第4話 完全無欠正統派ヒロイン的な存在の者との出逢い


「初めまして、私は二年の【群青雨(ぐんじょうれいん)】です、よろしくね」


 狂人達の狂気にあてられ、さすがに警戒している俺にれいんさんは自己紹介をした。

 それに倣(なら)い、俺も返答する。


「初めまして、俺

「初めまして、私は二年の群青 雨です、よろしくね」


 ん?


「初めまして、私は二年の


 雨さんは初めからぶっ飛んでいた。

 まるで壊れたペッパー君のように自己紹介を繰り返している。


「れいん、自己紹介はもう終わった」


 見かねた部長が声をかける。


「あれ? そうなんだ、ところで貴方は誰?」


 雨さんから何故か滝のような汗が噴き出した。


「は……初めまして、響木一斗って言います……見学者です……」

「そうなんだ、よろしくね響木くん」


 雨さんはいきなり下着姿になった。


 これは何かのバグだろうか?

 現実に頭が追いつかない。


「れいん、落ち着くのだ。1+1は?」

「?」


ギギギギギギギギ……


 数式を考える雨さんは、頭から謎の音を発した。


「れいんさんっ! しっかりっ! お茶いれましたっ! 飲んで下さい!」

「うん、ありがとね」

「お茶にアタシの体液も搾っていれておきました! 惚れ薬的ですねっ!」

「おええろろろろろろろ」


 当然のようにれいんさんが吐き出したものは俺に降り注いだ。

 今のは太陽が悪いけど。


「う……うわぁあぁあぁあぁあぁぁあっ!!」


 精神の限界を迎えた俺は靴も履かずに部室を飛び出し逃げ出した。


            *


「はぁ……はぁっ……はぁ」


 全速力で走っていたからか途中で足裏が痛くなり立ち止まる。まだ森を半分も過ぎていなかった。

 木に片腕をつき、もう片方の腕は腰を曲げ膝に置き、息を整える。

 深呼吸をし、森林から生まれる風と木々のざわめきを聴き、木漏れ日を見る。


 少し落ち着いた。

 そうだ、きっとあれらは幻覚だったのだ。

 ジ○リ作品でもよくあることだ

 きっと刺激を求めた俺の心に住むト○ロのようなものだ。


 俺の方にもト○ロが現れてくれたらよかったのに。


 そうやって心を落ち着けていると二人の美少女が追いかけてきた。


「待たんかぁぁぁあああっ!」

「まっへふらふぁーーひっ!」


 大和撫子美少女【夜永】さんと赤い元気っ娘美少女【太陽】だった


(なんだ幻覚の人達か)


 心を落ち着けた俺はもう幻覚になんか惑わされない、必死に二人を真っ黒○ろすけのイメージにすり変える。

 しかし、その異常な姿からはどうやってもイメージの変換は不可能だった。


スリスリスリスリスリスリスリスリ………


 夜永さんは相変わらずサラシにふんどし姿だった

 何故か相撲取りがやる摺り足で両手を交互に突きだしながら走っている

 さながら相撲部屋の稽古風景だ

 それなのに異常な速度で近づいてくる

 すり足なのにまるで全速力の亀仙人みたいな速さだった


 太陽の方はというと、ザリガニに口をはさまれていた

 また食べようとしたのだろうか

 しかしザリガニの逆襲にでもあったのだろう、口をハサミで鋏まれて涙目になりながら

 ただただ、ひたすらに走っていた


 その姿はさながら……さながら……なんだろうな?

 冷静に見ていた俺だが距離が近づくと頭が働かなくなった。


「はぁっ!」


 太陽が突然跳躍し、木の枝にナマケモノのようにぶら下がる。

 しかし、細い枝だったため太陽の体重を支えきれずーー


ボキッ


 ーー枝は折れ、太陽は背中から地面に落ちた。


「ぎゃっ」


ポキッ


 太陽に抱き抱えられたまま一緒に落ちた枝から分かれた更に細い枝が落ちた衝撃で折れ

 より俺に近い、太陽の前方にいた夜永さんの方へ飛んでいき

 露(あらわ)になっているお尻に突き刺さった。


グサッ


「イヨォォォォォォッ」


 夜永さんは歌舞伎役者のように

 お囃子(はやし)を自分で口ずさみ

 その場に倒れた

 見れば太陽も落ちた衝撃で口から泡を吹き気絶していた

 ザリガニが泡にまみれている


 もう色々とわけがわからなかった


「……ごめん」


 木々の間の闇から突然、雪音さんが現れる。

 何故か第一声は謝罪だった


 雪音さんは忘れていた俺の革靴を持ってきてくれていた。

 しゃがみ、それを俺の前に揃えてくれる。


「……あなたには怖い思いをさせた、それは部長の私の責任」


 俺は驚く、雪音さんは普通に喋っていた。

 最早この人達がまともに……普通に喋っているだけで驚いてしまう。


 でも、もしかしたら。


「いつもこうじゃない……」


 雪音さんは続ける。


「入学式の日に太陽が入ってくれて……今日も貴方が来てくれて……皆少し舞い上がっていた……私もそう」


 やはりそうだったのか。

 クスリでもやってるんじゃないかって位の舞い上がり方だったが。


「それまで……ずっと三人だったから……」


 なるほど、きっと創設からこれまで色々あったのだろう。

 うつむきながら話す雪音さんは今まで以上に消え入りそうに見えた。

 目を離すともう二度と会えなくなってしまいそうなほどに。

 それは少し惜しく感じる。


「あの……雪音さ

「だからこれで許してほしい」


 雪音さんは俺の言葉を遮り

 しゃがみ

 下着を膝まで下ろし

 和式便所で用をたす姿でふんばった


「……っ! ふっ……」


 雪音さんは尻から空気を漏らしながら何かを待っている


「っ……悟飯が……」

「……はい?」

「セルと……かめはめ波で……一騎打ちに……なった時の……悟空の……セリフ……お願い……」

「な……なんでですか?」

「お願い……」


 お尻から空気を漏らしながら雪音さんは

 涙目になりながら上目遣いで俺に懇願する


 俺は仕方なくそれに付き合った


「で、でぇじょうぶだ、地球へのダメージはドラゴンボールで元に戻る」


ブウッ!!


「今だぁッ!! かめはめはーあぁぁぁぁぁぁぁうぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」


ブリリリ!!ブスブスッ!!ブリリリリリリっ!!!

ブウウッッッ!!ミチミチっ!!ビョーーーーンっ!!!

ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブリリリリリリリリ

ボハァッ!!ブバッ!!

チーンチーン ぬちゅっ カーン ばうあ~っ!!


「………」


 目の前で繰り広げられる悪夢

 とても排泄物が出ているだけとは思えない壮絶な擬音と共に超サイヤ人になった雪音さんは

 体内にある全てを放出して満足そうだった


 俺は限界をむかえ気絶した。

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