて見る集団にも構わず毒舌を吐いた。
「うちのボディーガードだ、外出する時は常に付いてきて困っておる、いいと言っておるのに父上が聞かんものでな」
「流石です! お金ください!」
林林が夜永さんに媚びを売っている間に俺はキモオタ集団から睨みと共に怒涛のフライドポテトコールを受ける。
〈フライドポテト! フライドポテト! フライドポテト!〉
こいつらクスリでもやってるのか?
「はいっ! れいんっ! れいんっ! れいんっ! れいんっ!」
先頭にいた藤紫陽花は手にフライドポテトを持ちオタ芸を激しく踊る。
それにつられ、キモオタ共もフライドポテトを撒き散らしながら激しく踊った。
※フライドポテトはスタッフが美味しく頂きました。
まさかこいつらも家に来るんじゃないだろうな?
「安心して、部活の邪魔はしないわ。外から家を囲って貴方を呪う歌を町内に響かせるわ」
何も安心できない、やる気かこの野郎共。
その時、未だ到着していない「紅太陽」からLINEがきた。
『お兄ちゃんの部屋で既にお兄ちゃんの下着に包まれながら大人の階段を登っているので君はまだシンデレラです』
ピポパ
「もしもし警察ですか? 助けてください」
俺はただ集合しただけなのにHPを失い、生命の危機を感じたのでたまらず警察へ電話した。
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