第108話 抹茶アンパンと梨③
暗くなってから仙石原に着くと、有希が門を開けてくれた。
「お兄ちゃん、そんな箱持ってどうしたの?」
「有希、梨は好きか?
俺が1番好きな品種の梨買って来たから、冷やして食べて。
あと抹茶アンパンも買って来たから。」
「わぁー、ありがとう!
運ぶの手伝うよ。」
「あー、いいよ、重いから大丈夫。
運ぶから玄関ドア開けておいてくれる?」
「うん、ちょっと待ってね。」
有希にドアを開けておいてもらい、両手で荷物を運び込む。
台所まで梨を運ぶと箱を開けてもらった。
「ふわーー、大きい!
ナニコレ、こんな大きいの初めて見た!
子供の頭くらいの大きさだね!
重い…1つ1キロくらいありそう。」
「これは稲城って品種で、大きくて甘いんだよ。」
「それにアンパンもずっしりしてる。」
「ちょっと多めに買って来たから、誰かにあげてもいいし。」
「お兄ちゃん、ありがとうー。」
有希が抱き着いて来たので、俺も抱き返す。
…ちょっとクンカクンカしてみよう。
クンクン…スンスン…
「お、お兄ちゃん、どうしたの?
何か匂う?」
「いい匂い…
ふわー、有希の匂いやー…
有希成分を沢山補充したいー。」
「じゃあ私もー。」
有希も俺をクンクンしてる。
「…おいそこのバカップル、晩飯そっちのけで、お盛んな事じゃのー。
そういうのは有希の部屋か客間でやっとくれ。
真之、アンパンと梨、ありがたくいただくぞぃ。
さぁ、メシじゃ、メシ。」
有希は顔が真っ赤っかだ、家族に見られるのは最大級に恥ずかしいだろうな…。
「…婆さん、いつからいたの?」
「ん? ふわー、大きい!
くらいじゃな。」
「最初っからじゃねーか!
声掛けてくれよ!」
「いやー、黙って見ておればちゅーでもするかと思ったが、クンクンするばっかりで先に進まんからガマン出来ずに声を掛けたんじゃ。
ほれ、酒をつげ。」
「あー、お待たせしましたね、毎回待っててくれてありがとな。
アンパンと梨を食べたら感想を聞かせてくれ。」
「あぁ、梨も今だけ1つ冷凍庫で冷やせば食後には冷えてるじゃろうのぅ。
楽しみじゃわい。」
今日の晩ご飯はチンジャオロース、シュウマイ、白身魚の中華風餡掛け、サラダ、たまごスープだ。
シュウマイも最初から全て有希が作ったそうだ、本当にスゴいなぁ。
しかも、全て美味しいからまたスゴい。
これも婆さんの指導の賜物か。
食後、有希が梨を切ってくれたので、皆で食べた。
「美味しいー!甘ーい!」
「うむ、これは舌触りがいいのぅ、梨によくあるザラつき感が殆んど無い!
それに凄く瑞々しい!
お主、よくこんな梨知っておったのぅ。」
「あぁ、母親が生きてた頃に教えてくれたんだ。
この梨は品数があまり無いから、売り切れてなければこれから毎年買って来るよ。」
「うむ、よしなに。」
「出た、よしなに(笑)。」
「……。
キャーッ、信子嬉しいー!
真之さん、また来年も買って来てねぇーんハアト。
とか言って欲しいのか…?」
「………いえ、よしなにでお願いします…。」
……ちょっとショックで意識が飛び掛けた。
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