第5話 不思議な爺さん

 集落こそ小さいもののゴブリンの数は多かった。異世界ものでは、ゴブリンは雑魚モンスターと認識しかしたことがないのでこんな生き方を間近で知り、少なくとも興味深いと思った。


 彼は周辺を探索する。奥に何やら大きな葉で覆い被されているものを見つける。


 そして意外なものを発見した。


 (これは…?武器庫か……?)


 武器庫がある理由は簡単に説明できる。おそらく戦いに備えて溜めているのだろう。しかし、ゴブリンにそのような知性を持ち合わせているとは到底思っても見なかった。

 

 集落を保有せず、森の中を徘徊して本能のままに狩りをする。


 そんな身勝手ながらのイメージがあるからこそ驚く。


 武器庫をじっと見て長考していると後ろから気配を察知する。年の老いたゴブリンがこちらに近づく。遠慮皆無に近づいたことがまずかっただろうか。


 「おめぇさんにゃぁ、知性を感じてるぜ」


 第一声が発した言葉は何やらそんなこ――


 (ん…?ちょと待て。今喋ってなかったか…?)


 いやいや、まさかゴブリンがな…。どうせ聞き間違いだろう、最近は疲れすぎてゆっくりし寝るような状況がなかった。寝れば治るは―――


 「ほう。無視するたぁ、いい度胸じゃねぇか、おめぇさん」


 やっぱり、聞き間違いではなかった。ゴブリンが喋ることに驚いて尻もちがついた。


 その爺さんをゆっくり見上げる。背こそ普通のゴブリンと比べてやや小さいが、出来上がった大きな筋肉はあらわになっていた。髭が首のところまで伸びており、綺麗にテカっているスキンヘッドが目立つ。下半身に巻物をしただけでどこぞの旧人類ターザンを思い出す。


「かっかっか、おもしれぇ顔が見れたぜ」


 そのゴブリンの爺さんはどうやら驚かすこと前提で声をかけたらしい。こっちはそんな状況じゃないって…。お尻をはたきながら立ち上がる。


 「そう、その行動一つ一つだぁ。人間の仕草にしか見えねぇ。俺らゴブリンは汚れてることに無関心たぁ、おめぇさんに違和感を覚えたのさ」


 (人間の仕草て元は人間だからな……。てか、この爺さん、ゴブリン?で間違いないよな?緑色だし…。あとなんで喋れるんだ…。俺ですら喋れないのに…)


 頭の中で多くの疑問が思い浮かぶ。


 「なぁに、おめぇさんも長い年月で発音練習すらぁ喋れる。あと言っとくが、喋れるのは俺だけだ。普通の仲間とも意思疎通はできるぜ」


 なんでこの爺さんは俺の思考がわかるんだ…。さすがに怖すぎて、少し一歩下がった。


 あと、年月とてゴブリンは長寿だということを聞いたことが無い。その長い年月は一体どのぐらいかかるか聞きたいものだ……。本当に俺も喋れるのか不安がよぎる。


 「おら、立て」


 手を差し出された。優しい爺さんなのかもしれない。


 「おめぇさん、来たばっかで家がねぇだろう。こっちで泊まってけ。ついてこい」


 そんな波乱が起こりそうな爺さんについていく以外の選択肢がないのであった…











 

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