一週間フレンズ

澪凪

言葉の意味調べてから話すべき

元彼と別れた私は、テニスサークルをやめた理由を友達に聞かれていた。


スイというあだ名で呼ばれていた彼は、テニスのジュニア選抜に選ばれてるくらいの人で、人当たりもよく、成績も申し分なく、人気である。


「なんで別れたん?」


近くの公園で2人でジュースを飲みながら、文化祭の思い出を話していた最中である。


「…いや…普通に…?」


「先輩、普通じゃなかったけどな。」


「そう。まあ私にはもう関係ないし。」


「髪、短いの似合ってる。」


「ありがとう。」


「顔色も前より良くなったと思う。」


「そう?まあ、あの人と付き合ってる時に4キロくらい瘦せたからね。」


「それは問題だろ。痩せたからかわいいって意味じゃねえよ。」


「かわいい?」


「俺は、ずっと前からなぎ可愛いって思ってた。」


「ずっと前っていつから?」


「先輩と付き合う前からだよ。」


「そんなの、ほとんど会ったばかりの時じゃん…。」


「なぎは有名だったよ。」


「悪い意味でね!」


「違うわ…、いい意味で男子寮の中でも話題だった。」


そう言うと、彼のスマホから私の写真がでてきた。


「なんで持ってんの?なにこれ、知らない。」


「話すか悩んだけど、これ、盗撮だと思う。男子寮の中でまわってきた。」


「男子って、年齢関係なくキモイね。」


「ごめん。」


「いいよ、悪用しなければ。」


私は、ばらまかれて困るような写真を撮った覚えはないため、男子の中で写真がまわっていてもどうでも良かった。


「なあ、俺さ、なぎのこと好きなんよね。」


「別れたばっかりの傷ついた女にそれ言う?」


「俺は会った時からだから。傷つけないって確証は持てないけど、それでも好きだから。」


「…考えさせて。」



その日はそこでお開きになった。


しかし、今の時代はSNSが発達しているため、放っておくことはできなかった。


ラインを確認すると、スイからメッセージが来ていた。


「今日、ありがとう。俺、本気だから。」


寮のご飯の時間はとっくに過ぎており、コンビニ飯を食べ、お風呂に向かった。


お風呂の中では、ずっとスイのことを考えていた。


自己肯定感の低い私は、向けられた好意を否定するのが怖かった。


点呼の時間ギリギリまでお風呂で考え、点呼を待つ。


点呼が終わり、私は同室の子に心配された。


「今日様子変だよ~?ご飯も寮食じゃなくてコンビニじゃん。」


「そうかな?普通だよ!ごめん、心配かけて。」


「なんかあったら言ってね。私、予習したら寝るから。」


「ん~。ありがとう、電気消していいから~。」


私は、予習なんて手につかない、とベッドの上でもやもやしていた。


どうして、友達でいたらダメなんだろう?

スイは、友達としては好きだけど男の人として見たことない

私たちの関係はこれで終わりになるのかな?

分からない、それでも断って関係が終わるのは怖い


私はいろんなことを考えた。


いつの間にか部屋の電気は消えていて、時計を見ると深夜になっていた。


「スイの言葉信じる。好きって言ってくれて嬉しい。理想の彼女にはなれないけどそれでも良ければお願いします。」


そう返事を送って、眠りについた。


朝、ご飯を食べに食堂に向かうと、スイが並んでいた。


「おはよ。」


いつも通りに声をかけると、スイは手を振っていた。


何照れてんだろう?変なの…と思って、スマホを見るとスイからのメッセージが来ていた。


「ありがとう。これからもよろしくお願いします。」

「大好きです。」


これで照れてるのか…と思い、私は笑ってしまった。


スイなら幸せにしてくれるよね!


それは実現しなかった。


毎日、空き時間に逢瀬を重ねて、ちょうど1週間目の日


今日は会えない、と連絡が来ていたこともあり、私は女子会に花を咲かせていた。


女子会も終わり、眠りにつく前にスマホの確認をしていたら、スイからメッセージが来ていた。


私はスマホを顔の上に落とした。


言ってる意味が分からない、どうして?

色んな気持ちが駆け巡った。


「なぎ、ごめん。俺、なぎのことそんなに好きじゃなかった。だから別れよう。」


本気って言ったじゃん、それを信じた私がばかだった。


振られる側がうだうだするのは大変なことは分かっていた。良いことがない、そう分かっていた。


私は、一言メッセージを送り、眠りについた。


「分かった。好きだと思ってくれた事実だけでもうれしい。」



その後、私とスイは友達に戻り、今カノに私が探りを入れられるのは時間の問題だった。





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一週間フレンズ 澪凪 @rena-0410

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