第129話 お祝い

 12月に入り、制服も衣替えをした。

 やはり冬は寒い。

 

 俺は夏が一番嫌いだ、暑くても胴体に対刃物用の鉄板を付けて仕事をしないといけないからだ。

 鉄板は太陽に当たって熱を持ち熱くなり、気分が悪くなって来て、何度も熱中症になりかけている。


 次に嫌いなのは春だ、花粉症により目玉を取り出して洗いたくなるくらいに目が痒くなるし、鼻水がタラタラと流れ出る。

 もう、目から鼻から飲み薬から、春は薬漬けだ。


 その次に嫌いなのは冬だ、火災の現場保存等で一晩中外に立ってなければならない時、足元で消防隊の放水された後の水溜りが凍っていくのを見ながら俺の手足の指も凍っていく。

 そう考えると、俺は秋が一番好きなのかもしれない。



 有希からSNSと電話で大学に推薦合格したと連絡が入った。

 本当に良かった、おめでただ。

 これで有希は俺の家に来春から本当に住み始めるんだな…と改めて思った。


 俺は有希にお祝いを渡しに行くため、いつもの土日の連休では無く、平日の非番、休みで有希の家に行く事にした。


 

 有希の家に着いて有希に門を開けてもらい、敷地内に駐車して車から降りたら、有希が俺に抱き付いて来た。


 「お兄ちゃん、合格したよ…。」


 「うん、良かった、頑張ったな。

 本当におめでとう。」

 

 俺は有希の背中をポンポンと軽く叩いてねぎらいの言葉を掛ける。


 婆さんも玄関でお出迎えだ。


 「この度は、おめでとうございます。」


 婆さんにペコリと礼をすると、


 「何じゃ、改まって。

 まぁ入れ、今日は祝い酒じゃ。」


 「親しき中にも礼儀あり。

 これ、有希に。」


 俺は熨斗のし袋を有希に渡す。

 金額は、ノートパソコンが買えるくらい。

 俺は大学行った事無いから知らんけど、大学生になったら必要になるらしいしな。

 もしパソコン買わなくても、何か必要な物をコレで買って欲しい。

 

 「お兄ちゃん…ありがとう。

 春にはお兄ちゃん家に引っ越しもしないといけないし、色々と使わせてもらうね。」


 「あぁ、引っ越しも家具をそんなに持って行かないなら、俺がレンタカー借りてワゴン車とかトラックを運転してもいいし、それはまた考えよう。」


 俺達はダイニングに移動した。


 今日の料理は、鯛の塩釜焼き、鮭とイクラの炊き込みご飯、刺し身盛り合わせ、ローストビーフ、サラダ等、物凄い料理が並んでいる。

 

 鯛の塩釜焼きとかさ、俺は料理人が店で作る様なモンだと思っていたけど、この家庭では普通にキッチンで作られて出て来るからスゴいよな…。

 食後に手作りのチーズケーキも出て来るらしい。


 俺と婆さんは取り敢えずビール、有希は炭酸飲料で3人で乾杯し、楽しい夜を過ごした。

 


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