第4話 集落

 前のように焦りはない。淡々と川の横を通って歩く。


 ◇


 しばらくすると小さな湖を見つけた。街からは距離がある、狩られる心配がないと感じたのか彼はそこで住処を張ることにした。湖から少し近い、大きめの木に寝所にすると決めた。


 幸いにも湖の中は透き通っており魚が和気藹々と泳いでいるのが見える。狩りすぎがなければ、当分の食料問題は解決されるだろう。当然、彼は腹が減ってないが…。


 無意味な食事も人間時代、生まれ変わる前の原因で食事の欲求はかんたんに拭いきれない。しかしも、当然の彼は腹は減っていないが……。


 川の魚たちをしばらく眺めていくと、後ろから草を踏む足音が聞こえた。


 今までなら気配を察知できていたのに、無反応だったことの違和感に気づき、一旦距離を取るように一歩下がって身構えた。


 そこにいたのは……


 ゴブリンだった。


 (私の同族に当たること……?になるのか…?)


 しかもゴブリンは複数おり、石で削ったような木でできた槍らしきものを持っている。未だに彼は身構えるが一向に彼を襲う様子がない、むしろ殺気を感じられない、どこか友好的な雰囲気すら醸し出している。


 一匹のゴブリンが前に出て、こちらに向かって歩く。当然、今の状況からして不利。動くわけにはいかないので、こちらも戦う意志がないことを動かない姿勢で示すことにした。


 数センチまでゴブリンと縮んだどころで匂いを嗅がれた。正確には、隅々まで嗅がれた。


 そのゴブリンは納得していくと、複数のゴブリンもこちらに近づく。その目には敵意など感じられない、むしろ親戚に近いような目をしていた。


 もう一匹のゴブリンに突然、槍のようなものを渡され、ついてこい、と言わんばかりに目線を送っている気がした。


 やっとのところで住処が確保できていたところを、同族?のゴブリンはついと無視するわけにも行かず、歩き出す集団のゴブリンの背中を追ったのだった。


 ◇


 しばらく歩くと数分もいないうちに、到着したらしい。周囲の状況を確認した。


 (ここって……まさか、ゴブリンの集落か…?)


 あたりを見渡すとゴブリンが行き交うのが見えた。言語を交わしている様子がないが意思疎通ができていることにどうやっているのか疑問が拭いきれなかった。

 

 右肩から叩かれた、振り向くと一人のゴブリンが少し大きめの生肉をこっちに突き出した。さっき一緒に歩いた集団のゴブリンはいない、おそらく解散したのだろう。


 苦笑いを浮かべながらその生肉を受け取る。ゴブリンはそれを確認すると、集落に戻っていったのだった。


 どうやら半ば強制的にここに住むことになったらしい、と周囲を見渡すことにしたのだった。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る