第3話 大和撫子お姉さん的な存在のものとの出逢い
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「すまんな、迷惑をかけて」
夜永さんが濡れタオルで俺の顔を拭いてくれている。
「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!」
そしてその後ろでは太陽が俺に平謝りを続けていた。
「いや、大丈夫大丈夫」
大丈夫だ、まだ慌てる時間じゃないと心を落ち着かせる。たかが、部員の二人に体内の循環物をかけられただけだ。
夜永さんに風呂に入ることを勧められたが、女子に囲まれた中、風呂に入るのは気まずい。何より嘔吐物をかけた張本人とはいえ太陽も女の子だし……太陽が傷つくだろうな、と断った。
今、俺は吐瀉物と排泄物と心強さを合わせた凄い薫りになっているかもしれない。
「ファブリーズもしたから平気だ、匂わんよ」
シュッシュッ
また自然に心を読む夜長さん。正直、顔にファブリーズを吹きかけるのはどうかと思ったが天然な女子なのだろう。
何より、ここに来てから色々と良くしてくれている母性の塊のような夜永さんに俺は心の底から安堵している。
まるで見本のような母親、バブみを感じてしまう。
「もう平気か?」
「はい、ありがとうございます」
「本当か?」
「はい」
「いかん、拭いておったら興奮してきおった」
何故か俺の顔を拭きながら、制服を全て脱ぎ始める夜永さん。
胸にサラシを巻き、下はふんどしだった
俺は直感した。
やばい、こいつ、変態だ。と。
何かに性的スイッチを持っている類の変態だ。
「端正な顔立ち、立ち姿。その出で立ちはまるで鮎」
訳のわからない文学的な事を言いながら、何故か俺の顔を舐め始める夜永さん。
「カッモンッベイビー! アメリカッ!」
それに興奮したのか夜永さんは
昔流行った歌を狂ったように歌い踊り
ホワイトボードに顔面をうちつけ
鼻血を出して気絶した。
俺の顔は夜永さんの涎でベトベトになっていた。
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俺は顔を何度目かわからないタオルで拭きながら平然を装う。
大丈夫だ、まだ慌てるあわわわわ
気絶していた夜永さんが目を覚まして言った。
「まるで真夏の悪夢の如しだ」
こっちの台詞だった。
その時、小屋の入口の扉が開いた。
「遅くなってごめんね、掃除してたら止まらなくなっちゃって」
部員最後の一人だろうか、新たな人物が現れる。
深く暗い青色の背中まであるストレートの髪、しかし決して不快さを感じさせる色ではなく、むしろ深海の神秘を見ていると思わせる、海に潜り静かな深海の底で海に包まれているかのような、静寂を表す群青色。
芸能事務所に所属していてもおかしくない、まるで女優やアイドルのように整った顔、穏やかな物腰。
一言で言うならば、完全無欠のヒロインオブザヒロイン。
「もう~遅いですよっれいんさんっ」
太陽が嬉しそうに跳びはねながら、れいんと呼ぶその女性に抱きつく。
「ふふ、ごめんねたいようちゃん」
二人が百合百合している中
後ろから雪音さんが近づいてくる。
そして嘘か真かーー彼女は恐ろしい忠告を俺に告げた。
「気をつけた方がいい、れいんは私たちなんか比じゃない。一番の問題児」
俺のSAN値が警鐘を鳴らす。
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