第3話 街

 ◇ 


 どのぐらい歩いたのだろうか。一日、一週間、どのぐらい走ったか定かではなかった。


 時に強い魔物に遭遇し追い掛け回されたり、突然強い雨が降ってきたりで木陰で休憩をしたりと色々な出来事に見舞われた。それもまだ何も食べていない。腹が減る感覚はなかった。


 最近では、そんな繰り返し?に慣れてきてしまう彼自身にもちょっとした恐怖を覚える。そんな彼は何日経ったか覚えていない。歩いていくとやっとの終止符が見えた気がした。


 (……道がある…?)


 彼が人間だったのなら、どれぐらい楽だったのだろう。ここの道に沿って馬車が通れば人に助けを乞うことができるのだ。


 あいにく彼はゴブリン姿。例え馬車を見つけたとしても、狩られるか逃げられるのがオチだ。


 だが、希望の光かもしれないと早々と道を逃すことはあるまい。道の横で足音を立てずに道に沿って歩いて行くことに決め、馬車が通ったら隠れることにした。


 先を歩く。時折、馬車が通り、隠れるが気づくものはいない。


 追われる際にハンターらしき人は弓矢を使っていたが、魔法が使えるのかはまだ確認が定かではなかった。事実、彼の目にはまだ彼らがびっくり箱に見えるだろう。


 (街が見える……?)


 やっとのことで、街があった。道の先には重装備をした門番の姿があり、魔物はおろか、かんたんに通ることができなくなっている。


 改めて、少しだけ町の門から覗く街の光景を捉える。


 (……目が覚めて、ずっと地獄の夢でも見ていたと思い切っていた。ほんとに異世界に来ていたんだな……)


 奥から覗く街並みは中世ヨーロッパの街並みと似ていた。建物はまさにそれと類似。行き交う人達も様々だった。少し奥に見える人が耳?を頭に生やしているのも多少見受けられる。


 (しかし……、通れないからここに来ても無駄足……。異世界の状況を把握できたなら来た意味はあったかな……)


 5km先の街を捉えながら彼は独り言をつぶやいた。本来、そんな視力は人間業にはできない、彼は無意識下に視力を強化していた、なお本人は未だに気づかない様子。


 (ここでは生活場所が確保できない……。なら、川の近くに家を確保しよう。街があるなら、水路先、つまり川がどこかしらに存在するはずだ…)


 もとから、街に入ることは考えていなかった。そんな自殺行為じみた真似はしない。彼は街の外を回り、川がどこにあるか探すことにした。それは賭けでもあった。


 ◇

 

(あった…!)


彼はその川に沿って歩くことにし、再び森の中に入ることにしたのだった。それは家を探す、新たな始まりでもあった。




 









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